告白後夜(実話)
作:箜間桐孤
*
僕の名前は、土田一平(つちだいっぺい)。
身長は、160たらず。
肌は白く、病弱な神経衰弱者をおもわせる。
対人恐怖症。
自閉症。
現代の病というものを、一身にあつめたような人間だ。
高校時代の僕は、幼かった。
まだ、何も知らなくて。
人が怖くて、街が怖くて、なにもかもが怖くて。
そして弱かった。
人の幸福は、認識によって決定づけられるなんてこと、
もちろん知らなかった。
人の心の構造も、人が何を求めるのかも、
歴史も、文化もなにもかも知らなかった。
人の生きる意味や、価値ばかり追い求めていたあのころ・・・。
高校時代。
僕は、恋をした。
今年で二十三歳になる。
今、高校時代のあの告白を思いだす。
箜間桐孤 殿
(´ヮ`).。oO 「 おばんでございます。」
....
(´-`).。oOどうも締まりがないですね。
基本は(´-`)で、たまに喜怒哀楽の表現+気分転換をしたい時に
(´ヮ`)で行ってみたいと思います。
み〜は〜さんもどうもです。
>ところで(´-`).。oOサソや、上のAAの方はトリップはつけないんですか?
トリップがあれば、こちらから、そちらの待機スレへとレスができるのですが。
まあ、人それぞれ事情があることと思います。
うがー。
(´-`)が最後のコテのトリップを辞めてから間もなく1年が過ぎようとしております。
トリップを付け、コテハンで当方も某スレでそこそこ活動をしておりましたが
色々と擦った揉んだがございまして現在は名無で希に顔文字のみでレスをしている
次第です。
過去ログを辿ってみるとトリップ当時の当方は現在とは全くの正反対で
書き込みの内容も余りにも幼稚すぎて恥ずかしい次第で...
(´-`)も最初は好奇心で箜間桐孤 殿のスレを覗くだけの筈でしたが
何時の間にやら応援しておりました。
箜間桐孤 殿の作品にinspireされたのか
*
僕が告白をする人物、伊興曜子(いこうようこ)。
彼女の美しさは異常だった。
静謐としたその瞳は現世のものを予感させず、
美しい眉はまるで夜闇に佇む三日月のよう。
髪は黒絹。
風が吹いていれば、黒髪のたなびく姿は幽玄の美となっただろう。
「なら、告白しなくちゃな」
誰に云うでもなく、ぼそりとつぶやく。
自分に云いきかせるように。
昨日、僕は電話で逢う約束をした。
もちろん、伊興曜子(いこうようこ)とだ。
正直、彼女と逢えるというだけで胸が高鳴る。
僕はどうみられているのだろう。
僕を好きになってくれるだろうか。
告白はうまくいくのだろうか。
さまざまな考え、憶測が僕の胸の中にうずまいた。
土曜日の放課後。
一年九組の教室には、もはや誰もいなかった。
そう、ただ一人を除いて。
あらかじめ、長岡結城(ながおかゆうき)ら、
僕の友人は、家に帰してあった。
僕の友人は、僕が今日告白をすること知っていた。
こういう言いかたは酷いけど、誰にも邪魔をされたくなかった。
教室の奥には、窓辺に佇む一人の少女が見える。
「風が吹いていればよかったのに」
なににでも興味が無さそうで、
でもとても可愛くて。
1998年、僕の世界は、彼女が全てだった。
ここまで、夢中な恋はしたことがなかった。
そして、これからもないだろう。
僕は、彼女に振られたら、自殺をするつもりだった。
もともと、この世界に未練なんてなかった。
これから生きていても、未来は予測ができた。
あるとき、友達に聞いてみた。
なんで生きてるの?
って。
「今死んだら、新しくでてくるゲームができないだろ?」
簡潔で明瞭な意見だった。
僕も悲しい。
ハンターハンターの続きは気になるし、
るろうに剣心だって毎回楽しみにしている。
ドラクエ7やバイオハザード3もでるだろう。
ほんと、そんなもんなんだよな・・・。
そのために僕も生きていた。
日本は、壊れていた。
日々進んでいく、崩壊という名の喜劇。
道徳は退廃し、はびこる援助交際。
駅には、頭の悪そうな不良が、奇声をあげていた。
少年たちは、人が殺したくてうずうずしていた。
「なんで、人を殺しちゃいけないん?」
「あん、警察がいるからだべ」
そんな会話があちこちから聞かれた。
幽々白書の影響だろうか。
それとも寄生獣?
僕の脳みそは、漫画以上の知識はつめこまれてなかった。
まあ、そんなことは、どうでもいい。
今は、目の前に伊興曜子がいるのである。
伊興曜子のことだけに集中しろ。
人生がかかっているんだ!
運命という名の歯車は、今日廻りだすであろう、そう大きく。
「伊興さん、ごめんね。よびだしちゃって」
「ううん」
「今日はいい天気だよなあ」
「・・・・・・・・・・・」
「やっぱり、雨が降るとまた違うよなあ」
「・・・・・・・・・・・」
「曇りの日は微妙だよなあ」
「そんなことを云うために私を呼びだしたんじゃ、
ないんでしょ?」
伊興曜子はちょっと怒っていた。
僕は困った。
だって、今にも心臓が張り裂けそうなのだから。
顔は平静をよそおっているが、内面はすでに発狂寸前。
こんなにも告白をするということは、勇気がいることなのか。
僕は、事前にアイズや水色時代、ママレード・ボーイ、
姫ちゃんのりぼん、などで告白のしかたを勉強していたのだが、
全く役に立たなかった。
圧倒的なまでの緊張と緊迫感。
なぜ、言葉がでてこない?
振られることは覚悟の上だろう?
もう、いつ死んでも悔いはないんだろう?
分からない。
分からなかった。
なぜ言葉がでてこないのか。
緊張のためてだということは、分かってる。
ただ、その背後に隠されてある理由が分からなかったんだ。
伊興曜子は下を向いていた。
ただ下だけを見ていた。
全てを悟りきっとその趣き。
僕は、本来ならここで感じとらなければならなかったのかもしれない。
伊興曜子の意思を。
伊興曜子の答えを。
「朝、伊興さんは、何を食べてきたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕はね、ごはんと味噌汁と、アジの開き。
やっぱ日本人なら、米食でしょ」
「そんなことは聞いてない」
「ごめん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕はね・・・・・んんん・・・はあ」
「はっきりと云って」
「僕はね、伊興・・・・いこう、漫画の森にいこう。
なーんちゃって」
「つまらない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そういえば、るろうに剣心で、薫が殺されたね?
あれどうみる?」
「見てない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
僕はもうそれ以上はなにも云えなかった。
僕が告白をするために伊興曜子を呼び出したことを
彼女はかんずいていた。
それで、僕がなかなか告白ができないことに苛立ちを隠せないのだ。
こんなにも難しいことなのか。
こんなにも神経をすり減らすことなのか。
告白をすることって。
僕たちはそれから何十分か、今のようのやりとりを永遠と続けた。
趣味は?勉強時間は?好きなテレビは?好きな先生は?
どの質問にも伊興曜子は答えてくれなかった。
僕は悲しかった。
告白ができないのは、僕が悪い。
でも、憧れの伊興さんといっぱい話したり、笑ったり、
そんなとりとめのないこともしたかったんだ。
伊興曜子の冷たいその顔は、ひどく美しかった。
伊興曜子の無言の圧力に、僕は射精しそうになるのをぐっとこらえた。
ここで伊興さんが僕を踏んでくれたらどんなに救いになっただろうに。
伊興さんの鼻の穴が舐めたい。
伊興さんの耳の穴が舐めたい。
伊興さんの尻の穴が舐めたい。
伊興さんの秘部をなめまわしたい。
そういえば、伊興さんは僕を変態として認識してくれるのだろうか?
僕は、伊興さんからの侮蔑の念がほしかったのかもしれない。
告白できない僕に対する、冷たい視線は、絶大なる快楽だった。
ここで読者は僕を快楽主義者と早とちりするかもしれないが、
それは違う。
僕はだんじて快楽主義者ではなかった。
森羅万象、この世すべての事象、その真理に到達するには、
物事の逆説をつくことこそ、その真理への唯一の到達方法だと思っただけだった。
ニーチェにかぶれたことはなかったが、
それだけは、確かだと思った。
サディスティックな願望は、マゾヒスティックな体現者がいてのみ
なりたちうる。
女がいなければ、男はなりたたない。
それは逆も同じ。
どうしても今、この瞬間に、伊興さんのお尻の穴を舐めてはいけないんだろう?
僕はわからなかった。
性欲が支配を強める高校生では、それ以上の考えに到達することは不可能だった。
一つになりたい。
そのためには、告白して、つきあう必要があった。
女性に聞かれたら、幻滅されそうな考えだが、
事実なのだから、しょうがない。
けど、僕は告白できなかった。
窓の外は、青から紅へと変化をとげていた。
富士が美しい。
なんてことだ!富士までも僕を応援してくれているのか!
静岡県民にとって、富士山は絶対である。
この世界に絶対というものがあるならば、
僕は迷わず、富士をあげる。
それほどまでに、静岡県民は富士に毒されていた。
僕は、その富士の応援に答えなければならぬ。
時は、1998年。
人類滅亡の日は近し。
告白を急がなければならぬ。
僕は脅迫観念にかられた。
逃げちゃだめだ。
逃げちゃだめだ。
逃げちゃだめだ。
逃げちゃ、だめなんだー!!
「綾波(あやなみ)萌えー!!」
「???・・・・どうしたの急に大声なんかだして?」
「ごめん、なんでもない・・・・じゃなかった。
伊興さん、僕はもう逃げない。
僕のほんとうの気持。
それを伊興さん、君に伝えるよ」
「・・・・・・そう」
「昔さ、伊興さん。僕と席を代わってくれたことがあったよね。
たしか僕の横に伊興さんの友達がいたんだっけ。
それで、そのとき、伊興さんの席に座ったときね。
とてもいい匂いだったんだ。
なんともいえない甘い匂い。
僕は君の匂いに惚れたのかもしれない」
「・・・・・・それで?」
「うん。それで、だんだん僕は伊興さんのことが好きになっていったんだ。
授業中、君をみているだけで、退屈な授業は、緩和された。
休み時間、君をみているだけで、僕は癒された。
君の顔は、そのしぐさは、僕を興奮させた」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「伊興さん、僕は、土田一平は、伊興さんのことが好きです。
つきあってください」
「・・・・・・・・・・・・・・ごめん」
「えっ?」
「私、今好きな人がいるんだ。一平君。
ごめんね。一平君なら、きっといい子が見つかると思うんだ。
だからね、ほんとにごめんね」
僕と伊興曜子はそれきり二度と会うことは、なかった。
*
告白後夜。
僕は泣いた。
一ヶ月間、毎晩泣いていた。
蒲団にくるまりながら。
なにがそんなに悔しいのか。
僕はなんのために生きているのか。
僕は、なんであれほどまでに伊興曜子に惚れていたのか。
それが分からなくなった。
僕の中の秩序は、崩壊した。
僕の心は、伊興曜子の答えを聞くにはあまりに弱かった。
触れれば壊れてしまう、砂の城。
まじめに生きてきたのが、馬鹿なように思えた。
けれど、二十三年間生きてきた今なら思う。
あのとき、僕は、振られたことを前向きにとらえなければならなかった。
断じて、女性嫌い、人間不信になってはいけなかったんだ。
それ以降、僕に彼女はできなかった。
あたりまえだろう。
僕は、高校時代すべてが嫌になってしまっていたのだから。
それほどまでに入れ込んでいたのだろう。
彼女、伊興曜子に。
けど、告白してよかったと思ってる。
告白して、悪い方向へもいったけど、
いい方向へいったことも少なくない。
長い人生、あの日、あの時、あの場所で、
あの選択をしてよかったと思っている。
一人の人間の、一つの頁(ぺーじ)に押し込められた物語。
他者からみれば、ただのありふれた恋愛劇にすぎないだろう。
けれど、僕の中では、とても大切な想いで。
今もあの日の僕は、きっとあの場所で、伊興曜子に恋をしているに違いない。
*
告白後夜(実話) 完