1 :
くるみるく。:
人は大切なモノをほんの少し失うだけで、何も見えなくなってしまう。
建物も、人も、全てが闇に染まってしまったように見えて、
僕だけが取り残された気分になる。生きている気がしなくなる。
人は、人がいないと生きてゆけない生き物。だから、人がいるんだ―・・・。
【【【希望という名の―――・・・。】】】
あれから、何年経っただろう。そんなことを考えながら、僕は今、公園のベンチに腰を下ろしている。
片手にはスケッチブックと色鉛筆。顔を上げると、空は澄んだ青に染まっていて、僕たち地上の人間たちを
見下ろしていた。
「・・・確かあの日も・・・」
ぼそり、と僕は口を動かした。
2 :
くるみるく。:05/03/06 14:49:10
日曜日、雲ひとつない青空、出かけるのにはもってこいの日・・・なのだが、そんな中、14歳の僕は部屋に閉じこもって
パソコンのある部屋へと歩いていった。『外なんか出たって面白いことなんか何もない。』
そう思っていた僕は、いつのまにかパソコンのチャットの面白さにハマっていた。僕が文字を打てば、
相手も会話をするように返してくる。言葉とは違って本音で語れる。「顔も知らない相手と会話なんて・・・」と
チャットを受け入れない大人はたくさんいるが、逆にチャット特有のコニュニケーションのやりやすさですぐ
友達になれる場合が多い。いつものように、パソコンの電源をつけ、いつものように、インターネットのアイコンに
マウスを置き、ダブルクリック。そしていつものように、僕と同い年の親友のいる行きつけのサイトへ飛ぶ。
いつものように「エイト」というHNの僕の親友がそこにはいた。しかもラッキーなことに、今日はチャット内には
僕と彼と二人だけ。閲覧者もいない。気軽に内輪を話せる。
「こんちゃw」
「ぃようw」
そのやり取りで、僕らの会話は始まる。・・・・はずだった。
「こんちゃw」
「・・・こんにちは」
いつもとは様子が違う。僕は心配して彼に話しかけた。
「どうした?いつものエイトじゃないぞ?w」
「・・・いや、ちょっとね」
「?今 俺だけだから話してみ」
「・・・・・・・・・」
1分ほど時間が経ち、ようやく彼は話し始めた。
「俺さ、リアルで結構いじめられてんだよね」
「・・・そか」
あまり驚くことではない。というより驚くほうがおかしい。最近のネット上には小中学生が多いと言われている。
しかもそのほとんどがいじめなどの理由で引きこもってる奴ばかりだからだ。(僕は違うが)しかし、
親友がいじめられてるとなると、何故か目を背けてはいられない。
3 :
くるみるく。:05/03/06 14:49:30
「先生にとか親に相談はした?」
「したよ だけどセンコーは「解決する」とか言って何もしないし、親は「自分で解決しろ」だのいうし・・・
俺・・・・どうしたらいいんだろ」
顔はわからないけど、本当に困ってるようだった。
「じゃぁいじめる奴にギャフンと言わせてやれ!w」
冗談で言ってみた。・・・つもりだったのだが、それを本気で受け止めてしまったらしく、しばらく
返事は返ってこなかった。
(・・・まぁ 気ィ落とすなよ。俺がいるから)
と、僕はキーを打ち込もうとした。が、先に彼から返事が来た。返ってきた一言は・・・
「・・・俺、死にたいな」
ドクン、僕の心臓の音は、確かにそう聞こえた。そして、何か思いついたように文字を削除し、新たな文字を打つ。
「そんなこというな!確かに今は死にたいかもしれないけど俺がいる!リアルのことなんかで負けんな!」
本音だった。僕が今までにない口調で言ったからか、彼は少し驚いた様子で黙っていた。が、時期に・・・
「うん、ありがとな。俺頑張るわ ・・・じゃ」
彼はこの場から立ち去った。力のない言葉を言い残して。僕は、取り残された気分だった。
「絶対帰って来いよ。俺 待ってっから」
そう、僕も言い残して、チャットを閉じた。
4 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:05/03/06 14:49:37
11 名前:くるみるく。:05/03/06 14:44:58
人は大切なモノをほんの少し失うだけで、何も見えなくなってしまう。
建物も、人も、全てが闇に染まってしまったように見えて、
僕だけが取り残された気分になる。生きている気がしなくなる。
人は、人がいないと生きてゆけない生き物。だから、人がいるんだ―・・・。
【【【希望という名の―――・・・。】】】
あれから、何年経っただろう。そんなことを考えながら、僕は今、公園のベンチに腰を下ろしている。
片手にはスケッチブックと色鉛筆。顔を上げると、空は澄んだ青に染まっていて、僕たち地上の人間たちを
見下ろしていた。
「・・・確かあの日も・・・」
ぼそり、と僕は口を動かした。
5 :
くるみるく。:05/03/06 14:50:50
1週間後、日曜日。さほど変わらない青空。だが、僕の心はまだ晴れてはいなかった。
(エイトは・・・大丈夫だろうか)
いつものようにパソコンをつけるが、このことばかりが気にかかる。今回ばかりは足早にチャットへ
行ったつもりだ。何故か身体と気持ちが一致していないように、気持ちだけが先走る。不思議な気分だった。
「こんちゃw」
今日は少し人がいる。いつものように挨拶をしつつも、僕は「エイト」というHNを探していた。
(・・・よかった・・・・・・・・)
いっきに力が抜けていくようだった。そこに彼のHNがあったのだ。しかし、少し様子が違う。
「こんにちは」
「ん?なんかエイトっぽくないんですケドw」
エイトはこんな言葉はあまり使わない、そう思ったのもつかの間、彼から内緒話で返ってきた。
『ごめんなさい。私、エイトの妹なんです』
『・・・・え?なぜに妹さんが・・・?』
『はい。実は先日、兄が亡くなりました・・・』
ドクン、この前と同じ、心臓の音。最後尾の「・・・」は何を意味しているのだろうか。僕はわかっていた。
そして、彼女を傷つけぬよう、細心の注意を払ってキーを打つ。だが、その手は震えていた。
『いじめが・・・・原因ですか?』
『・・・はい。どんどんいじめがエスカレートしていって、最後の最後に抵抗したらしいのですが、
それがいじめっ子の気に障ったらしく、最期は橋の上から・・・・・・・・・・』
彼女の言葉は途切れていた。その場の空気が冷めてゆく。
『彼らは「まさか死ぬとは思わなかった」と言っていて、私たちに謝ってくれましたが、もう・・・遅いですよね。
死んだ人間はもう帰ってこない。もう帰ってこない・・・・・のに・・・・・・・・』
冷めた空気が、やがて大粒の雨に変わった気がした。
『それと、兄からの伝言が・・・』
『・・・・?』
6 :
くるみるく。:05/03/06 14:51:14
何か遺書があるようで、彼女は何かを見ながら打っているようだった。
『「君がこの言葉を受け取るのはいつかな。明日かもしれないし、もしかしたら数十年後かもしれない。
だけど、俺はこの言葉を送ります。俺は前、「死にたい」っつったこと覚えてる?そんときはホントに
この人生が嫌になって、しかも、何も抵抗する勇気もない自分まで嫌になって・・・・・、なのに誰も助けてくれなくて、
俺は世界中の中で一人ぼっちだって思ってた。だけどさ、お前が「俺がいる」って。本当に嬉しかった。
今まで俺は一人ぼっちだと思い込んでたから。信じてくれる人がたった一人でもいれば、
心底安心できるんだよな。だから俺今日、あいつらに抵抗してみようと思う。もし駄目でもまた抵抗してやるさ。
お前が信用してくれてると思うと、何度でもできる気がするよ。もし、チャットができなくなったとしても
俺たちは繋がってるよな。ずっと。じゃぁ、頑張ってくる。諦めたりなんかしないから、お前も諦めんなよ!
エイトより。HN、希望(俺の大親友)へ。
・・・だそうです。』
『・・・・そ・・・・うですか・・・・・・』
キーボードが濡れていた。彼女もきっと同じ気持ちなんだろう。
彼は、自ら希望を捨ててはいなかった。
きっと彼は、僕より何倍も心が強い。僕の本名は、神崎 希望。母親は「希望を捨てるな」という
由来でつけたらしい。その僕が希望負けしてどうする。あいつに顔向けできない。そう思いながらも
キーボードを打つ気力はたった一言しかなかった。
『ありがとう』
これが、精一杯の、そして、心の底から出てきた「気持ち」そのものだった。
『はい。こちらこそありがとうございました。・・・・それでは』
と、彼女はここを立ち去った。
7 :
くるみるく。:05/03/06 14:51:54
僕はもう、ここへ来ることはないだろう。来る意味がなくなった。そして、パソコンを触る意味も。
僕はパソコンをシャットアウトすると、外へと足を踏み入れた。雲ひとつない青空。
エイトも、この空を見ていたのだろうか。
いや、
彼はこの空にいるのかもしれない。微笑んで僕を見下ろしている気がした。瞳から流れ落ちた涙が、
まだ残っている。いじめられている時の彼は、僕以上に一人ぼっちという思いを抱いてきたのだと思う。
(あいつは・・・・元気にしてんのかな・・・・)
「・・・・・そうだ・・・・」
あることを思いついた。僕は急いで家へもどり、スケッチブックと色鉛筆を取り出して、
また青空の下へ戻った。
(この空を書きとめてみよう。それが今、僕の一番やりたいこと、希望だ)
そして、絵なんか描いたことの無い僕の手は、不器用ながらもスケッチブックいっぱいの、
青く澄んだ空を描いた。
「君は、笑っているかな。いや、笑っててくれ。この空のように。僕も、精一杯笑って、希望を捨てないから。
何年経っても、何十年経ったって、僕はお前の分まで精一杯生きてやる――・・・。」
8 :
くるみるく。:05/03/06 14:52:29
その数年後の僕は今、ベンチに座って空を見ている。
「同じ・・・・空だ」
ぼそっと呟くと、僕は夢中で片手に持っていたスケッチブックと色鉛筆を取り出した。
描いたのは、本物そっくりの青空。最初に描いたときとは桁違いの画力だ。そして最後に・・・
「神崎 希望・・・・っと。よし、できた!」
絵に自分の名前を書く理由は、「この名前のようにいつまでも希望を忘れない。」という気持ちを
込めているからだ。自分の名前は、誇らしく思っている。僕はスケッチブックを空へ掲げた。
「・・・俺は元気にしてるよ――・・・。」
その時、ほんの少しだったが、青空が微笑んでいるように見えた。僕は一瞬驚いたが、やがて
何かを感じ、ベンチから腰を上げた。
「・・・・さてっ、行くか」
そして、どこまでも続く青空の下、僕はどこまでも歩んでゆく――・・・・。
人は一人では生きてゆけない。これは本当の事だ。
しかし、
一人で歩けないからこそ、一人ではないと感じたとき、人は大きな一歩を歩めるのではないだろうか。
辛い事を味わった人間こそ、心底強い心が持てるのではないだろうか。
僕は、そんなことを感じながら、今日に希望を持って精一杯生きている。
顔なんかわからなくても、声なんかわからなくても、
世界中が闇に染まったとしても、
たとえ世界が闇に染まってしまったとしても、僕らの心は繋がっているから・・・。
END
Θ中2の野郎が書いたんで誤字とか文がおかしいとかあるかもしれませんが
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。
9 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:05/03/06 15:00:04
ゲラワロスw
10 :
まま 202-32-53-198.cat-v.ne.jp:05/03/06 15:06:50
オチもなんもない話しだが精進するべし。
11 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:05/03/06 15:25:19
オチなんか無くてもいい文章だったぜ
12 :
悪い子(・д・) ◆Dir/m69enI :05/03/06 16:52:05
分かりやすいが
13 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:05/03/06 16:54:05
↑
北国のトム・ハンクス
14 :
トム ◆Dir/m69enI :05/03/06 16:56:20
呼んだか
15 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:05/03/06 17:01:25
>>14 自スレにも書きこめよw
話はそれだけだw
何だこれ?
17 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:05/03/06 19:13:06
長い。
18 :
ハン ◆Dir/m69enI :05/03/06 19:43:14
19 :
ミッチー ◆Michy/YYVw :05/03/06 19:44:12
ゆみ・・・・・・・
20 :
ゆみ ◆Dir/m69enI :05/03/06 19:46:20
呼んだか。
僕ら地球号の船員ですう
宇宙船地球号のことかああああああああああああ
23 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:
アポロかああああああああああああああ