【京】落ちてましたよスレさん。【音】

このエントリーをはてなブックマークに追加
229京 ◆KYO/KJ3/PU
−第3話−



真っ暗な裏通りを黒猫と男が歩く コツコツ・・・ ペタペタ・・・
音は入れ替わり立ち代り、ところどころ水溜りのある道に音楽を流した。
絵描きはどうだか知らないが、黒猫は静かな通りに、
これまた静かになる足音に昔の記憶へと意識が遠のいていった。

自分がまだ幼く、街の冷たい風も知らなかった時間。
あまりに今まで過ごして時間が濃厚で、冷酷で、残酷だったので忘れかけていた、
人の温かみに触れていた僅かな時間。。。


『ホラホラ!ねぇ!見てよ!』
やたらと五月蝿く騒ぐ少女が一人。
9・10歳くらいの元気な・・・少し元気過ぎる少女だ。
見た限りこの家は金持ちらしい。
少々大きな門があり、プールに、噴水に、花の沢山咲いた庭。
他の家の悠に2・3倍ありそうだ。

『ホラホラ見て!』
また何か言っている。。。(これが〜で〜は〜って言ってね?)
この家に来てから1年しか経ってないのに耳タコだ。
毎日五月蝿く言われ続けたおかげで、かなり人の言葉は理解できるようになってしまった。
困ったもんだ、猫なんだぞ。戸惑いながらも少女の熱意に耳を貸してしまう。
230京 ◆KYO/KJ3/PU :2005/06/06(月) 22:26:19


元々はこの家の使用人がたまに餌をあげていた猫が俺の母親で、
いつのまにか此処に居ついてしまい、いつの間にか子供を身篭ってしまった為に
生まれてきた奴の一匹が、この家の奥様に見つかって・・・。
それから追い出せという話になったんだけど。
この元気過ぎる少女が無理矢理に飼うと言ったので、辛うじて俺一匹だけ此処に残って居るのだ。

家族は・・・どうなったんだろう。

………それから十分ほどしてもまだ歩いている。
新たに何かを思い出した。

231京 ◆KYO/KJ3/PU :2005/06/06(月) 22:28:00

…ザー…ザーッ…
やけに耳に残る雨音
こびり付く泣き声
『わぁああぁっひっうぐっあああっ』
黒猫にぴったりの黒々とした空からしきりに雨が打つ中で
俺を目の前にして少女が泣いていた。
232京 ◆KYO/KJ3/PU :2005/06/06(月) 22:28:34
なぜ?

分かりきっていた

彼女の親は俺をよく思っていなかったから

なぜ?

黒いから

なぜ?

人間は闇を嫌うから

なぜ?

闇にはあらゆる物が潜む事が出来るから

なら、幸せは?

何が起きるか分からない時、幸せが来ると思うかい?

なぜ?

ドキドキしたときに限って、失敗したり悪い事が起きたり
目に見えないところで起こる事ほど不吉だからだ

全て自分への問いかけで、雨の降りしきる中胸の中で雨音より大きな音で聞こえていた。


                                          −第3話・完−