殊羅研とアキオとりさぷで書いていきます。
なんでsage?
とりあえず簡単な設定だけ。
少年が一人。名前はトシミ。17歳。
彼の趣味は眠り、夢をみることだったが、ある日それをやめてしまう。
僕と俺を混合しながら使う。
以上。
糞スレでもゆるしてチョン
物語系ですか。。
ではROMらして貰いますね。
僕はギリギリのところまで来てしまった。そして手放した。
なんとしてでも、その先へ進みたかったからだ。
目を閉じるとどこからか音が聞こてくる。獣のようなうなり声。
なんだろう。でも、今の僕にはどうだっていい事のように思える。
僕はもうあの家には帰らない。
目を剥いて、世界を突破すると、あの時に決めたんだ。
夢を僕は最近までよく見ていた。
眠りながら見る夢も、未来へ期待する夢も。
夢の殆どが叶わないんだと、僕は知っていたけれども、
妹には、強く願えば叶うかもしれないよ、なんて笑いながら冗談を言っていた。
夢の殆どは叶わないと言うと、妹は悲しい顔をしたからだ。
でも、今、僕は思う。
夢は叶うと思っていた頃よりも、今のほうが、ずっと自由だと。
10 :
あきお ◆AKIO49xlAA :04/05/14 23:03
その妹が彼氏を家に連れてきた。
そんな昼下がり。
妹の彼氏はお世辞にも美男子とは言い難い容貌だった。
顔は去年まで飼ってた亀に似ていた。とても可愛がっていたが
ドイツ旅行から帰ったら水槽が干からびて死んでいた。
そのとき以来、母親と口をきいていない。
「お兄さん、お仕事は何やってはるんですか。」
すっかり禿げ上がった額に脂汗を滲ませて男が聞いてきた。
「高校生です」
まだ少年ですから、と付け加えておいた。
そう、僕は夢みることをやめた少年。
心の中で、そっと呟く。
夜勤があるので、と言って手土産の赤福餅を置いて
そそくさと妹の彼氏は帰ってしまった。
でっぷりと肥えたあの男と、兄さん存外うまくやれるかもしれんよ、と
冗談まじりに妹に言うと、笑みをうかべて
「彼すごいのよ」
そっと耳打ちをしてきた。
妖艶で、それでいて天使のような不思議な笑みだった。
ヘタな演技だな、と俺はすぐに感じていた。
冴えない風采の上がらない駄目男に惚れている自分を伝えることで
大きな夢を描いて挫折した俺にも居場所があることを教えてくれようとしている。
きっとまだ、俺が家を出たことに対して妹は責任を感じているのだろう。
今まで、たったの一度も俺に彼氏など紹介したことのなかった妹が
あの夢見がちで繊細な妹が、あんな男に恋心を抱かないことは
僕とって分かり切っていることだった。
何食わぬ顔で赤福餅とお茶を妹に振舞いながら、コッソリと携帯のメールで
妹と僕の共通の親友であるリコに確認をとってみると、やはり妹には
ああいう容姿の知り合いは居ないらしかった。
恐らく、出会い系のサイトでデートする代わりに一演技してくれとお願いしたのだろう。
まだ五月だというのに脂汗にたぎっていたあの男の表情はかなりぎこちないものだった。
赤福餅には手をつけず、お茶だけ飲み干した僕は
「家に戻るかも知れない」と呟く。
妹の表情が急激に明るみ、それを悟られまいと僕から目線を逸らす。
昔の僕だったなら、或いは照れながら苛々しながらも
今の父や母の様子を尋ねたかも知れないが、もう俺はそんな自分を
ふっきっている。
「冗談だ。今後一切そっちに戻る気は無い」
そう妹に向かって冷たく言葉をぶつけ、帰るように催促する。
半ば強引に妹を家から追い出した後、酷く落ち込んだ僕は
発作的に心から信頼しているあの人に電話をかけた。
「・・・・はい。もしもし。え?あなた誰よ。周りの音がうるさくて聞こえないんだけど」
「トシミです。」
「ああ!トシミ君〜。ごめんねー、今お風呂から上がったばっかりで
うん、そう、お風呂。無駄毛の処理してたの。え、なに?うわー、言うねぇ・・。
私だって無駄毛くらい生えますよ。あんたの女だって絶対脱毛してるよ。マジで。
女は男より大変なんですよ〜ぅ。あ、ごめん。で、なんだっけ?」
「・・・あの、今日の夜、空いてませんか?ちょっと話したい事があるんです・・・。」
「話したいことー?今言っちゃいなさいよ。私、出かけるの面倒くさい。せっかくメイク落としたし、
これから化粧水つけてその後パックもしなくちゃいけないわけ。明日の仕事の準備もしなきゃだし。
それでまたトシミに会うためにわざわざ化粧?冗談じゃないよバカ。
ちょっとは私の苦労も考えて発言してちょうだい〜。」
「あ、すみません・・・。えっと、じゃあ、あの、、これから、ミチルさんの部屋まで行っていいですか?
僕、ミチルさんのスッピン見たことないけど、多分綺麗だと思うし・・・それに・・」
「あははは。うん綺麗に決まってんじゃないの。うん、わかった、じゃあオイデオイデ。
今どこいんの?車で近くまで迎えにいってあげようか?」
「いや、あの、大丈夫です。電車で30分くらいだし。。あ、何か買っていったほうがいい物ありますか?」
「んー。じゃあコンビニでタバコ買ってきて欲しいな。イブサンローランのね。無かったらマルメン。」
「わかりました。じゃあ、今から出ます。」
「ハイハーイ。待ってるね。トシミ君〜チュウゥゥッ!!」
・・・チュウ!? ミチルさんは酔っ払ってでもいるんだろうか。前に会った時は仕事が忙しいと言っていたし。
疲れてるのかもしれない。迷惑にならないよう、相談したいことだけ話したら早めに帰ろう。
・・・そして僕は玄関のチャイムを鳴らす
「ハイハーイ。あ、早かったじゃん。トシミ〜ン♪んぎゅ〜う〜」
・・・・ !? トシミ〜ン♪!? んぎゅ〜う〜!?
お知らせ。
私のお友達が一人、気が向いた時に書きたいかも、と言うので、もしかしたら
参加者が一人増えるかもしれません。でも、人数がいればいるほどいろんな考えがあって
いろんな展開が期待できるかもしれないから、その辺は楽しみです。
であ、よろしくです。m(.。_。)m
ミチルさんは今年22歳だったか23だったか。
妹の家庭教師をしてもらった縁で今もこうして交流を持っている。
一見して清潔感のある美人だが、話してみると性格はざっくばらん
男勝りな性格が、優柔不断な自分には心地いい相手だった。
「ごめんねえ。一人でビール飲んでた。…トシミンも飲む?」
アルコールで頬を上気させた艶っぽい年上の女性の申し出を
未成年ですから、と断ると
代わりにロイヤルミルクティーと赤福餅でもてなしてもらえた。
先刻電話で聞いた話と違い、どうも彼女はすっぴんではないように見える。
しかし「諸行無常」と毛筆書体で印字されてるTシャツにスウェットパンツという
いでたちは、およそ目の前の異性を意識してるとは思えない。
「実は妹のことで相談したいことがあるんですが」
16 :
殊羅研 ◆1EowoMn0b2 :04/05/17 19:28
>>15の続き
「ん? ユイちゃんがどうかした?」
買ってきたマルメンを口に咥えたミチルさんは
ジッポライターを僕にトスする。
僕は昔教わった通りに左手だけでジッポの蓋を弾き、火を点け
右手を添えながら、ミチルさんが口に咥えている煙草を焦がす。
深く煙草を吸い込み、細い煙を吐き出したミチルさんは満足気な表情を浮かべ
「んふっ 上出来♪」と僕を褒めてくれた。
室内が煙草の煙で充満し、ミチルさんはソファーの上で酔い潰れて寝ている。
結局、僕はミチルさんの誘いを断りきれず、大分飲んでしまっていた。
時計を見るともう終電が発車する時間が迫ってきていたので
僕は急いで散乱したビールの空き缶を集め
マルメンの山に埋もれた灰皿を綺麗にして、ミチルさんの部屋を出る。
が、ふと思い直し、部屋へと戻り、ミチルさんのベットへと向かう。
僕はミチルさんに取ってきたタオルケットを掛けて部屋を後にした。
(妹がミチルさんの様だったら…)と僕は空想に耽りながら
終電に揺られて家路についた。
――「はぁ…」
溜息をつきつつ、起き上がり
タオルケットを握り締めながら、私はベットへと倒れ込んだ。
それから私は、ベットの傍の壁に貼ってある
左利きの昔の男の写真を眺め続けた。
17 :
殊羅研 ◆1EowoMn0b2 :04/05/18 16:27
てすと。
「ふぅ・・・そういえばトシミ君の相談って結局なんだったんだろ。
妹の事についてって言ってた記憶があるけど・・・。
悪い事したかなー。せっかく来てもらったのにロクに話もしないで
酒ばっか飲んで・・・・。うぅ。なんか自分がイヤになってきた・・・。」
・・・
「ねぇ、加藤君、私こんなんでいいのかなぁ・・・。」
「お酒もタバコも最近多いし・・・」
加藤君は今、元気にしているんだろうか。彼との別れはとても唐突だった。
始まりは、とても甘美で優しく、空気のごとくとても自然に訪れたけど、終わりは
ドアをバタンと大きな音をたてて閉めたような、そんな後味の悪い別れ方だった。
写真の中の加藤君はいつでも笑っている。眼鏡から覗かせる瞳がとても可愛い・・・。
もう、彼と会うことは無いとわかっているのに、どうして私はいつまでも写真を飾ったままでいるんだろう。
友達や両親は、早く新しい恋でもしなさい。良い男は他に幾らでもいるんだから、なんて言う。
私もその通りだと思うけれど、いまひとつ、次の恋を探すような気分にはなれない。
加藤君は私をここに一人置いたまま、タバコの煙のようにフッと去っていってしまった。
私はいまでも彼に縛られたままでここにいる。
別れてからもう何年経っているのに、どうして加藤君は私を解放してくれないのだろう。
いや、違う。むしろ、私が加藤君に固執しているだけなんだ・・・。
・・・それだけ彼が好きだった。
私はいつのまにか涙が止まらなくなり、ティッシュを全部使い切ってしまった。
「新しいティッシュ買いに行かなくちゃ・・・」
明日仕事の後、スーパーによって買って帰ろう。
ミチルの加藤君への独り言:
タバコの煙のように現れて・・・
タバコの煙のように消えていった・・
この吸殻に火を付けたら
また、、会える?・・・・
20 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:04/05/19 02:56
今でも私は、悲しくて仕方がないときに
彼との交換日記を読み返している。
よせばいいのに、お互いに相手の母国語を覚えようと
私から提案してはじめた交換日記は、
別れる一週間前まで続いていた。
私が必死になって覚えた朝鮮語で書き綴った次のページには、
まるで覚えの悪い私を嘲笑うかのように、
彼の中国語で書かれた日記が達筆な字で埋められている。
彼はずっと傲慢で、そして人をやや見下すような目つきで
私に接していた。
でも、それがなぜか心地よく、ある意味そういう仕打ちが
一種の快感とでもいうべきものへと昇華していったのだ。
私が加藤君と呼んでいた、加藤というのは通名で、
彼は在日の韓国人であった。知り合ったのは当時は新聞社に勤めていて
主に、北朝鮮拉致被害者問題についての記事を書いていた。
彼と知り合ったきっかけは、私の大学時代の友人の紹介だった。
私がバレエに興味があることを知っていた友人は
彼にそのむねを伝えて、じゃあ3人でバレエでも観ようかという事になったのだ。
その頃は、パリ・オペラ座のバレエ団が来日していて、M.ベジャールが振り付けをした
ベートーヴェンの有名な「第9交響曲」のモダンバレエを観に行った。
友人はどうやら、モダンよりクラシックバレエのほうが好きらしく、
あまり良い感想を持たなかったようだったが、私と加藤君はとても感激して
友人をほったらかして、喫茶店で何時間もその日観たバレエについて語り合ったのだった。
>>20 でうっかり名無しのまま
カキコしちゃいましたぁ☆ミ
これからゎ りさぷ→アキオさん→殊羅研さん
の流れでぇ
思いつきで乱入しちゃってもいい?
迷惑かもしれないけどー
あたしなんか飽きっぽいから
たまにカキコするね☆
24 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:04/05/19 05:17
そして彼は鈴木宗男としてこの世に君臨した
25 :
ネットお医者さん:04/05/19 05:42
だけども、
時代は彼を受け入れてはくれなかった。拒んだんだね。
その類希な顔を。
僕は困惑していた。
どうやら情報が錯綜している。
何を信じるべきなんだろう。
玄関の黒い電話がジリリリリリリと鳴り響いて
白昼夢におちいりかけた僕を我にかえらせた。
「もしもし、私は死神です。」
それは聞き覚えのない男の声だった。はあ?死神?
「残念ながらあなたは今から60日後に死にます。」
唐突な内容の発言は寝ぼけた僕の頭に浸透するのに時間がかかった。
タチの悪い悪戯だとすぐに判断できなかったのは
不気味なくらい低く重みを持つ男の声に、妙な説得力があったからかもしれない。
「助かりたいのなら…」
男の話はなおも続いていた。
受話器は耳に当てていたが平静さを取り戻した僕の頭の中は
すでに別のことを考えていた。
明日妹の誕生日だ…
「…ことです。わかりましたか。では幸運を祈ります。チーン。」
ガチャン、と電話が切れてまた我にかえる。
そして受話器を置いて久しぶりに一人で笑った。
チーン?仏具の音のつもりか?死神じゃなかったのか?
つまらない悪戯だったが一応話のネタにはなるかな。
そう考えているに気が晴れてきた。
だが翌日、一人朝食を食べながらふと
あれは本物の死神の声じゃなかっただろうかと言う考えが頭をよぎった。
うちのにはいまどき古めかしい黒い電話なんか無かったのだから。
28 :
殊羅研 ◆1EowoMn0b2 :04/05/20 21:42
>>27の続き
二日酔いのせいか、食の進まなかった僕は
食べかけのパンをゴミ袋に放り入れ、急いで身支度を済ませ外出した。
急ぎ足で駅に向かう傍らで財布の中身を確認し、殆どお金が無いことに気付いて
愕然としたが、足取りを緩めずに駅まで歩みを進めた。
駅の窓口で、池袋までの往復定期券を購入し、やや混雑した電車へと乗り込み
さっそく携帯を取り出し、妹へのメールを打ち始める。
Dear ユイへ
16歳の誕生日おめでとう。
出来損ないの兄は何もしてあげることが出来ないけど
ユイが幸せになってくれることを何時も願っています。
家のこと大変だろうと思うし、ユイには申し訳ないことをしていると思っている。
だから、っていう訳でもないんだけど、今日から始まるバイトの給料が出たら
メシを奢らせて欲ください。職場が池袋なので、俺がどっか美味しい店探しておくから。
※あの素敵な彼氏は一緒じゃなくていいからね(笑)
メールを打っている最中、近くの私服姿のオッサンの息が臭くて苛々させられたが
爽やかな心持ちに努めて、我ながら余り冴えない感じがするメールの送信ボタンを押す。
池袋に到着するまで、窓の外に視線をやりながら、昨日の妙な電話のことを考えていたが
多分、酔っ払っていたせいだろうと結論付ておくことにした。
池袋にもうすぐ到着するというアナウンスが車内に響き
ふと、車内に視線を戻すと、さっきの息の臭い私服姿のオッサンと目が合い
そのオッサンの手がOL風の大人しそうな女性のスカートの中に突っ込まれている様子を
確認したが、気付かないフリをして目線を逸らし、苛々しながら池袋に到着するのを待った。
<ユイちゃ〜ん(*^^*)。今度はいつ会ってくれるのかな?あの時の事が忘れられないよぅ(^^;>
うっぜえ・・・。
ユイは出会い系で知り合った男からのメールにウンザリしていた。
たった一回デートして、それから、お兄ちゃんに会わせただけなのに・・・。
すっかりその気になって毎日メールと電話してくるし、
着信拒否してもメアド変えて送ってくるし。勘違い男ってマジ疲れる。
彼女はタバコをフーッと勢いよくはき出すと、ベッドに横になり、読みかけの漫画を読み始めた。
・・・寝タバコってよくないよなぁ・・・ってゆうかタバコ自体やめたい・・・。
・・・最近どっかの漫画家も寝タバコの火事で死んだし・・・
ユイが家族に隠れてタバコを吸うようになったのは1年前からだ。
ちょうどトシミが家を出てからの事だ。ありがちと言ったらありがちだが、
当時の彼女は他に依存できる人間もモノも何も無かった。
「だれ〜かの願いがぁ 叶うころ〜〜 あのこが〜 泣いてるよ〜ぉ♪」
携帯の着ウタが鳴る。
お兄ちゃんだ。なんだろう。珍しいな・・・。そう思いつつユイはメールを開いた。
・・・あっ、・・・今日私の誕生日だったんだ・・・。
自分でも忘れていたのに、よく覚えててくれたなぁ・・・。
池袋かぁ、近いし、仕事が終わるころ遊びに行ってみようかな。
その時だ、
ジリリリリリリリ・・・と、リビングの電話が鳴る音が彼女に聞こえた。
受話器を取ったのは母だった。
どうやらイタズラ電話だったらしい。
1オクターブ高い声で「えー?今ネグリジェ着てる」という楽しそうな母の声が
聞こえてきたので多分猥褻な内容だったのだろう。
母の度の過ぎたノリの良さには時々、辟易させられる。
高校を中退して一ヶ月、ユイは夕方のスーパーでレジを打つバイトをはじめた。
ユイ自身もっとお洒落なバイトがいいと思っていたが
父と母に対する後ろめたさとの折り合いで、結局地味な今の仕事がとりあえずの
着陸ポイントに相応しいと考えたのだ。
もう少し落ち着いたら、何か手に職をつけるか専門的な勉強を始める事も
考えなければならないだろう。
もやもやと思い巡らせてるうちにバイトの時間がせまってることに気づき
ユイは家を出た。
31 :
殊羅研 ◆1EowoMn0b2 :04/05/23 19:03
>>30の続き
東京は祭宴空間だという。
確かに、この池袋の街並みを見渡したとき、平日の昼間だというのに
普段何をやって生活しているのか想像できない様な人々が
何処かしら浮ついた感じでプラプラと歩き回っている。
見渡せば、【おいしい】【気持ちいい】【面白い】といった刺激を煽る情報が氾濫し
そういった刺激を享楽することを全面肯定する雰囲気が
この場にも蔓延している。
こういう場の雰囲気に流されて育ったら、きっとロクな人間にならない。
なんてことを思いながらも、僕はチャラチャラと着飾った
この祭宴空間の申し子の様な女の子達に声を掛け続けている。
今日から始まったバイトは、出会い系パブに参加してくれる女性をキャッチすることが仕事で
既に三人ほどキャッチに成功している。
一人ゲットすると僕は千円の報酬が得られるので、既に三千円の儲けということになっている。
この仕事の先輩によれば、最初はなかなか上手く行かず、声を掛けても無視され続けることに
我慢できず直ぐに辞めてしまう新人が多いという話を聞いたが、何故か僕の場合
立ち止まって話を聞いてくれる人と、そうでない人との違いが大体感じ取れるので
余り辛い思いをせずに楽しく仕事が出来ている。ひょっとしたら、この仕事は僕に向いているのかも知れない。
きっとそれは喜ばしいことであると思うのだけれど、何故か自分がどんどんとつまらない
駄目な人間になっていく様な感覚があって、垢抜けた女の子達に笑顔を振りまき、努めて柔和に話しかける一方で
既に僕は次の仕事を探すことを考えていた。
ティロリロリロリロリ〜・・・
携帯が鳴った。
ユイからのメールだった。今日、仕事が終わったら
一緒にご飯でも食べない?という内容だ。
そうだな・・・誕生日祝いも何もしてやってないし、
飯でも奢ってやろうか。まぁ、奢れるといっても、ファミレスか
安い居酒屋になってしまうが。
前回、うちに彼氏(かどうかは定かではないが)と一緒に遊びに
来た時、ユイに冷たい言葉をはなって、強引に帰らせた事を
僕はまだ少し後ろめたい気持ちで、後悔していた。
会ったら、まず最初にその事を謝ろう、と僕は決めた。
と、その時、前から黒に白い百合の花がプリントされている
丈の短めなワンピースを着た女性が目に入った。
彼女は、髪をアップにして、前髪と耳から少しだけ後れ毛を
たらしている。普通、ああいったワンピースを着て、ああいう髪型を
すると、大抵の20代の女性は、水商売っぽく見えてしまうのだが
彼女には全くそんな雰囲気は感じられなかった。
バッグも、ショルダーにラメをあしらったモノトーンのディオールの古い型の物と
思われたが、それも彼女にしっくりとなじんでいる。
足首は細く、サンダルのストラップ余計に彼女の華奢な足を美しくひき立てている。
とても、水商売なんかしそうに無い女だ。彼女はいたる所から
たくさんの男女の視線を浴びても、私には関係ないわ、とでも言うように
スッと背筋をのばし、前を向いて歩いていた。
僕は何故か、どうしても彼女に声を掛けなくてはいけない、その瞬間思い、
「あの、すみません、ちょっとお時間頂けないでしょうか・・」
と気付いた時にはもう声を掛けてしまっていた。
あう、誤字脱字多いですね。すみまへん。
34 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:04/05/25 04:43
「夢を見るのを辞めた少年」
夢を見るのを辞めた少年が朝焼けの中で一本タバコを吸い終わった頃。
背広を着た 彼 彼女 達は朝もやの中を掻き分けながら大掛かりな
機械仕掛けの道を通って自分達のするべきもの ことがある場所へたどり着いた。
そんな中
少年はゆっくりと視線を町並みに落とし
さえずりをほおばりながら
自転車をこいだ
「なんでしょうか。」
そのとき初めて彼女の顔を見た。
名前は思い出せないが何とかいう沖縄出身のタレントに似ていると思った。
なかなか好みにタイプに近い。
「少しお時間いただけないでしょうか?」
プライベートでもよく利用する喫茶店に誘い入れようと試みる。
モーションのかけ方には数パターンのマニュアルが存在するが
自分に合ったものを選択すると馬鹿馬鹿しく思えるくらい
ありきたりな言葉が自然と口から出てくる。
「…いいわよ」
耳を疑った。
この仕事は初めてまだ間もないのだが自分は資質として向いてる方だとは思っている。
だが物の数分で最初のとっかかりを掴めたという話は先輩連中の話にも
聞いたことがない。もっともここからが本番なのだが。
二人で喫茶店に向かいながら、僕は彼女が似ていると思うタレントの名前を思い出した。
羽賀研二だ。よく似ている。
36 :
殊羅研 ◆1EowoMn0b2 :04/05/26 21:34
「現在、お仕事は何をされているんでしょうか?」
見た目や立ち振る舞いから察するに、僕より年上でプライドも高そうな人だと
判断したので、僕は努めてビジネスライクなキャラクタで彼女に接することにした…
が、彼女は何も答えず、目の前に出されている紅茶に口を付け
押し黙ったまま涼しげな目線をガラス越しの街中へと向けている。
「実は僕スカウトの仕事中でして、お時間があったら今から店のシステムを説明させて頂きたいんですが…」
と、話しかけてもこちらに視線を合わせようとせず、まるっきり僕の存在を感じていないかの様に
羽賀研二似の彼女は紅茶を紅茶を啜りながら、何処か遠くの方を見つめている。
僕は少し思案し、それから改めて出会い系パブのシステムを説明しつつ
先ほどスカウトし携帯で撮影した陽気な女の子達の画像を見せたり
店に行けばもっと美味しい紅茶やケーキをタダで飲み食いできたりすることを強調したりして
彼女の関心を惹こうとしたが、相変わらず彼女は紅茶を啜りながら街中を見つめ続けている。
ひょっとしたら、街中に何かあるのかと僕は感じ、彼女が目線を送っている方向の先を
目を良く凝らして観察してみたが取り立てて何も見つからない。
と、視線を戻すと、紅茶を飲み終えた彼女が煙草を口に咥えて僕を見つめている。
僕は急いで火を貸そうと思い立ったが、ライターなど持ち合わせていないことに気付き
白々しく懐をまさぐりながら「あ〜、ライター店に忘れてきちゃったみたいだ」と咄嗟の嘘で
なんとか彼女を店に連れて行ける口実を捻り出してみたが
彼女は、僕の本心を見抜いたかの様な冷たい視線を僕に向け
細い指に摘まれた煙草を僕の飲みかけの紅茶の中に突き刺し、軽くかき混ぜ
「貴方に残されているのは、後、59日」
と、言い残し店から去っていった…
僕はポカンと口を開けたまま、昨日の電話のことを思い出していた。
37 :
名無し戦隊ナノレンジャー!:04/05/26 22:33
私に「善」とされる感情が芽生えたのはいつの頃からだっただろうか・・・。
さっきから涙がとまらない。何が哀しいのかもわからず、ただ哀しく泣いている。
私は生まれてからすぐに、歪曲した時空の彼方にある混沌の中心で、
「死神」と呼ばれる、おぞましい巨体のもののけの姿形をしたモノに出会った。
彼がいる混沌の中では、思考が現実となり、地球に這い寄る全ての混沌が彼の
心の核の中でつくられていると、その時私は知ってしまった。
知ってしまったからには、もう彼には逆らえない。
私は人々をそそのかし、騙し、彼らが自ら堕落や破壊していくよう仕向けるのを手伝ってきた。
自分が何者かはまだわからない。でも、きっと悪魔の概念に近い存在なのだろう。
皮肉屋で冷酷無比と言われた私が、今、ついさっき会ったあの少年の事を思い出して泣いている。
ぽろぽろ、と音が立ちそうな勢いで私は歩きながら泣いている。
あの口をポカンと開けたまま、私を見る目が胸に突き刺さり、痛く哀しいと想う。
いつかまた、姿を変えて彼に会いに行こう。理由はわからないけれど。
今度は多分使者としてでなく。
ファミレスでユイと食事している間、僕はしばらく上の空だったらしい。
語調を強めた彼女の声でハッと我に返る。
「一体どうしたの?ボーっとして心ここにあらずって感じだけど。
疲れてるの?やっぱりあの仕事お兄ちゃんに向いてないんじゃないかな。
それともあれか?大事な妹の誕生日を心込めて祝うより鼻の下伸ばして
どこぞの女のことでも想い馳せてた方が有意義な時間の消費ってか?」
こうなると妹は納得できる返答をしない限り止まらないだろう。
昨日の奇妙な電話の声と、さっき出会った美人の相関関係について
ずっと考えを巡らせていたが明確な答えが一向に出ない。
話のネタとしては面白い、この一連の出来事を誇張を交えずユイに話して聞かせた。
今でも白昼夢なんて見るんだ、と半ば呆れたような口調のユイだったが
その表情には興味の色がありありと表れている。
妹はこの類の話には目がないことを忘れていた。
「…という事はお兄ちゃんの命は残り59日なんだ?」
ユイの表情から嬉々とした笑顔が消えていた。
どうやら受け取り方を間違っている。いや、それは僕の方なのか。
40 :
殊羅研 ◆1EowoMn0b2 :04/05/28 23:59
どこかしら気不味い雰囲気のままに、ユイの誕生日を祝う食事会は終わりを告げた。
トシミは昼間の喫茶店でのやり取りを反芻しながら、ワンピースの女性が残していった煙草を弄り
ユイは、兄であるトシミからプレゼントされたパール・ペリドット・トルコ石の三種の
パワーストーンが入った袋をカチャカチャと玩び
二人はピッタリと寄り添いながら池袋駅の構内を歩いていた。
傍目からは、仲の良い恋人同士の様に見えていたかも知れない。
終電に小走りで乗り込んだ二人は、不可思議な感覚に囚われた。
電車内がガラガラでアッサリと二人は席に座ることが出来たからだ。
普段は終電と言えども池袋から最寄の駅までは車内がギッシリ満員で
立ちっぱなしで家に着くことが常だったので、運が良かったと小さく喜びを感じつつも
二人共に不安感を感じていた。
「今日は家まで送っていくから」
トシミの言葉にユイはぎこちなく喜び、頷いた。
41 :
殊羅研 ◆1EowoMn0b2 :04/05/29 00:13
実家のある駅に到着し、ユイはトイレに行ってくると行って
駅にある婦人用のトイレに駆け込んだ。
一人になったトシミは、再びワンピースの女性が残した
煙草のフィルタの部分をクルクルと回し、フィルタを外し取り
煙草に見せかけた筒の中に包まれて入っていたメモを取り出して読んでいた。
(貴方が一番大切だと想っている人が命の危険に晒されてる。
助けたいと想うなら、この発信機を持たせなさい)
発信機は今、手元には無い。
ユイにプレゼントしたパワーストーンの中に発信機は入っている。
ふと、僕は発信機を受信する機械は何処にあるんだろう? と
今更に間抜なことに感付いた。そして、駅の構内に誰も居ないことにも感付いた。
発作的に婦人用トイレに駆け込もうと、足をまろばせた時に。
――「ボンッ」
大きな音と衝撃が構内に響き渡った。
それは傍らにいた老人の放屁の音だった。
自分以外、誰もいないと思ったのに…
その老人には見覚えがあった。
「馬野先生?」
それは僕が小学生の時にお世話になったソロバン塾の先生だった。
先生は僕の声に即座に反応する。
「…おお…君か。大きくなったなあ…」
最後にあったのは何年前だろうか。
馬野先生は昔からどこか不思議な雰囲気がただよう人で
当時の学校の担任の先生よりも僕は好きだった。
「君は利発で優秀な生徒じゃったな…うむ一番優秀じゃった」
先生は一人でうなづいていた。現在も先生をなさってるんですか
と聞いてみると「もう年だからな」と笑って答えた。
僕が教わっていた当時でも、とっくに定年を越えていたはずだ。
今、目の前にいる老人は80くらいだろうか。
「それはそうと」
先生は頭髪が全く無い頭を撫でながら僕に言い放った。
「何か良くない匂いがするね…君からただよってくる…」
43 :
( ・x・):
「良くない臭い…ですか?」僕は聞き返した。
「ああ、良くない臭いだ。君は霊魂だとか、そういった類のものを信じるかね?」
眼前の老人は、思いの外しっかりとした言葉で僕に訊ねた。
「私が感じた臭い、それはこの世のものとは思えない臭いだ。…うむ、
わかりやすく言えば死後の世界の臭い。そのようなものじゃろう」
思えば馬野先生は昔からカルト的なものを信仰する性癖があった。
当時の僕は、それを一笑に付していたが、今このような情況に至ると
彼の篤い信仰心を見直す気分になった。
「死後の世界…ですか。僕にはよくわからないのですが」