ノli(! ゚ -゚ノl―√レw―√レw―くうかんとうこスレなの

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515箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s
   

      たとえ仮初めにすぎなくても(一応、詩のつもりです笑)



               作:箜間桐孤            



 わたしとあなたの幸せ
 わたしは、いつもあなたと楽しそうに話している
 でも、それはまぼろし
 わたし、ほんとは知っているんだ
 わたしは、どこにもいないって
 わたしは、あなたの創りだした夢だもの
 永遠に続くあなたの夢
 終わりを知らない、終わりさえ知らない
 夢のひとかけら
 でも、その夢があなたに希望を与える
 たとえそれが仮初めにすぎなくても
 だって、あなたは永久(とわ)に目覚めはしないのだもの

516箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:29:40


          今この一瞬を強く


                   作:箜間桐孤


517箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:30:13




 僕は何のために生きているのか。
 それを知りたかった。
 僕は何を見つけたいのか。
 それが知りたかった。

 土田一平(つちだいっぺい)にとって、
何のために生きるかを問うことは、
何よりも大切なことだった。
 高校に入ったばかりの土田は、なにもかもが不思議で
不可思議な空間におちいったようなそんな錯覚を抱いていた。
 三島という、宿場町。
 富士という、絶対物。
 
518箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:30:57
 
 身体能力、精神成熟度、女性との会話。
 すべてにおいて同級生より劣る彼は、
なんとか、同級生たちをその全てにおいて追い抜きたいと思っていた。
 どうすれば抜けるのか。
 彼らをひとまたぎで飛び抜ける方法はないものか。
 土田は、その方法を還元主義、
つまりは、この世界の自分自身の根源に立ち戻ることで、
追い抜こうとしたのだった。
 自分自身の根源さえ知ってしまえば、
いくら外観をよそおっても無意味だと思ったのである。
 
 土田一平16歳、高校一年生のころである。
519箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:32:30

「土田君、おはよう」

 社交辞令的なあいさつをしてくる人物、一名。
 土田の親友、長岡祐樹(ながおかゆうき)。
 長岡は、土田にとって数少ない友人の一人だった。

「僕は最近、何のために生きているのか、
 必用に考えることがある」

 土田はあいさつをしてくる長岡にそう云った。
 その言葉に驚嘆を感じきれない長岡は、

「土田君。君は難儀な問題に立ち向かおうとしているな。
 いや、命題といった方が適切か。
 さながら、風車に立ち向かうドンキ・ホーテといったところか。
 答えの出ない問いに立ち向かおうとは、はなはだ滑稽ではあるが、
 反面とても青年らしい。
 応援しているよ」
520箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:34:03

 長岡祐樹としてみれば、何のために生きているかといった
いわば、答えのでない問いを問いかけることじたいが
面白おかしいのであろう。

 土田もそのことは分かっていた。
 ただ、それでもそのなんのために生きるかとという問いを
やめることはできなかった。
 思春期の少年だからといえば、それまでかもしれないが、
土田にとってその問いはとても大事なことに思えたのだ。
521箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:34:49

 土田はまた、恋をしていた。
 生きる意味を探すことは、大切なことには違いない。
 ただ、土田は恋も大切だと思っていた。
 土田一平(つちだいっぺい)が恋をした人物、一名。
 伊興曜子(いこうようこ)、16歳。
 同じ一年九組のクラスメート。

 彼女の静謐(せいひつ)とした瞳は、現世のものを予感させず、
凪(な)がれるような黒髪はまるで夜闇にたたずむ三日月のよう。
 これが昼間でなければ、凪(な)がれるような黒髪は幽玄の美と
なっただろう。
 美しくも脆(もろ)い、白を連想させる手足。
 細すぎるその容(かたち)は、薄白の百合のよう。

 土田は彼女の瞳に吸い込まれていた。
 伊興曜子の美しさは、土田を現実から乖離させる。
 伊興曜子と二人ですごす幻想空間へと。
 毎日足しげくかよう日々。
 いく月か。
522箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:35:52

 土田は本来の目的である生きる意味と、
伊興曜子に対する恋をごちゃまぜにしていた。
 日に日に強くなっていく妄想。
 
 妄想にふける希望と、妄想にとらわれる絶望。
 これほど生を充実させたいとなみがどこにあろうか。

 その時、土田は誰かに話しかけられた。
 その話しかけられた人物に気がつかないほどの
土田は妄想にふけっていた。
 それが自身が恋する人物であろうとも。
523箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:36:43

「土田君おはよう。
 今日も富士山がきれいだね」

 静岡県民が日々富士山を話題にすることは、日常的なことである。

「あっ、伊興(いこう)さん・・・」

 土田はとっさのことに何を云えばいいか躊躇(ちゅうちょ)した。
 
「土田君は富士山、好き?」

「えっ、僕は・・・好きだよ」

 その後に、君のことが、といいたい衝動をぐっとこらえた。
524箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:37:30

「私も大好き。富士山。
 美しくも壮大で、生の苦しみなんか、ちっぽけなことに思えてくる」

 悲しくも美しいその顔が、土田に訴えかけた。
 すなわち、生きることは苦しいことだと。
 土田は生きることは苦しいことだとは、決めつけたくはなかった。
 まだ、生きる意味を探し始めたばかりだったのだから。

「伊興さん、なにか悩みがあるの?
 よかったら話してみて。
 話すことで気持ちが軽くなることもあるから」
525箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:38:26

「やさしいのね、土田君って。
 そう・・・、そうね。
 悩みというほどでもないけれど、年々、生きることってなんだろうって
 そう思えてきちゃったんだ。
 答えなんかあるのかどうかもわからない。
 でも、たとえその答えが救いのないものでも、
 人は生きていかなければならない」

「伊興さん。
 僕も伊興さんと同じことを考えていたんだ。
 おそらくはこの年齢。
 そして、世紀末という不確かな時代。
 この二つが僕らの考えに影響を及ぼしているんだろうね」
526箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:39:00

「生きる意味を考えると、どうしても死の問題は避けてとおれない。
 私、死にたくない。
 どうしてみんな永遠に生きられないんだろう。
 富士は古来、不死の山と呼ばれた。
 あの全てを手に入れたとされる秦の始皇帝でさえ死を恐れた」

「死は恐ろしい」

「だからこそ、私たちは今この一瞬を強く生きたいと思う」




    今この一瞬を強く   完



527箜間桐孤 ◆zrfOxD0F0s :2005/07/02(土) 04:42:44
☆あとがき☆

今回の話は、続きが浮かばないし、書く気もおきなかったので、
ボツにしようかと思った作品です。
でも、なんかそれももったいなかったので一応だします。

世界観としては、
告白前夜や告白後夜の世界観です。

まあ、適当に酒でも飲みながら読んでいただければ幸いです。
ああ、なんか最近小説が書けない。
まあ、いいや。
これも人生。
なんとかなるっしょ。(笑