【|l |リ゚ ー゚ノl|∩<くうかんとうこスレですぅ】
短編小説 想いはいつか
*
みなもは病気だった。
僕はどうしても助けたかった。
でも僕にはどうしようもない。
だからせめてみなもの病気が直るように祈ることだけ。
僕は鳥居へ向かう。
魂の神社。
魂を奉り、魂を敬うことによってなりたつ神社。
その森に囲まれた小さな神社で僕は祈った。
からからから。
鈴を鳴らして五円玉をいきおいよく賽銭箱に投入れた。
みなもがはやく元気になってくれって祈った。
僕とみなもは数年来の幼なじみ。
小学生……いや、もっと前、幼稚園のころからいっしょに遊んでいたような気がする。
みなもの容姿はとてもかわいくて、僕はいつも見惚れていた。
でもみなもは儚くて病弱だった。
だからこそ僕が守ってあげなくちゃなって思ってた…。
でも年を得るごとにそれが夢物語にすぎないことが…だんだん分かってきた。
今年、小学校を卒業する年になり、気づいてきた現実。
ひとつは僕にはみなもの病気を治す”力”などというものはないということ。
いや、そもそも人間にはそんな”力”などありはしないんだ。
でも……いやだからこそ、僕は賭けたかった。
祈ること、想うことによってみなもの笑顔がもう一度見ることができるんだって。
僕は医者じゃない。僕にはそれしかなかった。
「想いはいつかかならず叶うんだよ。そう信じているかぎりね。
まこちゃん」
僕は今でも―――みなもの言葉を忘れない。
僕の誕生日。
みなもをそう云ってくれた。
僕はうれしかった。
僕は来る日も来る日も祈った。
ただ祈るしかなかった。
もはや意識のないみなもを救うには祈るしかなかったんだ。
僕の命をみなもに分けてあげることができたら、どんなに…。
そんなとき、僕の前にひとりの少女が現れた。
名は、天女。
どうやら僕の願いを聞き入ってくれるらしい。
顔はまだおさないのに、ひどく大人ぶった口調は僕を驚かせた。
「汝《なんじ》がまことだな」
「うん、そうだけど。君はだれ?」
「我か…。我は天女。
本来ならばおまえのようなものと話すことさえ叶わぬものだが、
まあよい」
天女は面白い人だった。
「さあ、まことよ。
我と契約をせよ。
さすれば、汝の想い人、救うてやろうぞ」
僕はその言葉に驚いた。
けれど、とても大切なことをいっているような気がした。
だから僕は契約をした。
天女と契約することでみなもが救われるのなら安いことだと…。
「ようし。契約は完了だ」
どうやら口約束だけで契約は完了したらしい。
「お願いします。みなもを助けてください」
僕は精一杯の懇願をした。
その言葉に天女は笑った。
「ふふ。救うには、おまえの魂が必要だ。
契約によりそれが可能になった。
天地万物、物事は全て等価交換を基礎になりたっている。
おまえの魂により想い人は救われよう」
僕は契約内容に一瞬ちゅうちょした。
やはり死ぬのは怖い。
でも、それでも僕の命でみなもが助かるのなら―――
「お願いします」
少年の瞳に光が映った。
その光を天女が見逃すはずもない。
どことなく天女は笑みを見せる。
その笑みはみなもの笑顔にそっくりだった。
「おまえはほんとうにいい男だな。
分かった、願いを叶えよう。
そして、これが我の力の限界だろうか―――
おまえのような、素敵な男の願いを聞き、消滅するならば苦はない」
そう云うと、天女はあとかたもないように消えていた。
*
「私、助かったんだ」
とある病院の一室で少女が目を覚ました。
あまりにも深い昏睡からの目覚めだったために看護婦はみな死人でも見るかのように驚いた。
そして、みなもの横には、幼なじみのまことがいた。
「まこちゃん……
私、帰ってきたよ。
帰ってこれたよ」
「ああ、良かったな。みなも。
ほんとうに良かった」
「私、夢の中で天女だったんだよ。
どこまでも青い空。
そからいつもまこちゃんを見ていた。
でも、まこちゃんはちっとも気づいてくれなくて」
「ごめんな、みなも。
いままでさ。祈ることしかできなくて」
「ううん。
まこちゃんが私を救ってくれたんだよね。
私、全部知ってるんだ」
そういえばみなもの顔はあの天女そっくりだった。
つぶらな瞳で、美しい眉。
けれども、今のみなもは確かに地に足が着いていた。
自らの体に魂が籠《こ》もっていた。
「みなも、一緒に卒業しような」
「うん!」
みなもはせいいっぱいの笑顔で応えた。
*
想いはいつか 完
☆あとがき☆
今日、速攻、三時間ほどで完成させました。
まあ突っ込みどころ満載ですね、はい。
でもまことの想いは美しい。
そしてみなも。
感想、批評、改善点、お返事待ってまーす。