トゥラッ とぅらっ どうだ!

このエントリーをはてなブックマークに追加
374ラーク
浅い夕焼け、電車の中。
女の子が、窓に写る自分の顔を見ながら、軽く首をかいてる。
ふと、その手に目をやる。小さい瘡蓋が多い。
長袖の裾から手首辺りが見える。
かき傷に瘡蓋、手先がキレイに見えるほど傷ついていた。
彼女は首をかくのを止め、目をかいていた。
トンネル。
彼女の手が止まる。
髪の乱れを細かく気にしはじめた。
前髪を整え、横に流れる髪をひとつまみづつ指で押さえ、形をきめていた。
彼女の薄栗毛色の長い髪は、本当に綺麗だった。
正直、少し見とれていた。
彼女は鏡となる窓に横顔を写そうとした、僕に後頭部を見せるように。
彼女の「その」中心は丸く禿げていた。
かき傷と瘡蓋で、禿げていた。
僕はどうとも思わなかった。
何も思うべきではないと思った。
もうじきトンネルが終わる。彼女は、またかきはじめるだろうか。
もう見てはいけない。そう思ったけど
僕は瘡蓋に惹かれて、目を閉じる事が出来ないでいる。