-K-Another story
これからここに記載される小説は、
BUMP OF CHICKEN『K』を元に作成されています。
歌詞を使用、変更していますが著作権の侵害を意図するものではありません。
−第一話−
週末の大通りを黒猫が歩く。
ご自慢の鍵尻尾を水平にし、これ見よがしに、威風堂々と。
その姿から猫は忌み嫌われていた。
いつだって、闇に溶ける体をめがけ石を投げられた。
ウォウウウウウウウ!!!
何処からとも無く遠吠えが聞こえる。
街はここら一体の区域を除いて静か。
もっとも、ここら辺だってこの時間帯は静かだ。
酒に酔った客の騒ぐ声が微かに聞こえる。
ドサッという音と共に一つの影が倒れ、
それに続いて真夜中の建物に男が叫んだ声が共鳴した。。
「引っ手繰りだ!誰か!引っ手繰りだ!」
その先を走って行く引っ手繰りの影。影。影。
すると、引っ手繰りの10分の1くらいしか無い小さな影が飛び付いた。
『シャアッ』するどい鳴き声だ。
瞬く間に、黒い毛並みの猫は引っ手繰りから財布を奪っていた。
追う持ち主に、逃げる引っ手繰り。
黒猫は道に財布を落とすとそっと離れた。
『ふぅ、良かった・・・。』
持ち主は安堵の表情を浮かべると、黒猫には気づかずに落ちている財布を拾い上げた。
『ニャァゴ』
闇夜に静かな鳴き声が通る。
『何だ黒猫か・・・』
持ち主は鳴き声の主に気づくと人知れず漏らした。それから、
『不吉な』
取り返したのは、この猫だという事も知らず、非情な一言を残し立ち去った。
『グルル・・』
猫は項垂れながら喉を鳴らすと、持ち主とは反対の方向へとその場を後にした。
(煩わしい・・・な)
良い事を幾らしても、風貌により気持ち悪がられるだけの猫にとっては、
誰かを思いやる事なんて煩わしかった。
なのに、何故だろう。
黙って居ようとすると、胸が熱くなる。
何処から来るんだろう、これは。
ヒュッ!
耳元で風切り音が鳴った。
(またか)
またいつもの様に、闇と同じ服を着た自分へと、
謂れの無い恨み、憎しみを込めた石が襲ってきた。
空しさと戸惑いが胸の中を交錯する。
毛の色が黒いだけで存在まで黒なのだ。
−第一話・完−