・−・−・−<復刊>鈴木。点と線。−・−・−・

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1編集人
なんでもありが誇る連続小説。
関西先生、もう落とさせませんからね!

>2 総集編目次
2編集人:01/12/12 05:57
総集編 目次

>3    作者注意コメント
>4    世界へ。
>5-9   覚醒
>10-13 彦原海子
>14-17 能力
>18-27 手紙
>28    番外編 篠原、アジアに惹かれる。(挿絵つき)
>29-38 牛田京子
>39-42 ビジョン
>43-44 海子と篠原
>45-56 接触(>56 挿絵つき)
>57-59 力
>60-62 番外編
>63-65 心
>66-70 リスト
>71-72 暴走

…の辺り。
3編集人:01/12/12 05:58
注)
これは私こと、関西が、鈴木氏に了承を得た上で書きなぐる
SF話です。
4編集人:01/12/12 05:58
1    世界へ。

グリーンに発光する線が、目も追いつかぬ高速で走る。
暗い、おそらく無限に広がる空間を無数のそれが移動している。
その線は、何処から来て、何処に向かっているのか。予想もつかない。
無節操に曲がりくねり、線と線は交じり合ったり、衝突したりしている。
また、他の線と接触するたび、、線はぴりぴりと音を立てた。
線を追う事をやめ、その空間の中心に視線を移すと
そこには生き物なのか、はたまた無機物なのか、一定のリズムで
収縮をくりかえし、形を変える物体が、鎮座していた。
ときたま、その物体に線からの、何か発信され、それを受けて
物体は収縮変形し、線から発信された何かを返信している。
鈴木は、ただ、そのやり取りと、線と物体の描く美しくも
不思議な光景を呆然と眺めていた。
5編集人:01/12/12 05:58
2   覚醒1
鈴木は、そのグリーンに発光する線が何者なのかだけはわかった。
意思だ。
人間の、いや、心を持つ何者かの発信する、意思。
決して人間だと特定する事はできなかった。
なぜなら、その線が発信する「何か」は、意思そのものであり、
日本語、英語などといった言葉という形をとっていなかったからだ。
なぜ、鈴木はそれがわかってしまったか。
それは、突如として送られてきた物体からの信号を、
「受信」してしまった事にはじまる。
6編集人:01/12/12 05:58
呆然と、線と物体、線と線のぶつかりを眺めていた鈴木は
突然の迫り来る気配を感じた。
その気配に驚き、気配のする方向に視線を投げた。
その気配の元は物体であった。
すると、今まで以上に変形し、長方形にまで伸び上がった「物体」
その中心部には、今まで線との交信に使われていた意思とは、
格段に異なる光が収束され、どんどん大きさを増していた。
物体は、明らかに鈴木に向けて、何か大きなモノを放出しようとしていた。
7編集人:01/12/12 05:59
危険だ。逃げなければ。
そう思うが速いか、物体は鈴木に向けて、巨大な光を放出した。
それは、今まで物体と線が交信するのに使っていたのとは
比べ物にならない、もはや別物の光だった。
それは、鈴木を包み込んだ。
8編集人:01/12/12 05:59
様々な情報が鈴木の内部をかけめぐっていた。
同時に、様々の感情も。
死、恋、落胆、望郷、喜び、揺らぎ、迷い、悲しみ、疑心
それこそ、世界中の人間、あるいは、意志を持つ者の、
持ちうる全ての情報や感情が鈴木を包み込み、入り込み、侵食していった。
脳は、その膨大すぎる情報量に悲鳴をあげ、今にも破裂しそうなほどに
頭蓋を内側から圧迫した。
「壊れる!」
鈴木は反射的に頭を押さえようとした。
ところが、手が、ない。どころか、体がなかった。あったのは、自分
という、存在だけだった。肉体と言う枠は、ここでは存在しなかったのだ。
そうか、俺もあの線の一つだったのだ。
そう解ったとき、膨大な情報の全てが自分を突き抜けた。
9編集人:01/12/12 06:00
どの位の間、だったろうか。
鈴木が意識を取り戻すと、自分と言うものが、何か明らかに変わっている
事を感じた。
なんだ?何がおきた?
そうだ、俺は奇妙な世界に入り込んで、不思議な光に包まれて・・。
そう考えながら、全身の感覚が全て戻ってくるのを鈴木は感じていた。
全身の感覚といっても、手や足といった感覚は戻らなかった。
どうやら、依然として、あの世界からは抜け出せていないようだった。
つまり、戻ったのは、自分の意思であり、先ほど物体から放たれた
膨大な情報の全てだった。
全ての感覚が戻り、最後に視覚が戻ったとき、鈴木は愕然とした。
なんと自分自身が、物体として、世界の中心に鎮座していたのだった。
鈴木は、物体に取り込まれてしまったのだ。
10編集人:01/12/12 06:00
風が、赤みを帯び始めた木々の葉を、どっと、揺らす。
空気のにおいが乾いている。その中に僅かだが透き通るような
柑橘のにおいを感じる。
もう、冬が近い。
とうに日の暮れた中、一人研究室に残っていた海子(うみぴこ)は冷め切った
紅茶を一口飲んで、うん、とイスから立ち上がり窓を開け放った。
とたん、狙ったかのような強い風が海子の柔らかな亜麻色の髪を乱した。
海子はうっとおしそうに髪をかきあげ、窓から外をながめていた。
暗くなると、校舎の影が一層、人気の無さを際立たせた。
ふと学生だったころの自分を思い出して、クスリと頬がほころんだ。
「教授」
「!?誰?」
声は、窓の下からきこえた。闇にかくれて誰だかわからない。
「はは、なにやってんすか?」
「篠原君?」
篠原聡。この、海子が教鞭をとる明宝大学の聴講生だ。三年生。
容姿に定評のある海子は、もっぱら、若い男子に人気があった。
しかも、25歳という歳で教授なのだから、そういった知的な魅力も手伝っていた。
篠原は、「いま、そっちいく」と言って、闇にきえた。
海子は、それどころじゃあないんだけどなあ、と、夜の迫る空を見ながら
そう思った。
11編集人:01/12/12 06:01
たん、たん、たん
研究室のすぐ脇の階段から、おそらく篠原であろう、階段を上る足音が聞える。
人気が無くなって、寂しささえ感じさせていた校舎は篠原を歓迎するかのように
その存在を体全体を使って響き渡らせていた。
たん、たん、たん
篠原の近づいてくるのがわかる。どうやら階段を一段抜かしで飛んで来るようだ。
目標に向かって真っ直ぐで、何者も恐れない。
いや、恐れることの必要性をまだ知らないのだろう。
そう、それが若さ。恐れを知ってしまった途端、人は歳を取る。
私は恐れを知ってしまった。恐れる事の必要性を。
一段と篠原の存在を近くに感じる。私は篠原がうらやましい。
その、真っ直ぐな若さが。
ガラリ。研究室の引き戸が、勢い良く開かれた。
「先生!」
いつも満面の笑みで、若さの塊は私をそう呼ぶ。
「教授だって言ってるでしょ」
これが私と篠原。教師と教え子だ。それ以下でも、それ以上でも、ない。
12編集人:01/12/12 06:01
「先生!」
「教授だっていってるでしょ」
私は、もしかしたら立場と言うものを盾に彼を拒否しようとしているのかもしれない。
真っ直ぐに伸びた背筋、しっかりとした、きっと私くらい簡単に持ち上げそうな
腕。がっしりとした肩。ブルージーンズが良く似合う足。
そして、精悍で彫刻のような面立ち。
篠原は、美男子だ。
彼に「先生」と呼ばれたり、敬語を省かれたりする事に、不謹慎だが
嬉しさをも感じる。
そして、何より成績優秀で、私のゼミの中においても常にトップだ。
この大学は決して良いとはいえないが、それでも、彼は将来有望だ。
私が篠原位の歳のときだったら、間違いなく彼にほれている。
きっと、同じライン上に立ってしまえば、きっと今でさえ勝てる気がしない。
私は、そう謂った劣等感を「私は教授、貴方は生徒」として、
区別する事によって、彼との関係を平行にもっていこうとしている
のかもしれない。
しかし、「先生!」この一言を言われるたび、喜びがこみ上げてしまう
のは、どうしてだろう。
「そこに座れば?」
彼に指図する事によって私は確立する。自分を確かめられるのだ。
13編集人:01/12/12 06:02
篠原は職員用のイスにドサリと腰を掛け、荷物をがさつに放り投げた。
「で、なにやってんの?こんな遅くまで」
「あなたこそ一体なにしてたのよ」
篠原は、煙草を二本取り出して、私に、一本どう?というゼスチャーをした。
私は、いらないというゼスチャーを返して、彼との距離を測る。
「俺は、あれだよ、その、忘れ物」
目をキョロキョロと動かしながら、彼はそう謂って、煙草に火をつける。
「怪しいわね」
「そんなことない、忘れ物だよ。先生こそ、何してたの」
「教授」と、再び距離を保とうと、私はあがいた。
しかし、このやり取りも、もはや彼との連帯感を強めているに他ならない。
私はそれをわかってるのだ。でも、やめられない。
私は、彼との関係を望んでいるのかもしれない。
「またぼーっとして、ごまかすなよな」
「それ」
私は、今自分の考えた事を隠すように笑って、机の上の書類を指さしてみせた。
それは、先日私のもとに送られてきた一通の手紙だ。
篠原は、食い入るようにそれをよんでいる。
私は再び窓の外に目を向け、自分の煙草に火をつけた。
14編集人:01/12/12 06:02
4  能力

湧き出すような知識、自分の物ではない感情。
それらは、線から送られてくる意思と同時に、自分の中を通り抜け、
別の線に送信される。
鈴木が物体に取り込まれてからというもの、物体のもつ知識はますます
膨れ上がり、それを自分の情報として認識できるという点で、鈴木自身が
完全に物体の一部である事を認識させた。

しかし、線の意思を受信し、他の線へ送信するという作業を、物体は鈴木の意思
とは関係なく、たんたんと進めてゆく。そう、鈴木はあくまで、物体の一部に過ぎない。
このやり取りを、自身の身体で感じる事のできる鈴木は、だんだんとこの世界の、
仕組みがわかってきた。
それを簡単に説明すると、どうやら線たちはそれぞれが独立した意思であるようであった。
独立した意思をもち、独立した知識をもっていて、それを交換するべく、他の線と
交信をするようだ。まるで、会話するように。
しかし、線は言葉とかといった様な、意思を相手に伝える為の基準をもっておらず、
じゃあ、どうやって交信するのかという所で、物体の存在が必要になった。
線は、交換、交信したい意思や情報を、一度物体に通す事によって、ある種の定まった
信号におきかえる。その信号は、どうやら各線共通して解読できる、現世における
英語のようなスタンスをとっているようだ。
つまり、物体とは、言語の異なる人種同士の通訳のような役割を持っていたのである。
15編集人:01/12/12 06:03
その交信は、絶え間なく行われ、それと同時に、物体内部には
交信された情報の全てが蓄積されてゆく。
鈴木は、全ての線達の感情や、線達の持つ情報の一部を管理する事が出来るのだ。
その情報を自分の中に取り込んでゆく作業だけで、鈴木は満足だった。
しかし、納得できないのは、何故物体は自分をとりこんだのか、という点。
鈴木が見る限り、物体内部には自分以外の自我を持つ存在を確認できなかった。
にも関らず、あのとき、物体は明らかに自分の意思で、鈴木をとりこんだ。
何故。そう疑問を感じた瞬間、彼は現れたのだ。
16編集人:01/12/12 06:03
鈴木の意思に何かが呼びかけている。
それは突然湧き上がるかのように、鈴木の内部へあふれだし、鈴木の意思をも覆いつく
さんとした。
自分になにが起きているのか、なにが入り込んだのかも解らない鈴木は、必死にそれを
拒絶しようとしてあがいた。
しかし、抵抗すると言っても鈴木はまだ、その方法をしらない。
ただただ、自分の意思に覆い被さる何者かから、自分の意思をずらし続ける。
あがき続け、疲れ始めた鈴木に、突然聞えるものがあった。
「怖がるな おそれるな」
言葉だった。その、なにものかは、明らかに日本語を使って鈴木に話し掛けている。
その言葉に対し、未だ信用できない鈴木は、あがく事を止めない。
すると、何者かは、意を決したかのように、今までのそれとは一転、
恐るべき勢いで鈴木の意思を包み込んでゆく。
なされるがまま、とりこまれた鈴木はついに観念し、「彼」の話を聞く決意をした。
「おそれるな」
「あんたは何者だ?なにをしようとしてる?」
「私はお前の前任だ。全てを教えてやる」
「前任?では、貴様が俺をこんなにしたのか?」
「そうだ。お前をこの世界に導いたのも俺だ」
この世界に自分が「連れ込まれた」事を知って、鈴木は怒りを覚えた。
なぜなら、せっかく意味不明なこの世界に納得しかけた矢先に、そんな事実を
話され、しかも、その話の相手が仕組んだ事だとわかったからだ。
しかし、同時に、焦りと恐怖を覚え、意思をぎゅっと固まらせた。
既にここでの楽しみを知ってしまった鈴木は、現世に戻りたいなどと言う気はまったくなく、
もしかしたら、現世に送り戻されるかもという恐れと、
彼がそれだけの事ができる存在だろうという事からの恐怖に伴う焦りだ。
「なにが目的だ」
そんな鈴木には、そう問いかける事が精一杯だ。
17編集人:01/12/12 06:04
彼は言う。
「お前は、適合してしまったのだ」
「管理者としての、規格にあてはまったのだ。お前は、ここの管理者に
なったのだ」
「ここ?ここってなんだ?この世界か、それともこのへんてこな物質か?」
彼は答える。
「いいか。よくきけ。いちいち一問一答は読む人が疲れる。
つうかめんどくせ。こんな口調もだりい。だから、一片にしゃべる」
さらに、彼は一方的に続けた。
「だから、俺がしゃべり終わるまでまて」
鈴木は、このあまりの強引さに圧倒され、言ってしまう。
「わかった」と。
すると、彼は用意していたかのように鈴木を覆っていた自分の一部を分離させて、
鈴木の視覚を包み込み、こう言った。
「これから見せる光景が、お前を納得させるだろう。そして、
これが事実なのだ。」と。
その言葉を聞き終わった鈴木の目の前に、ざあっとある光景が広がっていった。
「これ・・・は?」
鈴木は、息をのんだ。
18編集人:01/12/12 06:05
手紙

篠原は手紙に焦点をあわせたまま、くるりとイスを回転させ、私のほうに
向き直り、そして私の目をじっと見ると、目をしかめて一言。
「マジこれ?」
煙草をフィルター直前まですって、灰皿におしつけながら、その問いに
肩をすくめてみせた。
手紙の簡単な内容はこうだ。
差出人の兄が、突然消え、しかも、その瞬間を見たという。
それだけじゃない。
その兄は、消えたはづなのに、兄のお気に入りの掲示板に書き込みをしているという。
それは偽者でないという。
その証拠に、兄のPCからでしか得られないIP入りのハンドルをなのっているという。
その掲示板に、自分も参加し、話し掛けたが、意味不明な事ばかりで話ができないらしい。
そこで、この私に相談したいという。
ざっと、こんな内容。
19編集人:01/12/12 06:06
しかし、何故、私なのだろう。私はただの英文科の教授だ。
私になにを求めているのだろう。とても理解に苦しむ内容に加え、見知らぬ人間からの
範囲外の相談だ。
しかし、嘘にしては、文章に切実さ、真剣さがあふれている。
「どう思う?篠原君」
私は、篠原に決断してもらいたかった。もう、私にとってはどうでもよかったのだ。
私にはほかにたくさん仕事がある。その時間を意味のわからない話に裂いてやるような
余裕はないのだ。しかし、あまりにその手紙が切実だったこと。
これだけが、私の良心というへこみに、食いついてはなれなかった。
「おもしろいよ。この人にあってみようよ」
篠原は目をキラキラさせながらそう謂った。
どうやら完全に興味だけでの発言のようだ。私は、篠原のこう言ったところも
キライではない。これも、私にはなくなった若さの一つだ。
彼の、恐れをしらない若さ、そして、自分を縛るもののない環境。
これも若さだ。私は、ふふ、と笑って、
「やっぱり、言うと思った」
再び煙草に火をつけ、私は続けた。
「篠原君、いつ暇?」
篠原は、いきなりの誘いに驚いたのか、急に目をそらして、こう言った。
「いつでもいいよ。俺は暇だし」
「もう、俺行くわ、バスなくなちゃうから。電話でもしてくれれば、ね、教授」
「わかった、電話でもするわ」
私の言葉の全てをきかない内に、篠原は研究室をでていった。なんだか大急ぎで。
私はまた、ふふふと笑って。「これも、若さかよね」
そう一人つぶやいて、窓を閉めた。学内のエアコンが暖房にかわっている。
もう、冬なのかもしれない。
20編集人:01/12/12 06:06
木々の葉に僅かに色付きが見られるようになり、同時に生徒たちも
冬の到来を思わせる、温かみのある素材をつかった服装をしはじめた。
ここしばらくの気温の変化の成せる業だろう。
日の陰る校内には、朝から強い風がふいている。夜には星が満開になるだろう、雲の歩みがはやい。

「ナガセー!ナガセー!」
篠原が、最近キャンパス内に住み着いた野良猫に餌付けをしている。
どうやら彼の最近の習慣のようだ。もしかしたら、ナガセがここに住み着いたのも、
彼の仕業かもしれない。
ナガセという名は、その猫の特徴ある毛並みからきていて、篠原いわく、
「こいつ、長瀬智也の髪型そっくりじゃん」らしかった。
ナガセは、女子生徒からも人気があり、当然、ほぼ飼い主である篠原はその女子の一団に
自然と加わる形になり、キャンパスの一角はナガセをあやしている女子と篠原の
歓声で、木々同様、にわかに色づいていた。
私は、大学側の人間のであり、猫は連れ込むなというスタンスをとるべきなのだが、
彼らの笑顔をみてしまうと、そうはとても言えない。
他の女子はともかく、彼は三年生だ。もうすぐ、就職活動にはいる。
それは決して楽なこととはいえない。優秀な彼をもってしても、きっと、困難失敗の
連続だろう。
大丈夫だろうか。単位はきちんと取れているし、成績はもちろん、素行もよい。
良い会社に決まればいいが。
と、ここまで考えて、はっとした。
いつのまにか、一介の生徒であるはずの篠原を、私は個人として心配していた。
ざあっと、風が走る。女子のナルシズム的悲鳴が響く。木々はゆれ、葉もゆらす。
そして、私もゆれている。
21編集人:01/12/12 06:07
ナガセをあやす、篠原、その篠原に話し掛ける女生徒、
それを遠くから眺めている私。
一体、なにがしたいんだろう。
そう思った瞬間、なにかいてもたってもいられなくなり、
背筋をぐいっと伸ばし、一人「さあ、仕事だ!」と、自分を奮い立たせる。
私は机の引き出しにしまってある、クリアファイルをとりだした。
そう、「手紙」だ。
差出人は。「牛田 京子。」(うしゃ。)
住所と、わざわざ電話番号までそえてある。
ふと、窓の外の篠原達がきになって、目をめぐらすが、姿がみえない。
私は何故かあわてて、窓に張り付いた。とたん、研究室の引き戸が、
勢いよく開き、振り返ると、そこには、やはり。
「先生!ナガセー!」
篠原だった。腕に小さな猫、ナガセをかかえている。
あわてた私の口を飛び出たのは、心にも無い、
「ノックくらいしなさい。ここは職員室よ。」なんていう硬い言葉だった。
一瞬、彼は反省を臭わせたが、そこは彼の性分だ。軽く流された。
いや、流してくれたのだ。
「そう、手紙の件だけど、」と私が切り出すと、待ってたかのように彼は、
「いつ?いついくの?いつでもいいよ!なあ、ナガセ!」
「ニャア」答えたのか、それとも相槌なのか、ナガセが一声鳴いた。
「ふふ、今週末、どうかしら。先方には私が連絡するから」
彼は、肩を縮ませ、にっこりと笑い、一際大きな声で言った。
「じゃあ、詳細電話して!まってる」
と、言って彼はまた、大急ぎで部屋をかけだしていった。ナガセを忘れて。
「ニャア」
「食べる?クッキーだよ」
私は、彼が好きだ。確かに今、そう感じた。
22編集人:01/12/12 06:09
街路樹の淋しい。パチンコ屋が多く立ち並び、客引き販促用の旗が、冷たい風に
たなびいている。バスロータリーが設置されていて、しかし、市の意向とうらはら、
朝九時だというのに人はまばらであり、この街の朝出勤人口の少なさを語っていた。
ここ、山海市山岩駅付近とは、労働者階級の多く住む一帯で、治安も悪く、路面に
捨てられた煙草の吸殻の掃除する人間もいないというありさまだ。
そんなところに私が住んでいるのは、ただ単に、家賃が安く、大学に近いという理由
だけだった。
空の曇っているのも手伝い、今朝はさらに閑散としてみえる。
バスロータリーの「山岩駅〜赤葉山」行き停車場前には、誰もいない。
篠原はまだ到着していないようだ。そう、今日は篠原と共に、あの
手紙の主である「牛田京子」と会って話をする約束になっている。
先方に電話をしたところ、とても電話では話せる内容ではないというので、
市内の歓楽街にある喫茶店で落ち合うことになったのだ。
現在午前九時。約束は正午だ。
篠原は一体何で来るつもりなのだろう。電車だろうか。バスだろうか。
そう謂えば、私は篠原の住んでいるところをしらない。
何処に住んでいるのだろう。家族と一緒だろうか、それとも田舎から出てきて
一人で暮らしているのだろうか。そうだ。私は彼のなにもしらないのだ。
そんなこともしらないのだ。彼の全てを知ったとき、私はどう思っているのだろう。
私は、彼を愛しているのだろうか。今だってそうだ、興味があるだけなのではないか。
もう一度、バス亭を見る。黒いジャケットを羽織った背の高い男が立っている。
篠原だ。  
23編集人:01/12/12 06:09
篠原を停留所に見つけた私は、走り出したい気持ちをおさえ、
慎重に、おかしいところの無いように、歩き出した。
あちらこちらを見ながら、まだ私が篠原の存在に気がついていないふりを
しながら、丁度良い距離で、篠原に気づいたふりをした。
すると、篠原は私に気がついた様子で、こちらに向かって歩いてくる。
「先生!お待たせ」
「待ったわよ。何で来たの?まさかこのバスじゃあないでしょう?」
「原付だよ。そこのパチンコ屋にとめておいた」
「そっか、じゃあ、むかいましょう」
といって。私は篠原の先を歩き出した。私は強がりをしているのだろうか、
篠原の歩調を考えず、駅の階段を上る。
「まってよ、速いなあ歩くの」
といって、駆け足で階段を上ってくる篠原。なんだか可愛い。
「早くいきましょう。待ち合わせは12時よ。今は・・」
そこにタイミングよく篠原が答える。
「九時半!遅れてごめんね!」
彼の顔をみると、やはり、満面の笑みだ。彼の笑顔は何故か、
なんでもゆるせてしまいそうに思える。屈託の欠片も無い。
それは、筆者がモヒカンであるなんていう事すら、許せてしまいそうである。
ここから、歓楽街である「八谷」までは、鈍行で約50分かかる。
篠原が遅れたとはいえ、かなり時間があまる計算になる。
ホームに着くと、丁度、八谷方面行きの電車が到着するという、アナウンスが
流れていた。適当な雑談をしながら、私と篠原は、電車の到着をまった。
聞きたい事も、あなり聞けないもどかしさと共に。
24編集人:01/12/12 06:10
流石にここ、八谷は市の認めた歓楽街とあってか、山岩駅とは比べ物ならない
人の流れだ。
早足であるく営業のサラリーマン達が全員が全員、携帯電話でなにやら話している。
街路樹もきちんと整備されており、路面もしっかり掃除されていて、人の多さに
比べても、清潔感を感じる。
駅から出た私たちは、雲の切れ間から差し込む日差しの予想外の歓迎と、
その人の流れに圧倒されて、暫く呆けてしまった。
「いきましょうか」
と、篠原を誘導するものの、まだ、時間はありあまっている。まだ十時半だ。
あと一時間半もある。
私が時計を見ていると、篠原は落ち着かない様子で、時間が余ってるなら、
ちょっと散歩がてら、ここらの探索をしよう。と提案してきた。
確かに、他にすることがないので、私は「そうしましょうか」と、うなずいた。
25編集人:01/12/12 06:10
とはいったものの、篠原もやはり、ここが地元ではないようで何処に向かえば
良いのか迷っている様子だ。
これも若さだ。目標があると、素晴らしい加速をみせて走り出すが、
目標を失ったとたん、その足はただの棒と化す。しかし、若さは勝手に走り出し、
そして道に迷い、だんだんと自分の世界にひきこもろうとする。
それを放っておけばいずれ、堕落する。それは孤独との戦いでもある。
しかし、今、篠原には私がついている。
「あっち、いってみよう」
私は、篠原をひっぱり、人の多く流れ込んでゆく、大きな「八谷センターモール」
とかかれた看板の方へ歩き出した。暫く歩いて、気がついた。
私と篠原は、無意識にも手を繋いで歩いている。こんなところをもし、大学の関係者に
みられては何をいわれるか。解ったものではない。私はさりげなく、時計を見るふり
をして、彼とのつながりを解いた。解かれた篠原の手は、空をさまよい拠り所にこまり、
そのうち、ジーンズのポケットの中へひきこまれた。
妙な空間が私と篠原の間にながれた。いや、私がその空間を作り出してしまったのだ。
26編集人:01/12/12 06:10
ゲートをくぐると、待ってましたと言わんばかりに、様々な店舗の前に
たっている客引きが声を掛ける。
「どう、パタゴニア入荷したよ〜、はいってって?」
「らっしゃい、どーぞーランチ900円ー」
人の流れはいつ誰が決めたのか、向かって左が行き。右が帰りという流れになっている。
私たちもそれに逆らうことなく、ゆっくりと進む。
社会とは、こう謂うものだ。我を通さず、ゆっくり、しかしきちんと歩き、
流れに逆らわなければ、目的地には少なくとも近づく。
私が篠原とこうして歩いている事は、きっと、間違いなのだ。
流れに逆らっている。その証拠に私は誰かの目を気にしてしまっている。
適当な雑談もいつしか話題にこまり、私たちは、雑踏の中を無言で
進んでいた。しかし、寄り添うように、はぐれないように身を寄せながら。
27編集人:01/12/12 06:11
客引きの誘惑はとどまる所をしらない。
かといって、私たちは何処に向かうとも決めておらず、
足取りは僅かにだが、右へ左へ。目的のない人間の歩き方になっている。
客引きの目はそれを見逃さない。
「どうだい、そこのカップルさん、アジア雑貨なんだけど、ゆったり
眺めましょうよ」「ねえ、雰囲気いいよ」「どう?」
その客引きは他と違って、なにやら不思議な雰囲気をかもし出しており、
それに何かを感じたのか、篠原は、
「はいってみようよ、どうせ何処行くでもないんだしさ」
といって、私の手を引っ張りだした。抵抗するいわれもなく、その
若さにしたがって、その妖しげな店構えのなかへ入っていった。
アジア雑貨と言うだけあって、店内は暖色の明かりと、お香のにおいで
充満している。店の奥には店長とおぼしき、インド風の様相の男が
目を中空にさまよわせながら、「いらっしゃい、みてってー」
などと、気の抜けた声で歓迎してくれた。
篠原は、以外にも、その品々に強い興味を持った様子で一品一品、舐めるように
眺めている。私は、なにやら新しい篠原の一面を知って、以外だと驚く
反面、それを知った嬉しさで一杯だった。
28編集人:01/12/12 06:16
番外編  篠原、アジアに惹かれる。

不思議な気分だった。
僕は何故、このような魅力の前を素通りしてきたのだろう。
歴史が凝縮されたような細かい銀細工、丁寧な作り。
そしてこの品々の流す緩やかな時間。
ゆっくりと、先生の存在も忘れてそれらを眺めていた。
先生は、ずっと横についていてくれた。
先生は僕をどう思っているんだろう。ただの生徒か。さっき手を解いたのは その証拠だろうか。
そう思いながら、銀の香炉を眺めていると、店の奥から声が響いた。
「それ、きにいったの?」
アジア風の衣装に身を包んだその青年は、僕の持っている香炉と
僕の顔を交互にながめ、立ち上がって近づいてきた。
「それは、インドのものなんだよ、貴族がつかっていたんだ」
その青年の胸元に目を落とすと、ネームプレートに漢字で「関西」と書いてある。
「関西って、名前?」ときくと、
「ああ、これ。気にしないでくれー・・・。」
「そう」といって、僕は再び香炉を見た。
すると、彼は急に「うあああああああああああああああああああ」
と叫び、ええええ?と、彼を見ると、頭を縦にふりまくっているではないか。
こいつやばい。そう感じたが速いか、先生が僕の手をぐいとひいて、
僕を店の外に引っ張り出した。
「あの人、あぶないわかなり」先生は驚きまじりの笑顔でそういった。
客引きの青年が、店内にすっとんでゆく。すれ違い様に
「ああ、ごめんねえ、たまにちょっとねえ・・」
といっていた。たまになのか。何なんだいったい。
店内から、関西という青年と、客引きをしていた青年の騒いでいるのが きこえる。
「うおあああああああああ」「なにやってんだよ!せっかく客が」
「かれーーーーーーどこいったーーーーー」
「いるいる、俺ここ、カレーだよー」
「ふあああああああああああああああ」
「落ち着けってー」「だああんだななななんああ」「あばばばばばb」
・・・・・・。
行こう、といって、僕と先生はまた、雑踏に踏みだした。
背後で何かが崩れる音、叫び声。
振りむかないようにしようと、先生が言った。


※篠原と教授 画:まりりん☆彡
ttp://www22.big.or.jp/~15ch/oekaki/picture.cgi の3586
29編集人:01/12/12 06:16
牛田京子

朝6時に起きて、お化粧をして、朝ごはんを一人分つくり、野菜ジュースで流し込む。
ワンルームの部屋に鍵をかけて自転車にのる。
アパートから10分の駅に着き、いつもの電車のいつもの車両のいつもの場所に
たち、文庫本をよみながらひと時の現実逃避を三十分。
そして会社。タイムカードを押して上司や同僚にあいさつをする。
自分用に用意されている机に向かい、溜まっているデータの処理と、商品の発注をこなし、
お茶をくみ、或いはコーヒーを沸かし、皆に感謝され、それを定時まで繰り返す。
ときおりの同僚や上司との雑談をまじえながら。世に氾濫するセクハラなどとは無縁
で、残業も多くて一時間。大体の日は定時にあがれる。
就業後は友人であり同僚でもある仲間と買い物をしたり、食事をたのしんだり。
週末は一日をぼうっと過ごしたり、二ヶ月とか三ヶ月とか一定期間現れる、
彼氏という存在と時間をともに過ごしたり。
あまりに普通で適度に充実した日々。私はそんな生活に満足していた。
しかし、その生活は、ある一つの出来事で歪んでしまった。
まるでお気に入りの鏡にひびが入ってしまったように、生活と言う鏡は
私をきちんと映さなくなってしまった。
はたから見れば、それは僅かなものであるだろう。しかし、毎日その鏡を気に入って
使っていた私にとって、それは耐えがたい傷であったのだ。気になって気になって
仕方ないのだ。
30編集人:01/12/12 06:17
兄が消えたという。私が17のとき、彼が家を出てから五年。
母だけが彼との接触を可能としていたが、実際はただ、月ニ、三万の仕送りを
しているだけだった。それが今ごろになって。
母に定期的に連絡をよこしていた兄から、突然連絡がこなくなった。
心配になった母は、兄のアパートに行ってみたのだが、電気はつけっぱなし
電子レンジのなかにはラップに包まったご飯、テーブルには
気の抜けた炭酸飲料と腐った刺身が食べかけのまま置いてあり、
備え付けのイスは、ついさっきまで誰かが座っていたかのように僅かに右に傾き
引き出されており、その方向には兄が使っていたパソコンがおいてあったという。
携帯電話やジッポーライターも、そのまま。
母が言うには、兄は出歩く時は必ずそれらを持ち歩いていたらしい。
灰皿には、形のまま灰と化した煙草があったという。
それから数日間、兄からの連絡は無く、母は警察に届をだした。
まさに、兄は神隠しにでもあったかのように忽然と、水が自然蒸発
するように、消えてしまったのだ。
31編集人:01/12/12 06:17
しかし、私は兄なんてどうでもよいのだ。
私が小さい頃から、兄は無口で、父はおろか妹である私にすら、その口を
開く事はあまりなかったが、唯一母だけは例外。
兄は母だけには笑顔をみせ、泣き顔をみせ、時に怒りを見せもした。
私にとっての兄とは、古い西洋の置物の甲冑だった。
他人への無関心という鎧で自分を守り、その鉄兜から覗く兄の目は、まるで
プラスチックの様だった。
兄は特別な用でもなければ、兄は母以外誰とも口をきかないし、目もあわせず、
私と話しているときもこちらを見ているようで、実は私のはるか後方に
兄の視線はあった。兄は自分の意思のみを主張し、こちらの意見はその
鉄兜に跳ね返された。
果たして兄と呼べる代物なのかと疑問に思う時さえあった程だ。
32編集人:01/12/12 06:18
そんな兄が、消えた。
でもそれが何だというのか。元々私にとって兄なんて言う存在は
居なかったような物なのであり、兄が消えたというそれ自体、いや、
たとえ兄が結婚しようが、殺人を犯そうが、私には
まったく関係の無い話に思えた。彼が消えようと、私の生活は
変わらないのだし。しかし、実際は違っていた。
兄が消えて一ヶ月した頃だったか。
母が発狂した。意味不明で脈絡の無い言葉を口走り、家中の電気製品を
破壊し、止めようとする私や父の腕を恐ろしい程の力でふりほどき、
包丁で自分の手首を切り裂いたのだ。
33編集人:01/12/12 06:18
母はそのまま、精神病院へ入れられたが、それはやむおえない
処置だったと思う。
このまま家に放っておけば、手首の傷は治ってもいずれ再び発症する。
仕方の無いことだったのだ。
私はそのとき、、きっと兄が行方不明になってしまった事が原因だろう
と考えていた。それほど母にとって兄とは大きな存在だったのだと
解釈していた。だが、違ったのだ。
それは、その一ヵ月後。
今度は父がおかしくなった。
突然、誰かと口論し始めるのだが、肝心の相手が居ない。
私は、母のことで気力を使い果たし、ただその様子を呆然と
ながめていた。そのときだった。
「京子!電話線を切れ!こいつはそこから入ってくる!」
突然、私に向かって発せられる父の声。
「なに?誰がそこにいるのよ!」今にも泣き出しそうだった。
「あいつだ!お母さんも、あいつにころされそうになった!」
私は何が起きているのか解らない上、パニック状態におちいっていた。
父は叫び続ける。
「っく!きさま!何処に消えた!?どうしてお母さんまで!」
「黙れ!貴様に俺とお母さんの何がわかる!」
そう、父は誰かに叫びながら、泣いているしかない私を一瞥し
電話線をひきちぎった。
暫くの沈黙が流れた。どの位だったろうか。一時間もそうしていた様
でもあるし、もしかしたらほんの僅かの間だったかもしれない。
父はその沈黙を破るように、こう言った。
「孝だ。お兄ちゃんだよ!鈴木孝!」
孝。鈴木孝。
確かに父は、そう謂った。
34編集人:01/12/12 06:19
兄は別姓を名乗っていた。鈴木という、母方の性だ。
兄は五年前に家をでたのだが、その原因と言うのが父との衝突。
絶対に感情を表に出さない(母は別として)兄が、父に感情を吐き出したのは
私が知っている限り、後にも先にもそのときだけである。
その日、父と母は言い争っていた。家を新築するために、父と母が
こつこつ貯めた貯金を、父が無断で使っていたからだ。二百万円も。
私はその時期には、そう謂う事情には感知しないというスタンスを確立していた
ため、たいして気にはしなかった。冷たいようだが、仕方ないのだ。
そういう事情に絡もうとすればいくらだってできた。父が金を使い込んだのは
外に出来た女のためだったし、それを責める母だって、男が居た。
それを知っている私は、デートクラブでアルバイトをしていた。
そう、お互いさまだったのだ。だからといって、誰かが誰かを責めようものなら、
一家離散はまぬがれない。そのくらい、微妙なバランスで、私達はなりたっていたのだ。
知らないのは、兄ただ一人。
兄にとっての母とは、至上の存在であり、その至上である母と対等な口を利き、
対等以上のスタンスを取る父が、兄は大嫌いだったと思う。
事実、その日、兄は父を殴った。拳でではない、野球用のバットでだ。
それは父が兄の幼い頃、誕生日にプレゼントしたものらしいが、それを兄は一度と
して、使った事がなかったという。それを父は、ただ、大切にしているのだなと、
気にもとめなかったが、それは違った。兄は、父から貰ったものなど、使いたくも
なかったのだ。
父は息子にプレゼントしたバットで、その息子に殴られたのだ。
兄は父からもらったプレゼントであるバットの使い道として、
父を殴る事を選んだ。
こんな家庭。もしかしたら、私が思うよりもずっと早くに、この家庭は崩壊していた
のかもしれない。兄のバットは、それを如実に表していた。
35編集人:01/12/12 06:19
その事件の後、父は母にだまって兄を勘当した。
それを知った母は、父に怒るでも、兄の弁論をするでもなく、
兄を実家の鈴木という戸籍にいれたのだ。

その事件で、私達は完全に壊れた。細かいひびがたくさん入った家庭
なんて何処にでもある。それは、速い内に話し合いや、金銭で
補修すればいくらでも直しがきく。
しかし、私達はその傷を放置しすぎた。どころか、お互いにその傷に
依存しあい、あいての弱みをにぎり、それを互い互いの口封じとして
いたのだ。修復不可能だった。
兄のバットはその醜い関係に、純粋に振り下ろされただけ。

現在、父と母は別居している。私は一人暮らし。兄も一人で暮らしていた。
兄は、家庭をどう見ていたのだろう。
かたくなに口を閉じ、母にしか感情をあらわさなかった兄。
ひょっとしたら、兄だけが、兄と母の関係が、私達を家庭として
結びつけていたのかもしれない。
ふと、そう思った。
36編集人:01/12/12 06:20
しかし、今となってはもはや遅いのであり、覆水盆に帰らずなのだ。
一度粉々に壊れた人の絆は、いくら私達が手を尽くしたってなおりっこない。
もし、それを治すことが出来るものがあるとすれば、それは時という物に
よって引き起こされる、風化現象だけだろう。
今は剥き出しの神経のような傷でも、いつしかその上に「これから」という
皮膚ができ、それは幾重にも重なりあい、次第に傷はすっかり治ってしまう。
そういうものなのだ。
しかし、別段その傷を治そうとも思わない私には、それは既に傷ではないのかも
しれない。まるで神経の通っていないところに大怪我を負ったようだ。
自分自身は何も感じないが、他人はそれをほうっておかない。
人間にとって他人の傷の匂いほど、ひきつけられる物はない。
それは獲物を見つけた肉食獣のごとく、静かに、静かに忍び寄り、隙さえあらば
襲い来る。ある者はあざけり笑い、また、ある者は同情に流した自分の涙に
酔い、また、それをネタに私を何処かに引きずり落とそうとする者もいるだろう。
一本の川をそれぞれが別の使い方をするように、私の傷という川を、彼らは
決して見逃さない。まさに、砂漠に突如として流れ出した水なのだから。
私は、そんな社会に生きている。笑顔の裏に獣の目が光る世界に。
37編集人:01/12/12 06:20
しかし、それを知っているからといって、私にはどうすることもでき
ない。出来る事といえば、せいぜい、その傷から漂う血の匂いを
彼らに悟られないようにするだけだ。
が、何処でどう伝わったのか、その血の匂いは私達の意志に
関らず、近所はもちろん、父の会社や取引先、そして私のオフィス
までにも広まった。
私の場合、社内に怪メールが流されたのだ。
しかも、その内容は、兄の失踪だけではなく、私達の家族関係や、
私の過去の素行など、それは私しか知らないはず、なんて謂う事
まで、克明に記されていた。
38編集人:01/12/12 06:20
そして、彼らは群がった。渇いた喉を潤すために。
噂が噂を呼び、尾ひれに背びれがついて、それはもはや、噂ではなく、
社内という一つの集落の常識となってしまった。
そうして起こるのが、イジメだ。
大人のイジメは狡猾で周到、しかし、稚拙であり、私が会社をやめる
には、十分すぎる内容となった。
それから私は、私達とまったく関係の無い、噂の飛んでくる恐れの無い
ところへ引っ越し、そこで職をさがし、就職した。
大丈夫、ここなら誰も私をしらないし、以前の交友関係の全て切ったし、
もう心配ない。と、思っていた矢先だった。
なんと、再び怪メールが社内にまわったのだ。
どういう事か。信じられなかった。一体誰がやっているのか、全く
見当がつかない。昔の男なんて、私の過去はしらないし、聞かれも
しなかったし、そんな事をされる様な別れ方はしていない。
友人関係だって、そうだ。第一、引っ越すなんて誰にも告げず、
夜逃げ同然にでてきたのだから、誰も私の居場所どころか、
就職先なんて解るはずがないのだ。
おかしい。と、思ったとき、父のあの言葉が記憶の淵から甦った。
「奴だ。孝だ。」
父の声は、私の耳の周りをぐるぐるぐるぐると、
いつまでも羽虫の飛ぶようない音をたてて、飛び回っていた。
39編集人:01/12/12 06:21
ビジョン

目の前に広げられたビジョン、いや、視覚に直接訴えかけるイメージと言った
方が、解り良いだろうか。
鈴木の意識には今、物体の前任者である、「彼」から送られてくるイメージが
視覚というスクリーンに広がろうとしている。
真っ黒いスクリーンは、徐々に透明さを増していき、そこに、まるで水彩絵の具を
水で溶いたときのような、淡い色の塊が脈絡なく広がり、周りの空間と徐々に同化
してゆく。
それは、赤、青、黄色といった原色で、溶け合いながらそれは、
ある情景に変わろうとしていた。
「・・・これは?」鈴木は息をのんだ。
「しっかり見ているんだ」彼はこういって、黙り込んだ。
スクリーンに広がった原色たちは、徐々に同化してゆき、ある情景を作り出した。
40編集人:01/12/12 06:22
人が山ほど倒れている。いや、倒れているのではない。どうやら、浮かんでいる
らしく、互い互いばらばらの方向を向き、その空間には重力なんて存在しない
かのように、彼らの存在する位置等もばらばらだ。
よく見ると、彼らは直立不動のまま、移動している。
ゆっくりと、その空間内を漂っているのだ。
「これは何だ?」鈴木は彼に問い掛けた。
「よく見ろ。これは人間だ。一人一人が人間なのだよ。但し、意思のみの塊だ。
自我という物だ。ただ、解りやすいように、人の形にしてみた。ほら、
ゆっくりだが、移動しているだろう。しかし、彼らは互い互いに、ある一定の
距離を保っている。わかるか?」
「わかる。」
「じゃあ、このその一定の距離を保つ理由は何だと思う?」
「さあ、わからない。」
「だろうな。では、二人、犠牲になってもらおう。」
といって、彼はその空間に浮かんでいる人々の中から、ランダムに二つの人間を
選び、彼らの保っている距離を縮めはじめた。
「何をする気だ?」
「黙ってみてろつうの」
二人の距離はだんだんと縮まってゆき、ついには接触した。
そのときだった。接触した二人の人間は、瞬時に消えてしまった。
「なんだ?どうした?消えてしまったぞ」
「そうだ。消えたのだ。いいか?お前も身に覚えがあるんじゃあないか?
人間は、決して分かり合えないのだ。そりゃあ、いくつかの記憶や思想を
共有したり、物事に共感したりする事はできるが、自我と自我が交わり、
一つになることは、ある種の人間を除いては出来ない。今のを見ただろう。
自我と自我のぶつかり合いを。」
「よく解らないが、つまり、距離を保つとは、自分を守る、そういう事か?」
彼は答える。
「そうだ。そして、その自我と自我の同化が出来る、それがお前なのだ。」
41編集人:01/12/12 06:22
彼は続けた。
「つまり、お前は全ての人間の意志を取り込むことができるのだ。」
「そうなのか?俺は今まで、ろくに人との接触をしたことがないが。」
鈴木の意思に、彼は僅かの恥じらいを見つけ、こう言った。
「それを恥じることは無いのだ。お前が今まで、どう暮らしてきたか
なんて、私は知らない。ただ、お前が選ばれてしまったのだよ。」
「??お前が俺を選んだのだろう?」
「ふむ。そうだ、ともいえるが、言い切れんな。全ての人が、お前を
選んだ。とでも謂っておこうか。」
「全ての人?何故、俺が?」
「お前は今まで見てきたろう?この世界を、その仕組みを。この世界は
つまり、先ほどお前に見せた、あの空間なのだよ。」
「つまり、線とは、人の自我で?」
「そうだ。そして、お前はその人々の意思を全て知る事ができるのだ。
それは今までこの物体の中にいて、わかったろう?ああ、そうか。
何故、お前が選ばれたのかが知りたいのだったな。いいだろう。
さっき私が言った事で解ったかもしれないが、この世界は全世界人の
意識の縮図だ。物質という枠、言語という枠を取り去った世界だ。
しかし、この世界こそが、人間界の真髄であり、全てなのだよ。
しかし、言語を取り去った世界で、人間が互いの意思の疎通を図る
場合、必ず生じるのが、誤解であり、矛盾だ。
そう謂ったものを取り去るべく、この物体は存在している。
それはわかるな?」
「ああ、通訳のようなものだとは、思っていた。」
「うむ。そのとおりだ。そして、お前は、その人間たちの自我と
同化できる、千年、いや、万年に一人の存在だ。お前は、世界に
選ばれたのだよ。お前しか居なかったのだ。」
「俺はそんなのやりたくない。あんたがやればいいじゃあないか。
今までやってきたのだろう?」
42編集人:01/12/12 06:23
俺は、もしかしたら現世に帰れないのかもしれないと言う焦りに
駆られていた。
その、鈴木の思考を読み取った彼は、ククッと笑い、こう言った。
「焦ってもダメだよ。もうここからはでられない。私は5000年待ったのだ。
お前のような存在が現れるのを。私は、5000年間ここで人の意思を
つかさどってきた。延々とな。」
「お前!俺をここから出せ!今すぐにだ!5000年だって?
冗談じゃあないぞ。ここで延々だって?ふざけるな。
俺はそんな事したくもない!」鈴木は、持てる限りの力であがいた。
ハハハと笑いながら彼は言う。
「無駄だよ。第一、ここから出たとしても、どうやって現世に戻るんだ?
それはあと数千年でわかるはずだ。まあ、焦るな。お前は、ここに居れば
いいんだよ。簡単だろう?ここに居るだけでいいんだ。」
鈴木は、なおもあがきながら謂った。
「出せ!早く出せ!」
「お前、ここから出れたとしてどうするんだ?現世に遣り残したことが?
無いだろう?違うか?ないだろうよ。お前にはもう、ここで時を過ごす
他に道は残ってないのだ。」
そう謂って、彼の意思が薄くなった。彼が消えようとしているのだ。
「待て!貴様!一体誰なんだ!?」
消えかかる彼を止めようとする一心で、鈴木は、そう叫んだ。
「私か。私はいままで、人が神と呼ぶ存在に近かったろうな。
お前は今日から神だよ。何かわからない事が出来たら私を呼べ。
では、またな。鈴木孝君。ああ、私を呼ぶときは、こう呼ぶがいい。
「侭」と。暇だったら応じてやろう。」
そう、謂い残し、「侭」と名乗った彼は消えた。
錯乱する鈴木を残して。
43編集人:01/12/12 06:23
海子と篠原

ホットコーヒーを注文したのに、何故かアイスコーヒーをウェイトレスが
持ってきて、しかし、たかがコーヒーと紅茶で注文してから二十五分も
かかっているので、もう怒る気も無くなり、かといってそれらを指摘して
ウェイトレスに再び二十五分かけてホットコーヒーを持ってきてもらうのも
なんだか面倒なので、不服ながらもアイスコーヒーをすすりながら、
「二度とこない」なんて不貞腐れてる、という篠原に、私は同情の笑みを返して、
チラと時計を見た。もうすぐ約束の時間であるが、牛田京子はまだ現れない。
八谷センター通りの人ごみは、それはそれは酷いものであった。
戦後の闇市のように、ずらり続く商店は全く一貫性がなく、例えば靴屋の隣に
何故か魚屋、その隣は洋品屋、というような有様で、魚の匂い、靴の皮の匂い、
新品の洋服独特の匂い、妖しげなお香の匂いなどが混ざり合って、異様な
雰囲気をかもし出しているという上に、その人ごみといったらもう、週末
という事もあるのか、歩くのがやっとで、一度立ち止まればその後ろがつっかえ、
一種の交通渋滞を引き起こすという有様だった。
44編集人:01/12/12 06:23
そんな中、妙な客引きに引かれ、入った店の店員に度肝を抜かれ、
逃げ出し、その後もしばらく、あてもなく雑多な商店街を歩いて
いたのだが、流石に、これでは暇つぶしであるはずの軽い散歩どころ
ではなく、牛田京子と会う前に疲れ果ててしまうと考えた私と篠原は、
多少時間は早いが、牛田京子との待ち合わせ場所である喫茶店へ
逃げ込んだのである。
45編集人:01/12/12 06:24
接触

カラン、カラン

とても滑らかな金属音が店内に響いた。ドアに設置された呼び鈴が、新しい客の訪れを
知らせて、私と篠原は一斉にそちらに目をやった。
そこには、黒い、やたらとテラテラ光る皮のコートを羽織った、若くて綺麗な顔
なのに、なんだか生気を感じさせない女性がたっている。
彼女は店内をぐるっと見渡し、私達のテーブルで目を止め、ペコリとお辞儀をした。
事前に打ち合わせしたとおり、窓際の一番奥、この席で。と、約束しておいたので
間違いないのだろう。彼女が牛田京子だ。
それにしても、どうしていきなり初対面である私が解ったのだろうか。
彼女は、スタスタと私達のテーブルに来て、再度お辞儀をし、こう言った。
「彦原教授と、篠原さんですね、牛田京子です。こんなところまで、すみません」
私達も、どうも、とお辞儀をして、篠原が席を移動し、私の隣へ来た。
私は少し奥へ、身体をうつし、篠原を迎え入れる。なんだか不思議な気分だ。
篠原は、少し遠慮がちに、私との距離をとって座り、牛田京子に、
「どうぞ」といって、不意に私の顔をちらと見た。
突然、篠原と目があってしまって、しかも何故かその目を私はそらしてしまった。
私は「で、聞きたいことは山とあるんですが、」と、話を切り出し、篠原との
きまづい空気を振り払ったのだが、どうも居心地が悪いのは気のせいか。
牛田は、「ええ、私もたくさん話さなければいけません。でも、あなた方を
呼んで置いて恐縮なのですが、私自身、何から話せばよいのか判断しかねるのです。
ですから、もし、何か聞きたいことがあれば、謂ってみてください。」
と、いうので、不用意な子だな、と思いながらも、確かに聞きたいことは山である
ので、お言葉に甘え、聞いてみる事にした。
「では、何故、その、私に白羽の矢が立ったのですか?」
という問いに対して、迷路の中、やっと出口を見つけた冒険者のように、
牛田は、今まで伏せていた顔をさっと上げ、話し始めた。
46編集人:01/12/12 06:24
「実は、彦原教授、貴方は兄を知っているはずなんです。」
私は、彼女の口から出たその言葉を巧く飲み込めず、喉につまらせた。
私と牛田の顔を交互に見る篠原に、手で、辞めなさいと言うゼスチャーをして、
「続けてください」といった。
牛田は、僅かに篠原の様子を窺い、再び話し始めた。コクリと喉を鳴らせて。
「ああ、また何から話してよいにか解らなくなってしまいましたが、
すみません、聞いてください。兄は、教授と同じ大学の出なのです。
そうです。W大学の英文科なのです。」
「しかし、それだけでは、私の質問の答えにはなりませんが?貴方のお兄さんの
名前は、牛田なんと言うのですか?」
私がそう謂うと、彼女は小さく何度かうなづき、こう続けたのだ。
「彼・・いえ、兄は、途中から母方の性である、鈴木を名乗っていました。
それは、家庭の事情でそうなったのですが、もう、お解かりですか?」
鈴木。その名前を聞いたとき、背筋がぞっとした。篠原達にも見てわかるのだろう、
きっと、今、私の顔は真っ青だ。心配そうに私を窺う篠原。
「大丈夫ですか?いえ、ここからが本題なのです。気を確かに持ってください。」
鈴木。そう、鈴木・・タカシといったか。
私に、その単純でありふれた名前を刻み付けたのは、彼という、異物だった。
鈴木タカシ。忘れもしない、名前。
47編集人:01/12/12 06:26
大丈夫ですか?ここからが本題なのです。
そう謂った彼女は、私の精神が安定するのを待つように、今さっき
ウェイトレスが置いていった紅茶をすすっている。
確かに、似ている。彼に。
私の心臓は、勢いを静めるどころか、尚、リズムを早めていた。
無意識に胸に手を当てていた私を、篠原が支える。
「先生?大丈夫?先生?」
見ると、篠原まで顔が青ざめている。
目の下に隈ができていた。あまり寝ていないのだろうか。
こんな時なのに、こんなに心臓が昂ぶっているのに、何故私は
そんな事を冷静に観察しているのだろう。落ち着け、落ち着け、
大丈夫だ。彼がここに居るわけじゃあない、落ち着け。と、
自分に言い聞かせる。篠原は、どうしたらいいのか解らないのか、
とにかく私を支えている。それはそうだ。私自身、どうしたらいいのか
わからない。このまま彼女の話をきくか?もう帰るか?このまま話を
きいてしまったら、再び彼と出会ってしまうかもしれない。
彼の妹である彼女は、冷めた様子で、窓の外を眺めている。
私の反応など、どうでもいいようだ。
こんな時、どうしてこうも冷静に人を観察できるんだろう。
これが私にとっての現実逃避の方法なのか。
篠原は、まだ私を支えてくれている。
もしもあの時、今の篠原のような人間がそばにいれば。
あの時。彼。心の中の、深い深いところ、私自身でさえ、手の
届かない様に、封印した記憶が、今、目の前に広がっている。
まるで、亡霊のような、彼の妹と共に。  
48編集人:01/12/12 06:26
いつだったろう。彼の存在に気がついたのは。
大学の講義中、ふと視線を感じ、その視線をたどると、決まって彼がいた。
そして、これも決まっていて、彼はすぐに視線をそらすのだ。
講義中だけではない。学食で友達とランチをしている時、帰りのバス、
そして、駅。時を重ねるにつれ、彼と私の共有する空間は、次第に多くなって
いった。最初は大して気にもしなかった。「ああ、またあの人だ。」と、
思う程度だったのだが、ある日、友人から聞いた彼の噂が私の背筋をこわばらせた
のだ。
それは、ぎらりと晴れ渡った、夏の日。友人たちと帰宅途中に買い物をしている
最中だったか。その私の友人の一人が、思い出したかのように私に言ったのだ。
「海子さあ、あいつの事知ってるの?」
あいつ?誰の事をいっているんだろう?と、言うほど他人に無関心だった私は、
「あいつって?誰?サトミの彼氏?」
「違うよお!あいつ、鈴木タカシ!ほらあ、よく、海子のこと見てる気味悪い
奴いるじゃん。」
「講義中とか?彼、鈴木って言うんだ。へえ?」
「へえ?じゃないよー!危ないって有名なんだよ?鈴木って!」
と、彼女は私に出来る限り近づけてそう謂ったのだ。
「なんで有名なのよ、でも結構カワイイ顔してんじゃない、彼。」
はー、何にも知らないのね、というように、彼女はかぶりを振って、こう続けた
「あー。顔はねー、でもね、彼、猟奇なのよ、猟奇!知らないの?
ほら、前によく、猫が変死体で見つかったじゃん。校内で。それってね、
彼がやってたらしいのよね。」
「ええー!でも、どうして彼だってわかったの?」
「それがねえ、その猫って、当時彼がつきまとってた女の子の飼い猫だったん
だってさあ。あ、その子って謂うのも同じ大学だよ。もうやめちゃったけど。」
「もしかして、彼が原因?」
「だろうねえ、それしか考えれないって。その子の友達だった人が言ってるの
聞いた事あるもの。」
49編集人:01/12/12 06:27
「うわー。それは猟奇ね。で、その事は学校側は知ってるの?」
「さあねえ、そこまでは知らないけど、彼がまだ残ってるっていう事は・・」
「あー、なるほどねえ。」
「あー、なるほどねえ。じゃあないわよーもー。だからあ、海子、その猟奇に
気に入られちゃったのかもしれないって事!気をつけなさいよー!」
「うん。ちょっと怖くなってきたな。ありがとう、気をつけますよー!」
そのときは、そう、おちゃらけていた。しかし、まさかこの後、あんな事になって
しまうなんて、予想もしていなかったのだ。
その後、彼は、急に大胆になったのだ。
今までは、単に遠くから見ているだけだったのだが、私を教室で確認するなり、
私の一つ前の席にすわってみたり、もっと嫌だったのは、真後ろに座られたとき
だ。もう、授業どころではない。彼は私の後ろで、なにやらぶつぶつ一人ごと
を謂っているのだった。それは、どうやら私の事を言っているようでもあって、
友人の話を聞いたせいか、私は酷くおびえさせられたものだ。
50編集人:01/12/12 06:27
そればかりではない。そればかりではないのだ。
彼の行動はどんどんエスカレートしていった。
ある日、学食でランチがてら、彼のことを友人に相談していた時の
事だ。
そこに突然、彼が現れ、あろうことか私達のいるテーブルに座りだ
したのだ。そこに、気の強い私の友人が、ついに怒った。
ドン!と、彼を突き飛ばし、
「あんたねえ、いい加減にしなよ!?海子に付きまとうの!
嫌がってるのわかんない?それでも三年生?よく上がれたわねえ?
今だって、あんたの事で話してたのよ!」
私は、高揚し荒ぶる彼女を止めながらも、彼にこう言った。
「鈴木君だっけ?彼女の言うとおり、私、嫌だから。やめて欲しい。」
すると、彼は、すっくと立ち上がり、そのまま立ち去ってしまったのだ。
そのとき、私や友人は、これだけ謂えば、流石の彼でも遠慮するんじゃ
ないかな?と、思っていた。
しかし、事件は起こってしまう。
51編集人:01/12/12 06:28
それから二週間ほどした頃だ。
彼を突き飛ばし、彼の私に対する振る舞いを諭した、私の友人が突然、
全く連絡が取れなくなった。
学校はおろか、携帯電話、彼女の自宅の電話にさえも出ない状況が丸三日続き、
もしかしたら、一人暮らしの彼女だ。急な病気か何かで、
家で倒れてしまっているのではないかという憶測の元、彼女宅を訪問したのだが、
ポストには新聞が山となっており、いくらインターホンを鳴らしても反応が無く、
管理人に事情を話し、鍵をあけてもらったが、部屋には彼女はいなかった。
私達は、一日に数回は連絡をとりあい、暇さえあれば互いの家に遊びに行ったり
していたので、それは、確実に彼女の身に異変が起きている事を表していた。
そこで私達は、もう一日、様子をみて、彼女に連絡がつかないようだったら、
警察に連絡しようということにして、その日は解散した。
その日の夜、私の部屋で残った友人と彼女の行方について、話していたときだった。
ワンコール。私の携帯電話に、彼女の自宅からの着信があったのだ。
しかし、何度掛けなおしても、ただただ、呼び出し音が虚しく響くだけ。
ともかく、いま、彼女は自宅にいて、私に何かを伝えようとしているということ
だけは確かだった。私達は急遽、彼女の部屋へ向かったのだ。
52編集人:01/12/12 06:28
なにやら嫌な予感を感じながらも、彼女の部屋のインターホンを押す。
・・・。
返事がない。
ドアのノブを回してみると、カチャリと軽い音をたてた。鍵はかかっていない。
中の様子を覗くように、ゆっくりとドアをあける。
部屋は真っ暗で、昼間来たときとはうって違えた様相だ。
私達は、顔を見合わせた。これでは中に入って見なければ、細部の
様子はわからない。
「管理人さん、鍵、しめてたよね?」
「うん、しめてたよ。」
「誰も居ないよね?」
「うん、いなそう。でも、じゃあさっきの電話は?」
「・・・・。」「・・・・・。」
二人して言葉をなくし、私は背筋を走る冷や汗を感じていた。
玄関についている、照明スイッチを、パチリと押す。
ぱあっと部屋中を暖色の明かりが照らし出した。

いた。
部屋の隅っこに毛布にくるまって、彼女、いや、彼女らしい人物が
座っていた。
「淳子?・・なの?」
「・・・・」
私の問いかけに対し、彼女らしきその人物は全く反応を示さない。
私がどうしたら良いか解らずにいると、突然、友人はその人物に
かけより、バっと被っている毛布を引っ剥がした。

悲惨だった。服はぼろぼろ、髪も乱れ、所々に土や、血のような
赤黒い塊が、付着していた。
その後、彼女は一切の私達の問いかけにも、ろくに答えられず、
ただただ、虚空の一点を見つめるばかりであった。
53編集人:01/12/12 06:29
彼女は、そのまま救急車で病院に担ぎ込まれ、結果、
精神病院へ入院した。
何がなんだかわからなかった。
ぼろぼろの服、それについた血の様な跡、醜く歪んだ彼女の顔。
何が彼女に起こったのか。そして、彼女がそんな状況で、私に
電話を掛けられたわけがない。では、一体誰が。
数日後、私達は彼女を見舞いにいったのだが、彼女はあの時と
なんら変わらず、問いかけに答える事も、私達と目をあわせることも
なく、ただ、目を見開いていた。
この事件には、一応は警察も介入したのだが、肝心の彼女の証言が
得られず、未だに事件は解決していない。但し、法的には、だ。
54編集人:01/12/12 06:29
彼女が保護された翌日、私達は警察に呼ばれた。
事情徴収というやつだ。「彼女になにか最近変わったことは?」「どういう関係?」
とか、テレビの三流サスペンスでよく耳にする、お決まりの台詞。
それはなにか、この事件を解決しようと言う、いわゆる「やる気」の感じられない
ものだった。
そのときに私達は、彼、鈴木タカシの事も警官に話したのだが、これはまともに
とりあってもらえなかったのか、或いは、捜査したのだが証拠がなかったのか、
彼は、事件後も学校に来ていた。しかし、事件前とは打って変わって、私には
全くの無関心を装っていた。
しかし、こんな事をするのは、彼以外考えられない。その後も何度か警察に、
彼を調べるように訴えたのだが、「調査はしている。君たちは心配しなくていい。
その彼についても、捜査対象にはなっている。これ以上は話す事は出来ない」
の、一点張りで、結局、彼が捕まった、犯人が捕まったという情報は今になっても
聞かない。
事件から一ヶ月ほどたった頃だったろうか、彼は相変わらず学校にはきていて、
これも事件後とかわらず、私には何の関心も示さなかった。
が、ある日、自宅近くの踏み切りで、踏み切りの空くのをまっている時だった。
なにやら、見覚えのある嫌な空気が私を、ぶわりと包んだ。
視線だ。あの目が再び私を観ているのを感じた。どうやら彼は正面、踏み切りの
向こう側にいるようだ。そこから私をみている。
ゆっくりと伏せていた頭をあげ、視線の方向を向くと、そこには、やはり、彼がいた。
カンカンカンカン・・。踏み切りの警報がやけにうるさい。
また始まってしまったのか?と思ったのだが、なにやら彼の様子がおかしい。
彼はいつもなら、私が視線をあわせると、すぐに目をそらすのだが、
一向に目を逸らさない。どころか、なんと彼は、その能面の様な顔を歪ませ、
にやりと笑ったのだ。そして、彼は声を出さず、唇を動かし始めた。
なんだ?私の視線は彼の口元に釘付けとなった。
オ・・・?・・レ・・ガ・・?・・ヤ?・・ヤッタ??・・・?
「俺がやった?」
ごーーー!がががー!
轟音を響かせ、目の前を列車が通過してゆく。
「俺がやった。」確かに彼の唇は、そう動いた。
殺してやる!一気に昂ぶった血液に、私は身を任せた。殺してやる。絶対許すものか。
列車が通り過ぎるのと同時に、私は飛び出した。
が、そこには、もう彼はいなかった。
それ以来、私は彼を見る事はなかったのだ。
55編集人:01/12/12 06:30
走っていた。私は誰かから逃げているのだ。
そうだそうだ!逃げなくては。彼に捕まってしまう。
彼?彼って誰・・?そうだ!鈴木!彼が私を追っているのだ。
真っ黒いビルが立ち並ぶ、人も車も全く居ない大通りを、
私は走る。誰か、誰か助けて。声がでない。
ひーひーひー。喉が声を欲しがるように鳴っている。
後ろを振り向く。誰も居ない。しかし、あの感覚、視線だけは
常に感じるのだ。何処だ?何処から私を見ている?
走る走る走る。真っ黒な世界の中、一つだけ真っ赤に輝くビルに
逃げ込む。その中にはとてつもなく大きな、真っ赤な階段だけ
があって、まるで、この階段だけで、このビルは出来ているようだ。
昇る、駆け上る。しかし、視線は付いて回るのだ。
何処までも何処までも、追いかけてくる。振り返り、下を見る。
!!なにやら真っ赤な液体が、凄い速さで階段を飲み込んでいっている。
逃げないと!出口を探さないと!
焦りに駆られて上を見る。延々と真っ赤だ。
出口は?出口は?出口は?迫る真っ赤な液体。
私は、息を大きく吸い込み、感情を一気に吐き出した。
「篠原君!助けて!」
56編集人:01/12/12 06:30
「篠原君!!」
・・・・・・。夢?もう、何処にも赤い階段はみあたらない。
何故か私には毛布が掛けられている。どうやら、ここは病院のようだ。
薄青いカーテンで仕切られた空間に、私は寝かされていた。
腕に点滴の針が刺さり、誰がやってくれたのか、ピンク色の
パジャマのような服に着替えさせられている。未だ速く鼓動する心臓を抑え、
ふう、と安堵をため息として吐き出し、
「夢だったんだ」と、口に出して、すこし笑ってみた。
それにしても、私はどうしてこんなところで寝かされているのだろうか。
ああ、そうか。牛田京子の話をきいて、そのまま失神でもしたのかな、私は。
篠原はどうしたのだろう。牛田は帰ったのだろうか。悪い事をしたかもしれない。
西日がカーテンを透かして、ベッドに落ちてくる。
私は急に外の空気を一杯に吸いたくなって、ざっとカーテンを開けた。
窓の外には大きなイチョウの木が、黄色く色づき、そこに真っ赤に熱した鋼鉄のような
太陽の光が、その色をさらに美しく透かし出していた。
一日が終わってしまうのだ。その、末期の姿はなんと美しいものか。
窓の取っ手に手をかけると、アルミサッシのひんやりとした感覚で、
初めて眠りからさめている事を実感できた。
でも、あれは夢じゃあなかったんだ。
牛田の兄が、あの鈴木だったなんて。未だに信じられないし、この話に真正面から
挑む勇気もわかない。
こんな事を篠原に言ったら、彼はなんというだろう。
らしくない、とでも謂って、元気付けてくれるのだろうか。
それとも、無理しない方がいい、と言って、こんな事は早く忘れろと言うだろうか。
篠原君。どうして今、隣にいてくれないのだ。今、貴方が隣にいたのなら・・。
きっと私はこう謂うだろう。
「大丈夫!牛田さんは帰ってしまったの?こうしてはいられないわ。」と。
そう強がって、私は貴方をリードしようとするでしょうね。
本当はこんなに私は弱いのに。
今、貴方は何処で何をして居るのだろう。
さっきまで真っ赤に燃えていた一日は、もう、半分かくれてしまっている。
窓を開けると、冷たい風が、あの日の様に私の髪を乱した。

※牛田さんの図  画:まりりん☆彡
http://w2.oekakies.com/p/marilynn/p.cgi
57編集人:01/12/12 06:31
   力

まるで、頭の中を冷たい水が大量に流れていくようだ。
線が送ってくる意思は、なにやら勝手に物体の方で処理してくれるようだし、
俺は、時が許すだけこうして知識の大河に身を静めている事ができる。
その、時なんてのも、考えるだけ馬鹿らしい。
なにせ時間は数千年分はあるのだ。次の候補者が現れるまで、俺はこうして、
ここで、線の意思を物体に通す媒体として、居続けなければ成らないのだから。
鈴木は、この世界に監禁された事に対して、もはや観念したようだった。
というより、案外にも居心地の良いこの世界と、その暮らし方に、
満足していた。現実社会の対人関係のうっとおしさや、金銭のしがらみ、
肉体がある事でどうしても発生する、だるい時間の流れ等といった
現実ならではと言う現象がここには無かったからだ。
勉強なぞしなくても、勝手に知識は手に入り、金なぞ稼がなくても、
何一つ苦労しない。肉体が無いという事は、腹も減らなければ、住む所
にも困らないわけだ。大体、鈴木は現世に未練のこれっぽっちも無かった。
気になる人、ほうって置けない仕事、そんなものは何も無かった。
彼も、一応は生活のために仕事や、住む所はもっていたが、それは
あくまで、仕方なくだった。喰うために仕事をし、雨風を凌ぐために
部屋を借りていただけで、これから何がしたいだとかという希望や、夢なんて
物は、全く持っていなかったのだ。
そんな鈴木にとって、この世界とは、それはそれは素晴らしい物だ。
ただただ、日が昇り、沈むでもなく、一日なんて謂う区切りもなく、
ひたすらに脳を知識の川に浸している。
それは鈴木の知的好奇心を満たすだけでなく、ある種の快感を伴い、
そのことだけで鈴木は満足だったのだ。
しかし、鈴木はそれのほかに、もう一つ楽しみを見つけてしまう。
それが悪夢の始まりだったのかもしれない。
58編集人:01/12/12 06:31
あるとき、我が日常、つまり、自分と物体がこなす、線と線の通訳作業を、
もっと詳しく観てみたくなった鈴木は、一度自分の意識と知識の倉庫を
つなぐ回線を閉じ、物体と自分の意思を完全に直結してみた。
それは、まるで体全体が巨大なゼリーにでもなったような気分がして、
しかも、自分の上も下も解らないと言う不思議な感覚であった。
線は、相変わらずそこらを高速で移動しながら、ひたすらに意思を送ってくる。
それを変換し、他の、送り主所望の線に、送り出す。それが我が仕事な
わけなのだが、それをぼんやりと眺めていた鈴木は、なんだか、自分に
もう一本、別の回路があるのに気がついた。
それはまるで、腕が三本になったような感じで、鈴木の意識のなかに漂っていた。
なんだこれは??鈴木は思った。今までは感じなかった存在だ。
自分にこんな回路が存在したのか。知らなかった。これも、もしかしたら物体に
とりこまれた時に出来たものだろうか。
なんだか、腕、というよりは、触覚や、触手といったほうがいいかもしれない。
それを物体に繋いでみると、なんと言うことか。線から送り込まれた意思を、
思うが侭の相手に送り出せるではないか。
鈴木は、あわてて触手を取り外した。
危なかった。これではこの世界が壊れてしまうかもしれない。
59編集人:01/12/12 06:32
鈴木にとって、その世界が壊れると言う事は、
また、あのうっとおしい現実に戻ってしまうという事を
表していた。
それだけではない、この世界とは、以前「彼」いや、
「侭」と名乗った自分の前任者の話では、この世界とは、
現実と直接重なっており、現実世界の、物質という枠を排除
した姿なのであった。
危ない危ない。俺は世界を壊してしまうところだった。
世界を、壊す?
久々に鈴木の中に、感情があふれだした。
「ハハハ」声が出たかわからないが、鈴木はここにきて、久々に
笑った。そして、こう思った。
いいじゃないか。壊したって。
あんな世界なのだから。いや、壊すのではない。混乱させてやろう。
どうせ、この世界はなくなり無しないだろうなあ。
無くなったところで、別に俺にとっては何の問題もない。
ようし、やってやる。
鈴木は、再び触覚を、物体に繋いだ。

最初の内は、線の意志を、送り主の意思とは関係の無い相手に贈り
楽しむといった、下らない事をして、楽しんでいた鈴木だったが、
ふとした瞬間に、触覚が、なんと線自体に繋がってしまったのである。
すると、どういうわけか、線と会話する事ができたのだ。
鈴木は、びっくりして、触手を手元に引き戻した。
これは一体どうなっている?線とも交信できるのか?
これは、面白い。
つまり、これは、現実をいきる者の意思の塊である、線に
対して話し掛ける事ができると言うことだ。
鈴木は再び、ハハハ、と笑った。
こんな機能があるとは。あいつは隠してやがったな?
面白い。この物体の機能をもってすれば、例えば俺の知っている
人間にアクセスする事だって恐らく簡単だ。
そう、思うが早いか、鈴木は物体に蓄積されている情報を検索
しはじめた。
・・・・。・・・・・。・・・。あった!!
お母さんだ。
鈴木は、その懐かしい、温かみすら伴う情報に向けて
するりと触覚を伸ばした。
60編集人:01/12/12 06:32
番外編

鈴木が触手の存在に気がつき、それを不意に線の意思に繋いで
しまった丁度その頃。

関西某所、繁華街の路地裏の、狭い階段を下りる人があった。
カツン カツン カツン
鼻につくかび臭さを、煙草の煙でごまかしながら、階段を
降りてゆく。行き止まりには重々しい、黒檀かなにかで
出来ていると思われる重厚なドア。
細部に悪魔のような彫刻が施され、その真ん中、ちょうど
彼の目線あたりには、山羊の頭を象ったレリーフが飾られており
その鼻先に、これまた重厚な、金属の輪が備え付けてある。
まるで、悪魔崇拝の黒ミサを思わせるそのドアを、彼は何の
ためらいもなく、ガチャリと開けた。
ギイイイイィ。重苦しいドアのきしむ音が、コンクリートの階段に
反響し、そのひっそりとした佇まいを、より強調した。
61編集人:01/12/12 06:32
その中は目が慣れていないと何も見えないのでは
ないかというくらいに、異様な薄暗さであり、
調度品も、黒やこげ茶色をベースとする、中世骨董品が主で、
その入り口にふさわしい室内となっていた。
点々とローソクの光がゆれ、真っ黒いソファには、数人の
男女がウィスキーのグラスを傾け、なにやらひそひそと
小声で囁きあい、くすくすと笑っている。
室内を見渡した彼は、その、着ていた真っ黒なコートを
入り口のコート掛けにかけると、カウンターの席に腰掛け、
バーテンに、ウォッカを注文し、ちらりと後ろのソファの
連中を盗み見た。
その中の一人が、なにやらテーブルの上で、指先を器用に
動かしている。その様子を、ローソクの光がゆらりと照らし、
その動きの怪しさを一層際立たせる。
取り巻きたちの見守る中、その男は、ローソクに照らし出された
その顔に、にやにやと笑みをうかべながら、
なにやら煙草の葉ような物を、テーブルに置かれた一枚の小さな
薄い紙切れのような物に、ゆっくり丁寧に筒状になるように
巻いてゆく。そして、その末端を、つーっとその舌で舐め、
そこを端から丁寧に、確認するかのように押してゆく。
そして、彼がそれを口にくわえると、取り巻きの、部下であろうか、
若い男がライターを取り出し、さっと火をつけた。
62編集人:01/12/12 06:33
彼は、その煙草のようなものを、すーっと深く吸い込み、ぐっと息をとめ、
それを隣に座っている、派手な女に渡した。
すると、やはりその女も、彼と同様にその煙草のような物を、深く吸い込み、
息をとめつつ、隣の者にわたす。
「は〜〜〜〜」と、最初に吸った男が、貯めていた煙を吐き出した。
そして、ぶるっと身体を震わせ、「きたきたよ〜」と、つぶやき、
取り巻きたちの笑いをさそっている。
間違いない。ガンジャだ。彼らは麻薬をやっている。
ガンジャとは、麻の葉を乾かした物で、麻薬の処方の一つとして、古くから
伝わる手法である。現在、各国はもちろん、ここ日本でも、それら麻薬は、
厳しく取り締まられており、それを所有するだけで犯罪である。

「どうぞ」と、カウンターに、ウォッカが置かれた。
男はびくっと振り返り、「ああ、ありがとう」といって、
その出されたウォッカを一息にのみほし、再びウォッカを注文し、
バーテンを見つめ、にやりと笑ってみせ、こう言った。
「すまねーちょっと荒れるわ」
はあ?という顔をするバーテンを尻目に、彼はかばんを開けた。
中には、黄金に輝くリボルバー式の、やけに銃身の長い、西部劇を思わせる
ような趣の拳銃をとりだした。
それを観たバーテンは、顔色を変えた。事態を察し、
客になにか警告をしようと、その口を大きくあけたそのときだった。
ズバン!静まり返った店内に、その黄金の銃が火を噴いた。。
そして彼は、「まーひっそりってんじゃーよくねー」
と言って、にやりわらって見せる。
と、同時に、先ほど麻薬をキメていた客の一人が、その彼に向かって発砲、
それはづどんと、彼の左胸に風穴をあけた。
彼は、胸の穴と、相手の顔を見比べ、「ほんとーにうつなってんだー」
と謂い、ぱたんとその場に倒れこんだ。
すると、何処からか黒服の男性が数人あらわれ、彼の遺体を店内奥へと
引きずってゆく。
地の跡も、綺麗にふき取られ、後には麻薬でラリパッパの男女が宴を楽しむ
奇声をあげるばかり。
バーテンは、何もなかったかのように、床に落ちたグラスを、ひょいと
拾い上げ、白い綺麗なナプキンでキュっキュと、それを磨き、思った。
「よく、あるんだよなあ。こーゆーの。もう辞めようかなあここ。」と。

こんなこと、地下世界では、日常茶飯事だ。
「きゃははは!」ラリパッパの奇声が、今日も木霊している。
63編集人:01/12/12 06:33
  心

篠原は、地元に向かう電車の中、少し震えていた。
生まれて初めて人が気絶するのを見たからであり、おまけに、その生まれて
初めての現象を、介抱したという事からくる興奮と緊張が、まだ冷めやらない
のだ。
自分の心臓に、振るえる手を当ててみる。ドンドンドン・・・。
ハードロックのドラムのように速く打たれる心臓、そして、それ以上の速さで
震える手。
そして、その手のひらに残る海子の肌の温もり。
篠原は、その手を暫く見つめたあと、震えを押さえ、その温もりを噛み締める
為、ぎゅっと手を握り締めた。
先生、大丈夫だろうか。
喫茶店で、牛田京子の兄あという鈴木と言う名を聞いた途端、
海子の顔色がみるみる真っ青に変わった。篠原の呼びかけは、店内に大きく
響き、閑散とした店内であったが、その僅かの客も、平穏をぶち壊した
海子たちの座るテーブルに目が釘付けになったほどだ。
しかし、その篠原の声も、海子は聞えているのかどうかと言った具合で、
じょじょに目の焦点は定まらなくなり、程なくして篠原の腕に倒れこんだのだ。
そのご、やけに落ち着き払った牛田が、救急車を呼び、店内はもちろん、
店の外には、歓楽街の人々が一斉に集まってしまい、ちょっとした騒ぎに
なってしまった。
その後、篠原は海子に付き添いながらも、しっかりと牛田の携帯電話番号を
聞き、後日連絡すると言って、そのまま救急車は二人を乗せて、
市内の総合病院へと向かったのだ。
診断の結果、単なるめまいだろうとの事だったが、一応、大事をとって
海子の目がさめるまでは、ベッドに寝かせておいてくれると、医者は言った。
そして、篠原は、海子のバッグのなかに、牛田の電話番号と、先に帰るという
メモだけ入れて、帰路に着いたのだ。
本当は、ずっと付き添って居たかった。先生の目がさめるまで、付き添って
居たかった。でも、自分は生徒だ。家族でも友達でも、ましてや恋人でもない。
一介の生徒なのだ。という、篠原の、この一線を超えてはいけないと言う、
なんというか、防衛本能なのか、或いはただの意地っ張りか。
いや、これが若さか。自分のテリトリー内での事なら、物凄い決断力と
行動力で、全てを片つけられるのに、一歩他人がからんでくると、
その一線をこえると、まるで奈落のそこまで続くような谷に、落ちていって
しまうんではないか。という危機感が働いてしまう。
若さは、未知に敏感であり、また、鈍感でもある。
篠原は、手のひらを一層強く、握り締め、帰ったら、先生に電話しよう、
と、思った。
64編集人:01/12/12 06:34
すーっと強くすって、暫く肺に貯める。
こうすると、ガンジャの効きが良くなるって、前の彼氏がいってたんだ。
全然日の当たらないこの部屋にいると、こういう悪い事をやっていても、
なんだか許されてしまう様な気がする。
麻薬常用者特有の、あのとろりと寝てしまいそうな瞼を、ゆっくりと閉じる。
そうして、彼の事を思い出してみる。
さらりとした髪に、しっかりとした型の良い背中、ひきしまって、それでいて
まだ幼さの残る目元。
篠原君って言ったっけ。あの先生にはもったいないや。
彼は、あの先生が好きなんだろうなあ。先生の方は、どうなんだろう。
まんざらじゃあ無い様な気もするけど、所詮は先公よね。
彼と先生の間には、社会っていうお化けが挟まってる。
あの先生は、それが怖くって手が出せないって感じかしら。
瞼の裏側に、形を持たない虹色が、ちらついている。
そのさらに向こう側を、虹の光を越えるように見据えると、彼の顔が浮かんで
来るんだ。そして、彼の抱える気絶した、だらしない女。
そこで私は、口元を歪ませて、笑うんだ。クククってね。
すー・・と吸って、肺に貯める。
いがらむ喉に、ドクターペッパーを流し込んで、わざと眉をしかめてみた。
ガンジャには、ドクターペッパーが一番合うんだよ。
そう謂っていたのも、前の彼氏だ。
あの人は、私が唯一、愛したかもしれない男だった。
身体も、心も弱くって、料理も出来ないし、靴下だって、私がきちんと
そろえてあげないと、片方づつ違う靴下ででかけちゃう。
私が居ないとダメな人だったんだ。いや、違う。ダメなのは私のほうだ。
あの人がいなくなって、ダメになっていったのは私だ。
畜生。あいつ。今さら兄貴面しやがって。
あの人を連れて行ってしまったのは、絶対兄だ。畜生。
あの日、曇っていて、洗濯物が、なかなか乾かなくって、いらいらしていて、
そんな日だった。あの人、急に、私の兄に会ったっていったんだっけ。
そりゃあ、私びっくりしたわよ。なにせ、行方不明なんだし、大体、なんで
その兄が、私の彼の事を知っているのか。色んな感情がごちゃ混ぜになって、
ひっくりかえりそうだった。でも、あの人、それについては、いくら私が
聞いたって、ちっともまともに答えてくれなくて、それから、一ヶ月くらい
してからだ。あの人は、消えてしまった。
朝、私が彼を起こして、朝食を作って、もう一度ベッドに起こしに行ったら、
居なかった。布団もそのまま。靴だって、たった一足の彼の靴だって、
そのまんま。あの人は、消えてしまったんだ。
65編集人:01/12/12 06:34
そりゃあ、方々探したわ。
公園だって、河川敷も自転車で探したし、コンビニにだって、
隣町の交番にまで探しに行って、結局、みつかんなかったんだけど。
畜生。絶対あいつなんだ。
あいつが、兄が、あの人を連れて行ったんだ。
お母さんだって、お父さんだって、あいつが殺した。
じゃあ、今度は私を殺せばいいじゃないと思ってた。
でも、あの人と出会って、私はすっかり兄のことなんか
忘れていたんだ。
あいつ、それを逆恨みしやがったんだ。
あの人が消えた翌々日、メールが届いていた。
差出人は不明だった。最初は、ウィルスかと思ったんだけど、
タイトルに、「グリーングリーン」って書いてあったんだ。
それで、もしかしたらって思ったんだ。
グリーングリーンって、兄がよく一人で歌ってた歌で、
それだけは、私よく覚えてる。あいつらしくない歌だった。
メールを開けてみると、やっぱり、兄からだった。
「おはよう。京子。元気かな?たかしだよ。
一昨日は、ごめんね。彼は、こっちに連れてきちゃった。
あいつは、お前にとって、良くないと思ってね。
それだけ。じゃあ。また。」
こうだ。
なんて理不尽な。私は勢い余って、パソコンのモニターを
ぶち割って、それでも足りずに、壁にイスをたたきつけたっけ。
あいつ、お母さんを殺したときも、お父さんを殺したときも、
そうだ。絶対あいつだ。私に嫌がらせをしていたのも、あいつ
以外、考えられない。そんな事を出来るのは、どっか訳わかんない
ところに消えたあいつだけだ。
「ちくしょう」今度は声に出してみる。
喉がガンジャでガラガラだ。あ、ヤバイ。
いつもより多く吸いすぎてしまった。視界がやけに暗い。
・・・。このまま、ねちゃうかな。夢で、篠原君とHしようか。
明日、あの先生に電話してみよう。
より掛かっていた壁を、背中は勝手に滑り降りてゆく。
ばたん。もう、このまま、起きなかったらいいのになあ。
そう、思って、彼女はゆっくり目をとじた。
66編集人:01/12/12 06:35

  リスト

例えるなら、それはトンネルだろうか。
壁には、古今東西の様々な画像がノイズ交じりで次々と、
入れ替わり映し出されている。
そして、音。
クラシックや、ジャズ、ロックといった音楽はもちろん、車の走る音、
犬の鳴き声、トランペットの響き、ガラスが割れる音など、
それこそ、この世の全ての音が、入れ替わり立ち代り鳴り響き、
そのトンネル内は、光と音との洪水のようである。
そんな中を、彼女は、ゆっくり歩いてゆく。
そこが、一体何処なのか。はっきりした事は、彼女にもわからない。
唯一つ、解っているのは、そこは、人類、いや、地球の記憶の倉庫だろう
という事だ。
それは、そこに溢れる画像や音が、少なくとも自分の記憶ではない。
つまり、自分が生きてきた中では、知り得ない情報ばかりであるという
事からの、彼女の判断によるものだが、
映し出される画像のなかには、現在、見ることの不可能な動物や、植物、
過去の時代の風景などもあり、さらに、音なのだが、その中には、
聞いた事も無い言語等も含まれるからである。
その、地球の記憶のなかを、彼女は、ゆっくりと歩く。
ただ、歩く。どうして自分が、こんなことが出来るのかなんてわからない。
ただ、目を瞑り、意識をその闇に集中させると、意識が「ここ」へ、
跳んでしまうのだ。
最初は、頭がいかれてしまったのではないかと思っていた。
しかし、誰に相談できようか。
第一、「ここ」に来れるからと言って、それ以上のことは、彼女には出来ない。
ただ、流れる地球の記憶を眺め、聞く。それだけだ。
この事を世界に公表すれば、歴史がひっくり返る。なんていう場面も、何度か
彼女はみたが、それを公表したところで、それを裏付ける何の証拠もないのだ。
あっという間に批判され、否定され、いや、むしろ、誰も聞いてくれないかも
しれない。所詮は、彼女のの意識だけの問題なのだから。
だから、彼女は、そのトンネルを、ただただ歩くだけ。
暇な時、目を瞑るだけで見れるエンターテイメントを楽しむだけ。
67編集人:01/12/12 06:35
しかし、最近何かがおかしい。
いつもはランダムにトンネル内に映し出される画像が、
延々と、ある一人の人物だけであったり、
同時に聞える音も、誰かと誰かの話声だったりするのだ。
そして、よく映し出されるあの、男性。
ある時なんかは、その無表情で、陰鬱な雰囲気の男性の画像で
トンネルが埋め尽くされ、何かを誰かがぶつぶつと独り言を
謂うような音が、延々聞こえていたりするのだ。
その彼らの画像や話、彼の一人ごとなどから、解ったことがある。
彼は、恐らく、私同様、「ここ」にアクセスする術をもち、
しかも、その知識を容易に引き出す事が出来、さらには、
「ここ」に記憶されている全ての人物の精神にまで、アクセス
可能らしいと謂うことと、
彼の名は、鈴木タカシといい、彼は、今までに自分の、母親と父親
を殺害、妹の恋人を、物質的に消し去っているらしいのだ。
しかも、彼自身、すでにこの世には、存在していないらしいのだ。
そして、彼は、自分が「ここ」を覗いているということを、まだ
知らない。まだ気づいていないだけか、それとも、あちらからは、
自分以外のアクセスを判別できないのか、それはわからないが、
ともかく、なにか、恐ろしいことが起きているのは確かだった。
68編集人:01/12/12 06:36
そんなある日、私はいつものように、目を瞑って意識を集中し、
記憶を眺めに行ったのだが、その日もトンネルは鈴木タカシで
埋め尽くされていた。
私は彼の新たな情報がわかるかもしれないと思って、
その声に、聞き耳をたて、その画像を見つめていたそのときだった。
偶然なのか、或いは、彼に気づかれたのか、なんと彼と目があって
しまったのだ。
驚いた私は、すぐさま意識を戻したのだが、その日以来、
トンネルには恐ろしくていけないでいる。
69編集人:01/12/12 06:36
彼、鈴木タカシの事を考えながら、私は夕食を作って、夫の帰り
を待っていた。時計を見ると、九時二十八分。
そろそろ夫が帰宅する時間だ。早く料理を仕上げなくてはと、
腕をまくった、そのとき、
「ただいまーかえったよー」
しまった。まだ夕食の準備ができていない。
「おかえり!ごめん、まだご飯できてないのよ」
夫は、少し残念そうな顔を作って、腹へった、と言って、
しかし、何か面白い事でもあったのか、にやにやと笑った。
「なに、ニヤニヤしてんのよー?」
「いやー今日さー、仕事場いや、お店でさー」
「なになに?」
夫が、こんな顔のときは、絶対にまた、お店で何かがあったときだ。
夫は、彼の友人とともに、アジア雑貨のお店を経営しているのだ。
その、友達というのが、曲者なのである。
70編集人:01/12/12 06:37
「いやーねー、今日また、関西が店でおかしくなって、
お客さん、にげちゃってさー」
その様子を想像しただけで、私は笑いがとまらない。
関西とは、おかしな名前だが、彼が以前、我が家へ来た時も
いきなり叫びだし、そりゃあもう大変だったのだ。
夫は、ニヤニヤと笑いながら、彼の話を続けている。
私も、それにあわせ、うん、うんと、うなづく。
しかし、こんな夫にさえ、私は、あのことを話した事が無い。
信頼していないわけじゃあない。ただ、あまりに突飛な事なので
彼の仕事にちょっとでも支障がでるのが怖いのだ。
本当に、私はそれだけが怖い。
「今日の新聞は?」いけない。新聞をとるのを忘れていた。
「今とってくるから、お鍋みててね」
私は、ポストを見るのが好きだ。といっても、別に郵便物が好き
なわけじゃない。ポストに書かれている、名前を見るのが好き
なのだ。
ポストには、真新しい真っ白いシールに黒いマジックで
しっかりと、こう書かれている。

佳麗 喜美男(かれいきみお)と、その下に、
佳麗 リスト
そう。私達は新婚なのだ。
そして、私は日系アメリカ人で、夫とは国際結婚だ。私が、
海外雑貨の輸入代理店で働いていたときに、彼と知り合ったのだ。
がちゃん。銀色に光るポストをあけ、新聞をとる。
世界はまた、あれ出しているらしい。
私は、もう一度ポストの表札を確認して、玄関へと向かった。
71編集人:01/12/12 06:37
暴走

くくく。空気の無い空間に乾いた、しかしどこか湿った卑屈な笑い声が
響く。
触手を手に入れてからと言うもの、鈴木は、現世の恨みつらみを晴らすかの
如く、それはもう手当たり次第に意思を狂わせた。
最初にアクセスしたのは、母親だった。
しかし、そのときは、母の精神を害そうとなんて思ってもいなかった。
ただ、懐かしい乳液のような匂いと、あの36,5度の体温が懐かしくて、
そっと手を触れるだけのつもりだったのだ。
しかし、母は鈴木のアクセスに驚愕し、取り乱し、母を取り巻く全てを
狂わせて、結句、自殺してしまった。
鈴木も、それを止める事も出来ず、ただ、あたふたするばかりで、
母の自殺を止めようと意思を送るのだが、その意思ですら、彼女を狂わす
ばかり。そして、その最後の瞬間、聞いてしまったのだ。
母の、最期の言葉であり、おそらく積年の本音だったのだろう、
彼女は、こう、心の中で叫んだ。
「もう、私を困らせないで。つらかったのよ、づっと」
何もいえなかった。鈴木は、何も言うことができない鈴木は、
ただ、その様を見守るっていたのだ。
そして、笑った。腹を抱えるほどに、涙を流すほどに笑っていた。
優しかった母。誰とも話さない自分に、唯一優しかった母。
鈴木も、彼女だけには、心を開いて何でも話した。
学校でいじめられて、泣いて帰った日、母は、何にもいわないで、
林檎をむいてくれて。
父と母が酷い喧嘩をした日、台所の隅で誰にもわからないように
泣いていた母は、自分ををぎゅっと抱きしめてくれた。
「あなたは、お父さんのようになってはダメ。人の心を知りなさいね」
母は、そう謂って、一層強く鈴木を抱かしめた。
しかし、その言葉にはそぐえなかったのだ。
人の心なんてわからない。
母の、唯一信頼していた母の本音さえ、知り得なかったのだから。
鈴木は、ひとしきり笑って、涙を押さえるように意識をぐっとこわばらせ、
やってやる。と思っていた。
何もかもぶち壊しだ。この汚くてその底も見えない糞だめなんて、
この俺がこわしてやる。そう、心に誓ったのだ。
72編集人:01/12/12 06:38
その後、鈴木は、まづ父を狂わせ、妹である京子に
嫌がらせをして、さらにその彼氏の肉体を消し去り、
その精神を、こちら側に幽閉したのだ。
幽閉と言っても、それはむしろ、データの圧縮凍結の
ようなもので、彼自身に自覚はない。
彼の精神は、圧縮され、物体内部のデータバンクに収納
されているのだ。
鈴木は、時折彼の変わり果てた姿や、京子の苦しむ姿を
見ては、こみ上げる破壊衝動を押さえていたのだ。
お前らを潰すのは最後だ。これから、俺がぼろぼろに
破壊した後の混沌の地獄のような世界で、お前らは
いけてゆくんだ。
そう、自分に言い聞かせ、彼らを破壊する衝動を
鈴木はおさえている。
さて、次は、何をしようか。
73編集人:01/12/12 06:40

以下、連載継続!
関西先生の小説が読めるのはなんでも板だけ!

なお、編集するに当たり読者の皆様の声を
割愛いたしましたことをお詫び申し上げます。
さらに、>10において章タイトル「彦原海子」が抜けてしまったことを
心よりお詫び申し上げます。。。
74編集人:01/12/12 06:41
正直、疲れた。。。
好きでやりましたが二度とはやりたくないので、
関西先生、読者の皆様、
私も目を光らせて参りますが
どうぞよろしくお願い致します。
75関西☆ ◆w66.NORA :01/12/12 15:23
・・・・・・・・・・・・・。
う・・・おおおおおおおおおおお・・。
誰だか知らんが編集人・・・・・・・・・。
小一時間かけてこんな・・・・。
ありがとう。まじにありがとう。。。
76関西☆ ◆w66.NORA :01/12/12 23:10
あんへえ。
あげだ!
77おくしん@けーたい:01/12/12 23:34
俺もage
78関西☆ ◆w66.NORA :01/12/12 23:41
てゆうか、誰なんだろう。
感謝だよほんとう。素で。
79おくしん@けーたい:01/12/13 00:01
纏めてスレ立てようと思ったら、既に立っていた

誰だかは謎…
80関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 00:39

今の世界には鼓膜の休まる暇がない。
渋滞した幹線道路では、しきりにクラクションが鳴り響いて、鬱憤
を吐き出し、それは排気ガスとともに、空に立ち上り、ゆっくりと
どろどろとした音をはらんだ渦となり、空を灰色にくすませる。
街頭には、何かの新興宗教のPRなのか、白い装束まがいの服を
きた意味深で神妙な面持ちの数人が、ビラを配り、声をはりあげ
しきりに世界の平和と、日本の破滅を警告しているし、
横断歩道では、何処からとも無く、また、これから何処へ行くのか
も解らない人々が集まっては、信号の色の切り替わりに、その
行動を支配され、暗黙の内に動く。ときおり、その集団には、
老人が混ざっていて、その動きの遅さで信号が赤になっても、
まだその半分もわたっていない。そして、そのいたいけな老人に
まで、早く行け殺すぞと言わんばかりのクラクション。
私達の鼓膜は常に何かに反応して、ふるふると振動している。
交差点とは、誰かと誰かが、すれ違う場所。
目的と目的、感情と感情が交差するところ。
一度その何かが狂えば、人の生死さえも関ってくる場所。
交差点とは、案外特別な場所なのかもしれない。

その交差点の角のコンビニの前で、私は煙草をふかしながら、
「誰か」を待っているのだ。もう、待ち合わせ時間をかなり過ぎているが
仕方ない。待っているしかないのだから。
その、誰かから、私の携帯にメールがきたのは二日前だ。
その内容はこうだった。
「彦原海子様。西成町交差点の角のコンビニ前に十一時。
大学時代のあの事件の真相を知りえる者より。」
これに対して、何度か返信をしたが、返答は無かった。
その代わりに、同じ内容のものが、届いていたのだ。
誰だかなんてもう関係ないのだ。今度こそ、あいつ、鈴木タカシを
有罪にできるかもしれない。あの事件の真相を、その「誰か」が
警察に証言さえしてくれれば、あいつに罪を償わせる事ができる。
81関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 01:02
そう、待つしかないのだ。
ここは日陰だからか、それとも風が強いせいか、
いやその両方だろう。私の唇は乾燥した冬の風に
負けてしまっている。
篠原には、この話はしていない。もう、彼には心配を
かけたくないのだ。喫茶店で気を失ってから、彼は前より
特に私に気を使ってくれているようだ。
バックの中には、いつ聞きだしたのか、牛田京子の連絡先
が書かれた紙切れがあった。が、篠原は、もう関らないように
しよう、と電話をしてきた。確かに、もう関らないほうがいいの
かもしれない。あの男は、それほど異常だったのだから。
あの事件が、私の思うように、あいつの仕業だったのなら、
なおの事だ。篠原の言うとおり、これ以上関らないほうがいい。
が、どうしても知りたい。あの三日間、あの子に何があったのか。
誰の仕業なのか。あいつの仕業なのか。その証拠を、真実を
私はつかんでみたい。それが、私の、あの子に対して出来る
最大の恩返しだ。あの子が、あの時彼を押し倒さなければ、
今ごろ私はどうなっていたかわからないのだ。
82関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 01:03
それにしても、まだ「誰か」はやってこない。
もう、十一時四十分だ。そもそも、一体どんな格好なのか。
男か女か。それすらも解らないのだ。
あまりの寒さに身を震わせ、五本目の煙草に火をつけようと
したそのときだった。不意に話し掛けられ、思わず咥えた煙草を
おとしてしまった。
その人は、私の口から落ちた煙草を拾い上げ、再び顔をあげ、
こう言った。
「メール、貴方ですか?」
僅かに異国の血が混ざっているのだろうか。
優雅で整った顔立ちのその女性は、確かに、そう謂った。
しかし、知っている人間ではない。見たこともない。
私は、もしかしたら何かの間違いではと思っていると、
「やはり、貴方ですか?彦原さんですか?」
彼女は、そう続けてしゃべった。
多分間違いない。あのメールの主だ。
「そうですが、貴方は一体?」
「話は長くなります。あ、私は佳麗リストっていいます。
変な名前でしょう?元はアメリカ人なんです。日系の。
ともかく、どこか暖かいところへ入りましょう。」
と、にっこりと彼女はわらって見せた。
私は、なんだかその笑顔にすっかりやられてしまい、
その言葉に従う事にして、近くにあったレストランに
入る事になった。
83関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 01:06
復活応援ありがとう!第一弾!!
海子とリスト遭遇!!!!!!!!!!!!!

しかし、一体どういう事なのだろうか。
謎は次回解決だ!!!!!
84うみぴこ ◆/UmipkOE :01/12/13 09:18
関西おめでと!
毎回楽しみに読んでたのでよかった。

編集人さんすごいね!おつかれさまです〜。
85関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 16:20
おう!つうか、
なんだか過去行っちゃうのが、二百あたりからになったぽい。
ですから、
上げよろしく!!!!!!
さらに落ちやすいぞ!!!!
86うしゃ。:01/12/13 21:23
すごい!!
つかやっぱり落ちてたんだ。
編集の人すごい!関西頑張れ〜〜
87関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 21:27
佳麗リストと名乗ったその女性は、迷うことなく、一直線に
そこに向かって歩いた。雑居ビルの二階、小さな看板がでている。
表向きは洋風で、イタリアンかな?と思えたそのレストラン「エンポル」は、
以前に牛田と待ち合わせした時の喫茶店の如く閑散としており、
私達以外、お昼だというのに、全く人がいなかった。
客がいないならわかるが、店員すら、どこか奥にいるんだろうか、
誰一人見当たらない。私達は、仕方なく勝手に席につかせてもらった。
通り沿いの窓際を避けた、外からは比較的見えにくい席だ。
しかし、どうも、佳麗の様子が変だ。
このレストランに決めたのだって彼女だ。
最初から、「ここ」と決めていたかのような感じさえするし、
店員がいないということも、最初からわかっていたかのように、
全く気にしている様子がない。全てがシナリオどおりのようだ。
私は、何かよく解らない不安を感じ、店内をさっと見渡し
非常口を確認し、彼女の様子を窺っていた。
彼女は、なにやらニコニコと、さあ、何でも聞いて頂戴。と
でも謂うような笑みを浮かべている。ようし、それなら聞いてやろうじゃないか
まづはあのメールのことだ。
と、彼女に聞こうとしたそのときだ。彼女が口を開いた。
「あのメールは、私が送ったのではありません。しかし、誰が私達を引き合わせ
たのかは知っています。それは貴方の思うとおり。そう、鈴木タカシです。
ですが、彼の意図はわかりません。何故、それを私が知りえるのか。
これは、私の能力から説明しなければなりません。ここまでいいですか?」

いきなり、すらすらとしゃべりだした彼女に呆気にとられ、しかし、
その続きを聞きたかった私は、ただ、顎をこくりと上下に動かした。
88関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 21:56
彼女は、再びすらすらと語りはじめた。
ゆっくりと、しかし的確に、私の知りたい事を順序だてて
話してくれた。
彼女が、ある種の超能力をもち、最近になって、未来の出来事を
みることができるようになった事、そしてその前から、
地球の記憶倉庫にアクセスでき、そこで鈴木タカシの存在を
知ったこと、彼は今、どうやら別の世界から、私達を狙って
いるらしいという事、恐らく、今回のメールも、彼が何かを
たくらんで、自分たちを引き合わせているんだということ。
そして、私の大学時代のあの事件は、やはり、鈴木タカシ
がやったということ。
しかし、その時代にやったのではなく、彼があの事件を
起こしたのは、つい最近だという。
つまり、彼は、過去という、既成の空間にまで、干渉する力を
もち、大学時代にさかのぼって、何か精神的な攻撃を、彼女に
与えたのだろうという。
彼もまた、世界の記憶倉庫にアクセスできる能力を持ち、
さらに、その記憶を好きに取り出しができるらしいのだ。
でも、それではおかしい。
彼が過去に干渉できるのならば、私からどうにかされてしまうはず。
しかし、彼女いわく、恐らく、私や貴方には、彼がもっと恐ろしい
物を用意しているという事だろうとのこと。
こんな話、普通なら全く信じられないが、
佳麗が、あの事件や鈴木タカシ、さらに篠原や牛田の
事をしっているという事から、信じざるを得ないようだ。
どうやら、私はもう逃げられないらしい。
そして、佳麗リスト、そして、篠原、牛田も、
彼に狙われているらしい。
全ては、私の大学時代から始まっているのだ。
89関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 21:57
なんと言うことだろう。全てを巻き込んでしまった。
私の責任だ。
「一体どうすればいいの?私達は」
いつの間にかテーブルに乗り出していた私は、
その勢いのまま、佳麗に答えを求めた。
「戦いましょう。幸い、彼は私が近い未来を見ることができるという
事までは、まだ知らないようです。また、私自身、私に関する
情報に鍵をかけました。これは、貴方の中に存在する、私の
情報も同じです。本来、さきほどもいったように情報とは、
万物共用のもの。誰でもその方法さえつかめば、引き出す事が
できるのですよ、しかし、現代の生き物は、その方法を忘れて
しまっているようです。今の世にも、シャーマンと呼ばれる人
がいますが、彼らは、その末端です。そのうち、
彼らとも力をあわせる事になるでしょう。
ともかく、今から、私達つまり、私、貴方、篠原くん、牛田さん
についての情報に鍵をかけます。これで、しばらくは鈴木に
情報をさとられません。まだ対抗手段としては、このくらいしか
ありませんが、ともかく、そういうことなんです。」
そう謂って、佳麗は、にっこりと笑って見せた。
私は、煙草を吸おうと、コートのポケットに手をやろうとすると、
彼女が、すっとそう、まるで予知していたかのように、
煙草を差し出してくれた。しかも、銘柄まで同じだ。
「ありがとう」
そういって、彼女から煙草を一本もらった。
もう、信じるしかなさそうだ。
90うしゃ。:01/12/13 21:59
手首っぽい。
91関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 22:00
>うしゃ

そーーーなのよお。
落ちてた。でもほんと編集人感謝だ。
てか、だんだん、鈴木、悪役になってきちゃって・・えへへへh。
もーどこまでも落ちそうないきおいだぜえええええええええ!
げへへへ!
やああああああああああってやるぜ!
92関西☆ ◆w66.NORA :01/12/13 22:01
>90
一応。さっぱりキャラは意識してません!!!!!!

でも手首ぽかったらよし!
93関西☆ ◆w66.NORA :01/12/14 22:11
ちょっと今日は更新する気力が無いあげ。
94関西☆ ◆w66.NORA :01/12/15 21:34
・・・・・・・。
今、ゆっくり読み返したんだけど。
なんか、変ね。ものすごく変ね。
まづ、おい。鈴木の母は精神病院に入ってしまっただけじゃねのかyp。
なんで殺してんだ俺。
牛田はどうやって海子をつきとめたんだよ。教えてくれよ関西。
つうか、めちゃくちゃじゃん。
と、第二の俺が俺に謂うんですが。
どうしたらいいでしょうか?
あふあふ。
つうかどうしよう。まじ。
だ、だれかー。
96蘇芳 ◆Suou6rNs :01/12/16 20:59
牛田が突き止めたのは
兄の部屋に写真とか記録が残ってたとか。

お母様については。
発狂して自殺とか。それなりに。
とってつけ。
母はそれでいけるんだよ。
問題は、前者。

説明しようとして放置しっぱで、話すすめちゃっててたまなんs。
ああああ。
98蘇芳 ◆Suou6rNs :01/12/16 22:12
他に海子か鈴木の同級生がいて
牛田に教えたとか。
上にも書いたけど鈴木の部屋に海子の資料が残ってたとか。
色々あると思
うむ。
ちっと冷静に考えてみようかな。
補足って事で書き加えるか。。。
100名無し戦隊ナノレンジャー!:01/12/16 22:19
>編集人
サイトにまとめてくれ。
サイト?
サイトて?どうすんの?
age-.
103編集人:01/12/18 00:49
>100

・・・・・・・・ (;´∀`)
104 ◆maiko7I6 :01/12/18 02:28
進んでる!サスペンスの香り!
兄妹なので牛田にも能力があるというのはどう!?
幻覚とか!無理。
と、とにかく、加工。いや、書こう。
篠原と牛田
設置された蛍光灯がちかちかと点滅している。
彼は自室のある古い木造のアパートの階段をゆっくりと昇りばがら
彼は牛田京子の、あのあまりに無表情な顔を思い出していた。
口だけがパクパクと上下し、その目には生気がないのだが、
彼女のきれいに整った顔やメイク、今時のファッションに、
まるでデパートのマネキンをCGアニメで動かしてるような
作り物の雰囲気を感じ、僅かに圧倒される自分を見つけたりもした。

しかし、篠原にはどうしても解せない事があった。
海子が倒れたのは、どうやら、牛田の話からして、海子の
大学時代の知り合いだという牛田の兄が原因らしいとは解って
いたが、では何故、牛田自身、その兄が消えた中で、海子が
兄の知り合いであり、因縁浅からぬ仲だと知ったのか。
さらに、その因縁を知っていながら、彼女は何故、海子に
その調査を依頼しようとしたのか。篠原には全くその情報の出所
と、牛田の神経がわからないでいたのだ。
自室のドアを開け、備え付けのポストに何も入っていないことを
確認し、玄関のと、居間兼寝室兼食堂の電気のスイッチを
いっぺんにつけ、電気ストーブのスイッチをいれ、暫くその前で
座り込み、彼は意を決した。
コートのポケットにつっこんだ、牛田の携帯電話の番号がかれた
メモをぐっとにらんで、彼女に電話をかける。
あげだよファック!!!
108ナノです。:01/12/21 12:18
(゚Д゚)誰だ!!
109うしゃ。:01/12/22 01:29
留守電だ♪留守電だ♪
プルル・・プルルル・・
暖房の勢いの弱さのせいか、なかなか温まらない部屋の、それもわざわざ
隅っこの方まで行って、まるで何かから隠れるかのように、篠原は牛田に
電話をかけていた。
プルルル・・プルルル・・ピ。
「はあ。」と、白いため息をつき、もう既に部屋より温まってしまった
携帯を切った。携帯の向こう側で、無機質で冷たいも暖かいも無い電子音が
響いている。もう、これで三度目だ。しつこく鳴らしたが、気がつかないのか、
或いは無視しているのか。単にマナーモードにでもしていて、気がつかない
だけか。どれにしても、彼女は電話には出なかった。
しん、と静まった部屋。窓の外では強い木枯らしが吹き、木々の葉をざわざわと
揺らす音。木枯らしはガタガタ、ガタガタと、窓の上のひさしを煽っている。
その音に耳を奪われる内、なにやら得体の知れない不安に襲われた篠原は、
牛田への呼び出しを切ったその指で、そのまま、海子に電話をかけた。
やべえまちがった。

「はあ。」と・・・・・・・しまった。
の前に、
携帯の向こうで・・・・・・・・気がつかないだけか。
を、先にして読めこら。
112うしゃ。:01/12/22 22:17
先にして読んでやったぞこら。
幸い、海子は電話にすぐにでてくれた。
3回目のコールで、少し疲れたような、それでも、いつものように
はい、彦原です。という、海子の電話に出るときの決まり文句を
聞いて、篠原は安心した。
少なくとも、海子が自分を取り戻しているという証明だからだ。
「先生!大丈夫なの?」
「ええ。もう大丈夫よ。心配してくれたのね、ありがとう」
「俺、ちょっと思うんだけどさあ。」
「なに?」
「あの、牛田さんの件、あれ・・・」
「私も考えていたわ。もう、これ以上・・」
「そっか、ならいいんだ。もう関らないほうがいい。」
「いや、違うのよ。これは私の問題かもしれないの。
だから、もう一度牛田さんには連絡するわ。携帯聞いていて
くれたのね、ありがとう。
それでね、これ以上、貴方を巻き込むわけにはいかないわ。
納得いかないでしょうけど、貴方は貴方のやるべき事をして。」
え、と言う篠原を振り切るように、そういいきった海子は、
明日、ちょっと用事があるから今日はこれで寝るわ。
ありがとうね。じゃ。といって、電話を切った。
呆気に取られたまま、篠原は木枯らしを聞いていた。
ツーツーツーという、何か淋しい電子音の後ろに。

電話も握り締めたまま、海子は下唇をぎゅっとかんだ。
何故。何故、こんな言い方しかできないんだろう。篠原は、
倒れた私を、病院まで送ってくれて、しかも牛田の携帯の番号
まで聞いてくれてたというのに。そして、何より、誰よりも、
今、私は篠原に助けを求めたいというのに。
・・・・・。私は、何を怖がっているんだろう。
篠原を巻き込んでしまう事?違う。それはいいわけだ。
私はきっと、子供なんだ。彼の若さなんて関係ないじゃないか。
彼の若さが「怖さ」を知らない一方で、私は、その若さを
怖がっているんだ。そして、この関係が、崩れてしまうのを。
予想できない未来を選ぶのを。
私は、いつからこんな臆病な人間になってしまったのか。
海子は、もう一度、ぎゅっと唇をかんで、煙草に火をつけ、
携帯のメールを確認した。
明日。正午にコンビニ前。
誰からのメールだがわからない。しかし、
私はいかなきゃあ行けない。絶対に。
>112
ありがとうよファック!
どうだらあ!
これでつながったろあらあ!つーか人物多すぎて訳わかんなく
なってんだらあ!いいから嫁っだらあ!
116蘇芳色忌隅 ◆Suou6rNs :01/12/22 22:31
ヒャハハハハ。
んだああああらあああああああ!
いいじゃねえかもおおおおおおお!!!!

一杯一杯なんだつってん!
クリスマスなんぞファッ菌じゃップばかやろおおおお!

関係ねえけどくそやろおおおおおおおおおおおお!
あ ぶ ね え な !!!!!!!!!!!!!


おちっとこだったじゃんかよ!
119うしゃ。:01/12/25 02:21
じゃあ駄レスでもつけとくか

ファッキンジャップぐらいわかるよこの野郎!!←懐かしいねъ( ^ー゚)
続きまあ千円。
121編集人:01/12/27 16:35
そんなぁあああぁあ嗚呼。
どこか見覚えのある街角に私は立っていた。
右側には御影石の長い塀が続き、狭い1車線の道路を舗装するアスファルト
はでこぼこ。かすれたオレンジ色の20という数字が書かれていて、電信柱が
斜めに、何本も立っていて、たるんだ電線がかろうじて引っかかっている。
私は、この景色を知っている。それも、良く知っている。
きっと、後ろを振り向けば、100メートル先に県道が走っていて、ちょうど
消防署がみえるはずだ。
そして、私の左側には、二階建ての赤い屋根、低く刈り込まれたゴールドク
レストが生垣になっていて、南側のベランダが少し覗き、二つの大きな
出窓のある家がある。右側の出窓が私の部屋だ。
しかし、何かおかしい。第一に、景色に色が無い。灰色なのだ。
全てが、灰色のグラデーションで染まっている。
そして、人の気配がない。車も通ってない。音もない。何の音もしないのだ。
まるで世界に私一人のような不思議な感覚だ。
私は恐る恐る、しかし、勢いをつけて、我が家のある方向を振り向いた。
・・・・・・・!
真っ黒だった。そこには、ただただ、巨大で真っ黒な塊がぐるぐると、
まるで小学校の頃、想像したブラックホールのようなものが、我が家の
代わりに渦巻いていたのだ。
あまりの光景に私の足は動かない。しかし、私自身、意志だけが、
その渦に吸い込まれていく。私は動いていないのに、渦がどんどん迫ってくる。
私の視界を、徐々に渦が占領してゆく。
いけない!逃げないといけない!
私は必死に足を動かそうとして、だけど足はおろか、手も何も動かない!
何度瞬きをしても、目を瞑っても、その渦は消えない!
渦はぐんぐんと迫ってくる。「このままじゃ、本当に吸い込まれてしまう!」
そう思ったとき、不意に渦の中心がぐにゃりと変形した。
それはゆっくりとある形を形成してゆき、次第にそれは、巨大な手となり、
それはブワリとひろがって、私をつかみ込んだ。
手はそのままゆっくり、私を渦に引き込む。めりめりと、私が何かから
引き剥がされる様な感覚とともに。
ぼうっとする意識のなか、その手の隙間から、少女がみえた。
きっと、あれが私だったのだろう。この家にすんでいた頃の。
手は、私を、ついに渦へと引き込んでしまった。
「死んでしまうんだな」
そう思ったときだった。
私を包んでいた真っ黒な手が、一瞬にして光に変わったのだ。
それは、とても暖かく、ゆるやかな、春の午後の日差しのようで、
そのずっと奥から、何かが聞える。
「お・・・・・り・・・い。」
何?何といってるの?聞えないわ。
もっと、もっと近くまで来て?
「おかえ・・さ・・。」
「おかえりなさい。」
そのとき、バアっと一面に色がついた。背後から、まるで何かを
再生するように、しかし一瞬で。

こげ茶色の靴箱、その上に飾られた、箱根の温泉に一家で行った
時の写真と、ゴッホのひまわりの模写、グレイのタイルがしかれて
かさたてには、私が大好きだった真っ赤な傘と、紺、黄色、黒の
傘。
そして、オーク材の廊下に、母が立っていた。
「おかえりなさい、京子。」

ただ、いま・・・。


大きな暖色の照明に、オーク材の廊下、
124うしゃ。:01/12/28 00:09
関西はすごいなー
小説をよく読む人なのかな。
暇だと偉い勢いで読みます。
126うしゃ。:01/12/28 00:14
すごい勢いで読んでるとき邪魔したらやたらに放火しそうなイメエジ。
127うしゃ。:01/12/28 00:14
そういえばもう11時過ぎてるぞ。寝ろり
>126
一回彼女に邪魔されたとき、無意識に手を払いのけたそうですはい。
>127
てゆーか12時すぎてたんdyooooooooooo!
sugunetakedonee!
capsうぜえ。
あぶねええええええええええ!
あらすじ。
不思議な世界に突如として入り込んでしまった鈴木。
しかしそこは、人間の意志をつかさどる世界だった。
そして鈴木は、その世界の主とるが、鈴木は、その力を利用し、
全てを混乱に陥れようとし、まず手始めに、母、父、妹の彼を消し去った。

一方、妹である京子は、鈴木の因縁の相手である、海子の元へ相談を
もちかける。
しかし、その京子が消し去られてしまった!!!
そして、海子は、リストと名乗るエスパーとコンタクトを取っていた。
果たして、鈴木の暴走は止められるのか。
異界に閉じ込められてしまった京子は?その彼は?
そして、そのとき篠原は?
次回をまて!!!!
「はは。」
手や足といった四肢等の肉体と言う感覚を廃した鈴木の意識は、もはや
空中に漂う雲の如く変形をあkさね、いつしか平た薄く延びた巨大な一
枚の布のように変貌していた。
心の興奮や沈静を繰り返すごとに、彼の体というか、意思の集合体は、
波打ち、その動きは、彼に直結された物体をも揺れ動かすほどであった。
鈴木がこれほどの巨大化を図れたのは、彼が、この世界の全て、つまり、
人間の意識の粋である線や、その意思、物体の力などに触手をつなぎ、
その全てを自らに連結、まさに一体化を計ったからだ。
もはや、この世界は鈴木自身と化している。
と、いうことは、全ての現世に生きている人間たちの意思は、鈴木の
手の内にあるということになる。
彼がその気になれば、世界中の意志は、混乱を巻き起こし、一瞬の内に
滅び去るだろう。
しかし、彼はそれでは満足しない。彼を取り巻いていた現世での関係や、
思いだけを混乱させ、孤立させなければ、彼の現世への復讐は達成されな
いからだ。
「はは」
彼が笑うと、世界は振動した。地響いた。
その地響きのはるか遠く。
暗闇が暗闇と呼ばれない場所。沈黙が沈黙ではない場所。
感情と時間がぐつぐつと渦巻いた場所に、幾つかの意識が幽閉されている、。
その闇の深淵、時と時間と空間の狭間に、京子はいた。
太陽は常に西からてりつけ、木造の家具の模様を際立たせ、台所では、
母がピンクのエプロンの後ろ姿。
夕食のロ−ルキャベツを煮る匂いが台所から漏れ、テレビでは
京子が大好きだったバラエティー番組が流れ、その横で父が新聞を読んでいる。
そんな、幸せだった時間が、延々とリフレインされているのだ。
そんな中で、京子は、今まで解けなかったパズルをむさぼり解くように
その時間のなかに浸っている。幸せのままに。
延々とくりかえされる幸せだった時代の日常は、京子を幸福で縛り上げ、
結して逃がさなかった。
ほかにも、京子の彼や、海子の友人など、数人の人間の意識が幽閉されてい
るが、中でも京子だけは特別だった。他の意識たちは、まるで地獄のような
空間に閉じ込められ、それを延々と繰りかされているのに、兄弟ゆえの
情なのか、彼女だけは、幸せの中に幽閉されている。
三日ぶり更新。
yonndemasukaaaaaaaaaaaaa?
135(´。`)おくしん(´。`):02/01/01 10:39
読んでますがな

益々混迷を極める物語!
先が気になりますな
136 ◆maiko7I6 :02/01/01 11:31
貯め読みしてる!
黒い展開!
超2重かきこエラー出る。
137うしゃ。:02/01/03 01:12
最近ロールキャベツ食べてないな・・・
138名無し戦隊ナノレンジャー!:02/01/03 01:20
急展開の次号はいつ?
139鈴木:02/01/03 01:24
さ、ボキも関西タンのまとめて読みましょかな。

それは、京子の兄としての鈴木なりの優しさなのか。
しかし、他の意識を自我と統合し、物体のもつ知識の全てとも同化した
鈴木には、もはや生前の鈴木タカオとしての記憶や感情など、とうに
他の意思や知識と混同され、その奥底に沈んでしまっていた。
だが、
鈴木は、恐らく、自分がそうなるであろう事を見越し、事前に、ある処
置を施していたのだ。
それは、意思の統率。
線の意思や精神、物体の知識を自我と同化させるという事は、つまり、
他者の意識や、知識の根底に自我からの根を張るという事だ。
その根の役目として、触手があり、それを用いて自我と他のすべてを
リンクさせる。そうして、他者の持つ情報を自在にあやつり、例えば、
Aという人物の持つ記憶と、Bという人物の持つ記憶を、完全に入れ替える、
なんていうことすら可能となる。
また、彼らのもつ記憶を自在に出し入れできたりもするのだ。
だが、いくら巨大化しているとはいえ、それはあくまでも、
線たちや、物体の持つ情報保有キャパティシーがあるからで、
流石の鈴木も、その個々の持つ情報の器までは同化できない。
それは、鈴木自身もまた、同じであり、保有できる情報の質量
は、常人と大差ないのだ。
そんな中、膨大な知識と記憶といった情報を自我に取り込み、
操作するということは、鈴木の自我崩壊というリスクを
はらむ。もし、なんの処置もせずに、全てを操作しようとした
場合、彼固有の情報は、他の情報とごちゃまぜになり、
当初の目的や、人格をなくし、暴走してしまうのだ。
それでは、鈴木自身が掲げる、現世への復讐は達成されない。
いや、実際、事象としてなら、達成されるのだろうが、
自身の人格が崩壊してしまっては、達成感というものがない。
鈴木的には非常に満足のいかない結果となる。
なぜなら彼は、第一に現世で自分を苦しめた者を、
自らの手で苦しめたいのだから。
そう、そこで必要なのが、事前の意識の統一だ。
自身の持つ情報を極力削除することで、外部から自身の器に
安全に入れられる情報量を増やす。
そして、最小限残された自身の記憶を凝縮し、ある意思統一を
施し、ロックをかける。
これで、ある程度の自我や目的を見失わず、行為に移れるという
訳である。
鈴木は、かなりの自身の持つ情報を削除した。
まづは、自我の多くを形成する感情だ。大まかな喜怒哀楽のみを
残し、細かな、愛とか、優しさといった、世を混乱に貶め、
現世に復讐するという目的に必要なさそうな物を削除していった。
さらに、不要な雑多な知識。知識なら、物体内部を検索すれば、
いくらでもでてくるのだから。生半可な自身の知識なぞ、必要ない
のだ。そして、肉体を持っていたときの名残である五感。
これを削除した。肉体という枠を持たない彼には、もう必要も
ない感覚だったからだ。肉体で個々の感覚を使って感じる五感より、
今の状態で一気に感じられる感覚のほうが何千倍も処理速度が速い。
そうやって、鈴木は、喜怒哀楽と現世への記憶と、その他最低限
必要そうな情報記憶だけをのこし、内部の凝縮を図った。
そして、その残された情報に、
「現世への復讐をせよ」という命令を下し、ロックをかけたのだ。
143うしゃ。:02/01/03 02:48
鈴木タカシですよ(コソッ
この処置によって、京子だけが優遇されるという結果が生まれてい
るのだろう。

鈴木にはもう、人間と呼べるだけの感情は残れて居ない。
彼は、愛とか、哀れみとかといった人間らしい感情を削除した、
「現世への復讐」という、命令のみを受けた機械なのだ。

「ははははは。」
広大な空間に、彼の笑い声が木霊する。
そのたびに、世界の全ては僅かに揺れる。振動する。
おびえるように、震えるのだ。
。うしゃ
し!
しまtったあああああああああああああああああ!
タカオってだれだああああああああああああああああああ!
タカシタカシタカシ!!!!!!
はい!
謹賀深淵!おめでとう超更新!!!!!!!

すっげえ疲れた。
147鈴木:02/01/03 03:54
148うしゃ。:02/01/03 19:30
>>147
タカシだっつってるら(コソッ
149編集人:02/01/05 23:34
推敲いのち。…とまでは言わないですが。
校正好き好き♪になってください〜( ´∀`)
150関西(山海)☆ ◆w66.NORA :02/01/07 07:00
だへへへへ。
推敲してない。全然。
ごめんね編集人。
つーかあげちゃってくだしい。
ばうん195だし。
151赤い彗星☆:02/01/08 09:59
age

ここは何処だ?
篠原は、いつの間にか見知らぬ街角に立っていた。
今まで自分が何処にいたのか、何をしていたのか、
何をしにここにいるのかさえわからない。
しかし、おかしい。というのも、かなり発達した、
どこかの駅前なのか、雑居ビルが立ち並び、ネオンが昼なのに
太陽光に擦れながらも微弱に点灯し、プラズマビジョンには
ブラック系の二人組み流行歌手のダンスと、その脇の巨大な
スピーカから、彼らの最新の楽曲が流れている。
これらは、人が沢山集まる場所、という前提のもと、設置され
た物だが、その、肝心な人が、いない。
きっと、普段なら大勢の人間の足音や話し声で雑然とした
雰囲気であろうここには今、ただただ大音量で音楽が流れるだけ。
そして、篠原がただ一人、ぽつんと立っているだけである。

周囲をぐるっと見回す。やはり、誰もいない。
目の前の交差点にも、車一台いない。
なんだ?何処だここは?信号機だけが赤から青へ、そして黄色へ
誰に宛てるともなく、ゆっくりと点滅を繰り返す。
高校生の頃だったか。篠原は一度だけ、東京という所に行った
事がある。仲の良かった友人二人と、買い物をするという
名目のもと、最新の流行の発信地である渋谷、原宿、新宿
といった、所謂繁華街へと繰り出したのである。
新幹線に揺られる事三時間。東京駅から山手線に乗り換え、
そのまま渋谷へ向かった。その時点で、彼らの地元では考
えられない程の人ごみであったが、「ここは東京」という
意識があったので、さほど驚きもしなかったし、ここで驚
いては、あからさまに自分が田舎者であると謂っている様な
ものだし、何より、友人たちに馬鹿にされるのが嫌だったので、
「当たり前」という顔をしていたのだ。しかし、篠原だけが
そういう意識をしていたのではなく、彼の友人二人だって
同じように、虚勢を張っていたのだ。
そんな三人を乗せた電車は、いつの間にか渋谷へ到着。
怒涛の如き勢いで、電車から押し出された三人を待ち受けて
いたのは、まさに広大な迷路、その中を縦横無尽に歩き回る、
人、人、人の群れであった。
唖然としながらも、三人は、それを他の二人に悟られまいと
互いを牽制、化かしあいながら、渋谷、新宿、原宿という
土地を見聞して回った事があるのだが、
今篠原が立っているそこは、そのどれにも当てはまらない。
だとすると、ここは何処だ?大阪?福岡?札幌?
しかし、どうだっていい。そんなことはどうでもいい。
人が、いない。この街がどこかなんて、そのうちわかるし、
とりあえず、日本のどこかの都市だというのはわかっているんだ。
しかし、人が・・。それだけはどう考えても説明が出来なかった。
篠原はもう一度、ゆっくり確かめるように、同時に冷静を自分に
促すように、周囲を確かめると、思いっきり息を吸い込み、
叫んだ。
「おーーーーーーーーーーーーーーーい!誰かーーーー!」

走った走った走った。
信号機を、道路の白線を、ガードレールを飛び越えた。
片側三車線のど真ん中を、声を振り絞り、叫び走った。
どんどんどんどん進んだ。「誰か!誰かいませんかーーー!?」
まるでどこかの博物館に展示してある様な、精巧に出来た街のミニチュアに
迷い込んだのかと錯覚するほど、誰も居ない、何もない。
何故?何故?ここは?誰か!
篠原の頭の中で様々な憶測と推理が駆け巡り、入れ替わり立ち代りで意見する。
しかし、どれもこれも、この状況を説明できるものはない。
もうだめだ、どうなってるんだ?狂ってる?俺が?まさか!?
説明できない事象を無理に説明つけようとするとき、人はその事象を、
何かに例えようとする。しかし、それはあくまで、それに似ている何かが
ある場合だ。そう。これは何にも当てはまらない。そう謂う場合、
人は、自分を疑うしかない。自分は狂っているのか・・?と。
「ちくしょう・・・。!そうだ」
篠原は何かを思い立ち、ジャケットのポケットをまさぐり、
携帯電話を取り出した。これだ!普通、これだけの街ならば、絶対に電波が
入る。そうしたら、まず、電話だ。警察に電話するんだ。
一抹の希望を、携帯電話に託し、電源をいれ、画面の隅をみる。
きっと・・電波が、三本・・。・・・・・・・。
圏外。そこには、圏外という文字が、液晶の画面に冷たく張り付いている
ばかりだった。
そんな。まさか。何故?
いくら電源をいじっても、何度振り回そうと、それは凍りついた
ように、変化しなかった。
目の前が真っ白になりかけ、希望とともに全身の力がアスファルト
に引きずり込まれるような感覚を覚え、と、同時に焦りと怒りが
一気に足元から、スネを通って腹を伝い、胸をなで、一気に頭の
てっぺんまで登り詰めた。
「畜生!」
篠原は、その感情の全てを、この現状に叩きつける様に持っていた
携帯電話を、その世界に放り投げた。
篠原の感情を抱きこんだ携帯電話は、物凄い速さで、矢の如く
放物線を描き、そして、落下。するかに見えたそのとき!
携帯電話は、ドボン、という音と共に、その中空に消えたのだ。
「??」
唖然とする篠原を尻目に、その空間に、水がそうであるように
波紋が広がって行った。波紋は、その裏側に見える、ビル、道路
信号機、看板といった景色を巻き込んで揺らいでいる。
「なんだ?空間が・・?歪んで?携帯が、吸い込まれた??」
157うしゃ。:02/01/11 00:43
恐いって気持ちを持たせるつうか、わからせる表現がウマイねえ。
>157
すげえがんばってますからあああああねえええええええ!!!!
いや、ありがとうへっへ。

ぶわりぶわりと歪み波打つ空間。
波紋の広がりに、ある種の催眠効果でもあったのか、それとも単にあまりの
事に精神が撹乱されただけか、それをただ呆然と見つめていた篠原は、
ある種の眩暈さえ覚えていた。
夢だ。夢だ間違いない。こんな事あってたまるか。
もはや、篠原にとって、そう思う事でしかこの現象を説明つけることは
出来なかった。しかし、その願いにも似た希望とは裏腹に、空間はさらに
歪んで行く。篠原の予想では、空間はぶわりぶわりと一定周期で波紋し、
その動きを徐々に無くして行く筈であったが、一向に動きはなくならない
どころか、空間のゆがみはさらに酷くなり、そのゆがみがなんだか、人の
顔にまで見えてきて、些かの恐怖を覚え、しかしこれは夢であると言う
前提に沿って、篠原は目をこすり、頬をはたき、どうにか現実に帰ろうと
試みるが、その空間の歪みが本当に人の顔のように見えるようになるに
したがって、こちらこそ、この空間の歪みこそ、この世界こそ現実なの
ではないかという、最悪の結論をださなければならないと共に、
目の前で起きている現象と、その歪みのなかで、苦悶の表情で悶え苦しむ
顔のような模様が、どうやら、自分の顔にそっくりであるという事に
気がつき、篠原の頭の中は真っ白になり、へたりと道路に腰を下ろして
しまった。
ど、どうなってやがる?ここは何だ?これは?俺?
空間が?俺?ここは?誰?俺?まさか?誰?だれ?ダレ?ダレ?ダレ?
確実に自我を失いつつある事を、ゆっくりと認識しながらも、
まるで説明できない現象に、もはや篠原は発狂寸前である。
そんな篠原を弄ぶかのように、空間に浮かんだ顔は、未だ消えることは無く
ひたすらにその表情を歪ませていた。
ばうん160!
いえいすれ違い。


と、思わせてあげ。
161うしゃ。:02/01/15 18:19
海子に関わってなかったらこんな事にはならなかったのかな?
162わだーりー:02/01/15 18:22
海子がいなかったら。

海子という引っ掛かりが鈴木になかったら。
鈴木は最初から世界を滅亡させたでしょう。
あげ。
さてどーしてくれようかなっとおおおおお。
164ヒロシ:02/01/17 18:02
ヒロシ(164)ゲトー!!

いけない!このままではいけない!
それだけは解っている。状況を把握するんだ。何が起きているかなんてこの際
どうでもいい、今自分がどういう状況に陥ってしまってるかだ。
この状況を壊さなければ駄目だ。とりあえずは・・・!
意を決した篠原は、目の前に転がっていた石を掴み、思い切りの力を乗せて
その歪みにたたきつけた。
するとやはり、空間は先ほどの携帯電話が吸い込まれたときと同じように
ドボンという音とともに石を吸い込み、その表情をさらに歪ませた。
・・・。よし、大丈夫だ。俺は何とも無い。
空間が歪んだって、俺には何の影響もない。そう、篠原は確信し、一気に
持ち前である冷静さを取り戻した。
空間はしばし大きく乱れたが、徐々にその異様な顔を形成し、何もなかった
かのように、苦悶を浮かべている。
その一部始終をよく観察した篠原は、暫く考え込んだあと、再び石ころを
数個拾い上げ、今度はゆがみの中心より、二メートルほどずらした空間を
狙って石を投げた。すると、中心部に投げつけた時よりも若干軽い音と
ともに石は吸い込まれていく。さらに波紋は中心部に向かって広がりを見
せ、反対側にはさほどひろがらなかった。
・・。なるほどね。これはひょっとすると・・・。
篠原は、この空間とよく似た現象を思いだしていた。

そう。これを水に例えるならば、この空間の顔のある部分は、
波紋がまんべんなく四方に広がるため、水溜りの中心だと言え
る。そして、二メートルほど離れたところでは、波紋は
中心に向かってひろがり、反対に中心から逆の方向には、
確かに波紋は広がるものの、中心側のそれとはかなりの差で
波紋する距離が短かったし、石を投げ入れた時の音も軽かった。
つまり、この空間は、すり鉢状になっていて、はじの方の波紋が
広がらなかったのは、そこに波紋できる同質のものが無いからで
ある。これで、この歪みは、この世界全てと繋がって存在してい
るわけではなく、ここ一箇所のみの現象であり、別段危害もない
ということがわかった瞬間、一気に緊張がほぐれ、はー、と、安
堵のため息を吐き、篠原はへたりと座り込んでしまった。
さて。一段落だな。でもこれで問題が解決したわけじゃない。
それに、またどんな現象に襲われるかわからないんだ。
篠原は、未だゆがみ続けるばかげた空間を一瞥し、手に握ったま
まだった石を、顔に向かって今度は軽く放り投げ、
「もうこわくねーよ」と、言い捨てて、次はどうしようかと考え
ていた、その時だった。
篠原の背後、丁度、幹線道路が真っ直ぐに伸びている、その先
あたりから、どーーーん。どーーーん。という、なにやら何か
ヤバメな雰囲気の、まるで巨大なものが2、3バウンドしてい
るような音が聞えてきた。
篠原は、そちらを振り返り、キっと睨みつけた。
「カモンベイベー。もう怖くないぜ」と、ダレに見せるでもない
のに無理に意気込んで胸をはって見せた。
どーーん。どーーん。音はどんどん大きくなる。とにかく、
でかいものが近づいてきている。どーん。どーん。
音はさらに大きくなり、ちょっとこれはあまりにも・・・。
と、篠原が気押されしたその時、ビルの陰から真っ黒い物体が
姿をあらわした。その真っ黒は、まったくばかげた大きさで、
高層ビルが、特撮のミニチュアに見えるほどであった。
篠原が思わず目をしかめ、その全容を確認するころ、彼の顔は
真っ青に変わっていた。なんと、直径三十メートル以上はあるか
というほどのあまりに巨大な球体が、バウンドしつつ、こちらに
向かってきているのである。
っは。安心はできないわけね。ここは、とりあえず・・にげる!
・・・。
篠原は果たしてこの世界から逃げ出す事ができるんだろうか。
筆者も非常に不安である。(ぉぃ
168陰陽師:02/01/17 20:18
ウゴウゴー
>168
嫁。
あげ。
でも下がって。。。いく。
海子

未だに、一体誰が何の目的で(恐らく鈴木によるものだろうけど)
私達を、出会わせたのか、確実には解っていなかった。
しかし、リストの言うには、私達の行動や考えは、今までずーっと
鈴木に筒抜けであり、いつ、攻撃されてもおかしくない状態であったが、
リストの能力による、「精神のロック」によって、いくらかは、
鈴木に我々の動きを悟られぬようにはなったらしい。
学校に休職届を出してからまるまる二週間。
私はリストと共に、屋久島に来ている。
ここは、精神世界に通路を開く事ができるという「シャーマン」だとか
という人種が住んでいるらしい。
リストの案で、彼らに協力を仰ぎ、さらに私自身の心も、ある程度の
精神攻撃にも堪えられるようにしようという試みのため、わざわざ
こんな離島まで来ている。しかし、空気の濃度が違うように思える。
木々が多いせいか、深呼吸すると喉一杯にどっとした何かが流れ込んでくる。
私達が宿泊しているこのペンションは、完全に山の中にあって、
市街地からバスで二時間、周りには何も無いような所だ。
この宿のセレクトもリストによるものだ。
曰く、「森は大地の力と呼応していて、それを常に体内へ取り込み、
別の形にして体外へ放出している。まあ、酸素なんだけれども、この
酸素は、都会の樹木の出すそれとは全くの別物。力が宿っている。
その中にいるだけで、少し、ほんの少しだけれども、鈴木の力から
逃げることが出来る」からだという。
リストは朝からどこかへ出かけている。確か、夕方には帰るといってた。
行き先は何処とはいってなかったけれど。。
きし、きしと音を立てるベッドの上を歩いてみる。
なんとなくテレビの電源を入れてカチカチとチャンネルを回す。
知らないテレビ局ばかりで、お気に入りの番組も、時間帯が
違っている。
暇でしょうがない。どうしてだろう。暇だと、心に隙間ができる。
その隙間には、いつしか心配ごとが宿り、それは、
まるで傷口に挟まったかさぶたのようで、忙しくなれば
その存在は忘れられて、気がつかないうちに、解決されている。
篠原。「篠原」声に出して言ってみる。
彼はどうしているだろうか。きちんと学校には行っているのか。
電話に出ないのはどうしてだろう。やはり、一方的に
説得して無理に納得させてしまったからだろうか。まだ心の
整理がついていないのだろうか。そりゃあ、確かに一方的だった。
でも、彼には学生と言う立場があり、未来もあるんだし、
私のことばかりに囚われている場合ではないのだ。
そろそろ本当なら就職先も決まっていないといけないのに。
「ごめん」また、声に出して言ってみる。
でもこれは自己満足。解ってる。これは自分を落ち着かせる為の
呪文だ。全然効きはしないけれど。
カーテンの隙間から、和やかなオレンジの光が差し込んでいる。
もう夕方だ。リストもそろそろ帰ってくる。
あの人はいっつも私に何にも言わないでどこかに行ってしまう。
私といえば、なんとなく一日を過ごすばかり。
不安といえば不安だけれども、今日こそは、あの人の真意を
確かめるつもりだ。
オレンジの光の筋をそっとまたいで、カーテンをざっと開ける。
山の後ろに太陽が落ちてゆくせいか、逆光で山が闇をまとい始め
てる。冬の夕暮れは、短い分、夏のそれよりはるかに神々しい。
闇は叙叙に全てを包み、それを怖がる人々は、明かりをつけて、
その姿を確認している。
闇は全てを同化させる。個々に流れる時を、身体を凪ぐ風を、
たゆたう心を、木を花を、全てを。
それに身を任せると、世界の半分は完全に同化して、全て
眠りにつくんだ。そして、その精神は、闇と言うリンクで繋がる。
それが、本当の精神世界だ。と、この島に来る途中、リストは
私に話してくれた。
でも、現代人は、その闇に覆われて全てと同化する事を、
自分を失うってしまう様で怖いんだという。
そうかもしれない。人は始めに火を使った。獲物を刈り、肉を焼き、
また、身を守るため、そして、闇を照らすために。
それからというもの、人は無意識に闇を恐れ、敬遠し、
いつしか闇を排除するかのように、街には煌煌と明かりがともって
いる。人は潜在的に闇を怖がる。闇には何かが潜んでいて、
きっと自分を狙っているんだと、心に刷り込まれているんだという。
今、鈴木は、その闇に潜んで、その闇を操り、全てを壊せる
力で、我々を狙っているんだ。
リストの話を前提にすれば、闇とは本当はとても優しいものだと
言うのに。生きとし生けるもの全ての安住の地だというのに。
日が、山に隠れた。オレンジ色の膜を帯びた山は神々しく輝き、
空には紫色の水彩絵の具がぶちまかれている。
また、闇が世界を包んでいくんだ。今日、この闇が、私達に
優しい事を、なんとなく願った。

はあっはあっはあ。
コンクリートの壁に、篠原の激しい息使いだけが響いている。
なんなんだここは!
そんな意味の感情を吐く息に宿らせて、そっと外の様子を見る。
・・・。大丈夫・・か?
あのいまいましい、「どーん」という音はもう聞えない。
しかしさっきはびびった。あんなものに踏み潰されたら、本当に
死んでしまう。歪む空間、そしてさっきの巨大鉄球。
マジでなんなんだここは。
もう一度外を見て、本当に何も無い事を確認し、ほっと安心の
ため息を吐いて、篠原は、再び壁にもたれかかった直後、ソレは
現れてしまった。
・・・・・。なにやら左方向に嫌な予感がする。
というより、なんかいる。(!
篠原は、寄りかかった壁の左、三メートル位のところから、
明らかな視線を感じていた。
・・・・。まて、まて。落ち着け、確認して、それを認めて、
危険だったら逃げる。そして、打開案を打ち立てる。
よし、オーケイ。これが俺の「落ち着きのプロセス」
覚悟を決めゆっくりと視線をたどる。
視界の隅に、小さいものが映った。ドクン・・。ドクン・・。
次第に高鳴る心臓を抑えながら、一気にそちらを振り向いた。
・・・・・・!?!?!?!
!???????・・・猫ぉ???





猫だった。真っ白で、しかし何処か妖しげな、猫?のような生き物
がそこに立っていた。
「あれ?」
・・。いま俺は何て思った?猫が・・・立ってる?だって・・??
「う。わああああああああああああああああああ!!!!」
走った!走った!何故?猫?立ってる!!!
立ってた!猫!立ってた!
余りの事に完全に我を失った篠原は、とにかく逃げる事しか
思い付かなかった。せっかくの落ち着きのプロセスも台無しだ。
まさか!あるわけない!と、焦りながらも、きた道を振り返った。
!!!!!!
我が目を疑った。そこには、なんと、背中に翼を備え、それを
ばたばたと羽ばたきながら、さっきの白い猫(?)が、
物凄いスピードで追いかけてくるではないか!
「ぎゃあああああああああああ!!!!!」
跳んでる?猫?また?あれは?しろ?し、ろ?
猫?速い!飛んで。羽が・・。
完全なパニックに陥った篠原は、遠くなり行く意識の中、
おかしな声を聞いた。
「マッテ!ニゲナイデ!ママシサン!」
まさに半角としか言い表せない、不思議な声だった。
ママシ?なんだ・・・それ・・・。
篠原の意識は、そこで果てた。
もう暫く更新しなくていいほど書いた。
一週間はこれでもつ・・だろ!
もたせろ!
176うしゃ。:02/01/20 23:47
ままだったんだ。関西かと思ってた。
関西は別口で出てきたけどさあ
>うしゃ
ふ。いやあそのまあ。勢いで。勢いでえええええええええ!
こんなはずでわなかったんですが!はい!
つーかふっへへ。
いーでないの。・
178編集人:02/01/25 14:07
もたせますとも ( ´∀`)
あっがああああああああああああああああああああああああ!


れ。っと。
あぶねえなあああああああああ!
ばうん236だったじゃねえかよ!
181編集人:02/01/30 17:41
先生、最後の掲載から10日です〜。
>181
いやとりあえず上げでしょうこれは。。
つーかまて。

五階建て鉄筋コンクリート造りの都営住宅が軒を連ね、その中庭には
住宅の住民が育てたのか、多種多様の観葉植物や、食用植物が植えら
れ、その端には錆びた、もう使えないであろう自転車が蔦に絡まれて
放置されている。午後の日差しが団地の外壁を照らし、排気ガスでく
すんだ外壁の色をあからさまに照らし出し、白と黒の猫の親子が欠伸
をする。
東京都足立区。戦後のごたごたで団地地帯にされた町。
そんな穏やかで、激しい競争社会におきざられた様な一角に、
何の前触れも無く彼は現れた。
何度か塗り直されたのであろう、ぼこぼこに塗装された緑色のフェンス
が僅かに歪み、次の瞬間、そこに一人の青年が立っていたのだ。
彼はぐるりと周囲を確認し、次にすうっと息を吸い込み、直後咳き込んだ。
「ぐはっげほ。は−、戻ってきたぜ。現実世界!でも空気が悪いなあ」
彼が空気を巣すったのは何千年ぶりだろうか。
ある日突然意味不明の空間に吸い込まれ、何がなんだかわからないうちに、
その世界の責任者となってしまった悲運の男。そう、鈴木の仙台、いや、
先代責任者である。
息を吸い込むたびに咳き込みながら、彼は久々の「現実」を
眺め歩いた。狭い路地を凄いスピードで走り去る自動車、
人にぶつかりそうになっても謝りもしない中年女性、頭を色
とりどりに染め上げた若者、灰色に淀んだ空。
なんだか嫌なところに降り立ってしまったものだ。
ここはきっと、日本の中でも最も荒んだ一帯なんだろう。
彼はそう思っていた。なにせ、数千年前の人間である。
彼からしてみれば、首都郊外の比較的汚染されていないその
一帯であっても、彼にそう思わせるには十分だ。
彼は化学物質の匂いに鼻をつまみながらも、そこらを歩き回る
内に、彼は電気屋の軒先で足をとめた。
ソニー32インチテレビ大特価38900円の前で彼は怒りと恐怖で
その拳を握り締めていた。
32インチ大特価の画面には、伐採される森林、腐敗した海、
溶け出す北極の氷などが映し出され、森本レオのナレーション
で、僅かに穏やかさを帯び、内容の割りにソフトな印象の、
その環境ドキュメントは、まさに現在の地球の真実の姿を映し
出すものだった。
「なんだこりゃあ!」電気屋のショウウィンドウがビリリと響く。
自分が数千年の間、秩序と混沌の均衡を保ち、平和にバランス
を保ってきた人間の精神世界。その反映が、これだ。

冗談じゃない!俺は一体何のために!
くそう馬鹿な人間どもめ。せっかく俺が平安に保ってきてやった
というのにこれはなんだ。チクショウ。
もう一度最初からやり直さねば。
長年にわたる管理職の癖なのか、彼には異常なほどの責任感が
養われていた。
早速、彼は精神世界の鈴木と、現実世界再生プランについての話
し合いと打ち合わせを行うべく、鈴木に向けて、電波を発信した。
だが、その電波は現実から精神世界へと入る瞬間、遮られてしまう。
それもそのはず、精神世界はいまや鈴木でもあるのだ。
その鈴木が、外部からの情報を遮断しているのだから、いくら、
彼が電波を送っても、それは遮られてしまうのだ。
これはおかしいと思った彼は、再び精神世界に戻ろうと、
ワープを試みた。

おっし。
今回はここでおしまい!
次回を待て!不定期ですが!
そして、上げで!えぶり泥上げで!
187うしゃ。:02/02/01 22:29
あ、そいやままだったよね。先代。
篠原も何か繋がっているのだね。
188関西☆ ◆w66.NORA :02/02/01 23:06
おお。覚えてる人がいたとわ。
篠原君はどーしようねっへっへ。
もーめたくそ。
189編集人:02/02/03 13:55
なんだかんだでいい人なまま氏さんです。age。
190蘇芳色忌隅 ◆Suou6rNs :02/02/03 20:53
ハイ。226だったからage。
さっきから、ものすごい上げ荒らしがいる。
ではあげ。
193編集人:02/02/06 17:27
篠原君が本当に果てたままになってしまうと困るのでage。ヽ(´ー`)ノ マターリ
そろそろ書くあげ。いやあ色々あってなー。

「・・・・・・・・・だろ?」
「そうじゃ・・・・・くて・・・・やっぱり・・・」
「でも・・・・・・・に、・・・・似てなくも・・・」
螺旋階段を一段抜かしで昇っているような感覚と共に、なにやら話し声、
それも不可思議な、響きの声が聞える。
目をそっと開けて見ると、俺の視界には、ただ真っ白い何の変哲も無い
空間が広がった。
・・・・。天井。その真っ白な天井を見つめながら、
その、声を聞く。
どうやら、俺の事を話しているようだ。大丈夫、とか、似ているとか。
そうだ。俺は確か猫のようなものに追われて、そのまま意識を失ったんだ。
だとして、この声の主と、この場所は何処だ?
篠原は、そっと、その声の主達に勘付かれないように、薄目を開けて周囲を
確認した。グリーンに塗装された、いかにも事務室にありがちな、
サイドテーブル、何処からもってきたのか、病人を寝かせるベッドを囲うには
多少不釣合いな真っ赤なカーテン。リノリウムなのか、床にべったりはりめぐ
らされている、薄いピンク色のパネル。
どうやら。俺は安全なところに寝かされている。
それだけが確かなように思えた。
あの、忌々しい鉄球の跳ねる音もしないし、猫のようないきものの、羽の
羽ばたく音もしない。大丈夫だ。俺はどういうわけか、保護されているらしい。
その声を発している奴らに保護されたんだ。
そうか。ここは現実なんだ。きっと俺は、どこかの道端で倒れているところを、
誰かに救助されたんだ。ここはきっと、病院だ。
そしてあの、声の主は、看護婦とか、医者の話し声で、俺の心配をしてるんだ。
そうか。いや、そうだ、間違いない。
そう思った篠原は、安堵のためか、再び目を閉じた。
深く深く、まるで、沼にに沈み込む一つの板切れのように、ゆっくりと、
瞼の裏側の闇にその身をまかせてた。
あひー。酔っ払い執筆。
あっへっへ。
あげるあ!
abuna-i!

199うしゃ。:02/02/14 21:02
ところが…
200陰陽師:02/02/14 21:03

自分の心=一個の固体である、という考えを捨てる。
つまり、私は全てであり、全ては一つであると考えるのだ。
そう、彼は言った。
宿泊先に戻るバスに揺られながら、私は、今日会った一人の人間の言葉を
思い出していた。
島の、比較的海に近い場所、彼曰く、「大地の力の流れのたまる場所」
に、彼は住んでいた。海子をここまで連れてきたのも、私がこの島を
選んだのも、彼という存在が、この島にいたということが、おもな理由だ。
彼の家は、昔ながらの藁葺き屋根。庭には鶏だのブタだのが放し飼いであり、
それどころか、猿、リス、などの小動物が好き勝手に遊んでいる。
・・。一体どんな人物なのか。話には聞いたことがあった。
先の阪神大震災を予言し、その昔にはあの、東京大震災を予知したどころか、
大地の力を借りて、被害を最小限に抑えたのだというのだ。
そんな話を思い出しながら、ぼんやりと動物たちを眺めていると、
その動物たちが一斉に家の方を見上げたのだ。同時に私も驚きと、「何か」
を感じ、そちらを振り向いた。彼だ。直感した。彼に違いない。
私の顔を見るなり、彼は、
「さあ、あがりなさい、貴方が来るのはわかっていました。」と、いった。
顔一面にびっしりと生えたひげは、完全なる白で、その合間合間に見える肌
は、浅黒く、深い皺を刻んでいる。
彼の周りには常に動物がいる。本人曰く、「勝手に集まってくる」だそうで、
さながら現代の仙人である。
一見ただの不精者に見られがちだが、そのいでたちは、なにやら不思議な
優しさというか、大きなベールに包まれているようであり、彼の身動き
一つ一つに、周囲の植物や、小動物が連動、呼応するかのように見える。
彼は、この島一番のシャーマンであり、彼の力、いや、正確に言えば、
大地のエネルギーを操る力の大きさでは、恐らく日本一ではないかと
いう声すらあるほどだ。
「リストさん。。とか謂ったか。貴方、貴方方がこれから立ち向おうと
している者は、あなた方の敵ではないのだよ。」
私は驚いた。だって私は、彼に何も話してはいないのだ。
私が来るのを予知しただけでなく、私の抱えている問題までも、
彼にはお見通しなのだ。彼はそのままつづけた。
「自分たちに害を成す全ての存在は、敵である。という考えは、人間だけの
考え方なのだよ。敵であると思えば、そこには憎しみが生まれる。憎しみは
事を荒げるだけなのだよ。では、どう考えるかって?はは。簡単だ。
全ては自然なのだ。弱肉強食の摂理や、巡る季節に戸惑い流されること、
生と死。全ては自然なのだ。そうだろう?それと同じに考えなさい。
ただし、この場合、あなた方のいう敵は、自然のバランスを統括する立場
でありながら、そのバランスを壊している。だから、それを修正する。
あなた方は、彼を治しに行くのだ。」
彼は、そう謂って、軒先から空を眺めた。
「私はもう、長くない。」
そういいながら、空を仰ぎ見る彼の表情を、私は読もうとした。
悲しそうであるか、未練がありそうか。
しかし、その表情は、あの空をも覆いそうな慈愛に満ちており
生とか死とかに囚われる一人の人間としてのモノではなかったのだ。
「私にはもう、あなた方に力を貸してあげる事はできない。
そのかわり、あなた方に、力の使い方、考え方、これからすべき事
の方向を与えることはできる。しかし、それは貴方に教えるものでは
ない。なぜなら、あなた方の言う敵に対抗できるのは、貴方の力では
ないからなのだ。貴方の役割とは、全てをまとめること。
つまり、これからの準備をすることなのだよ。では、一体誰に、
術を教えると思う?」
呆然と聞いていた私は、その質問の答えをみつけられなかった。
「・・貴方の連れがいるだろう?さらにその彼女に連れがいるだろう。
そう、若者だな。彼をつれてきなさい。しかし、その彼も、なにやら
何処か別の世界に囚われてしまっているようだ。まづは、彼をだ。
こちらに戻す事から始めねばな。それは私がなんとかしてみよう。
まあ、既に手は打ってある。彼のことは私に任せなさい。」
204編集人:02/02/17 18:21
異世界に囚われた篠原を、シャーマンはどのように戻すのか?
半角しゃべりをする猫の正体は?
さらに篠原が「ママシサン」と呼ばれた理由は?
てゆーか侭はワープを試みた後どうなったんだ!

バラバラになった登場人物達が
またひとつにまとまる!
続きは関西先生の気の向いた時!
205???:02/02/17 18:22
      

                                     
うん。
気が向いたとき!!!!!!

いえい無責任!
207音符♪ ◆OmpCataQ :02/02/17 20:05

いつ向くんだよ!毎回毎回おいしいとこでキリやがってーーー。けちーーー。
208???:02/02/17 20:06
うむ。毎週楽しみにしてる番組があるだろうはにー。

そ れ と いっ しょ(はーと


いや、書かないわけじゃないから、マジ書くよほんと。あへへ。
210???:02/02/17 20:08
211音符♪ ◆OmpCataQ :02/02/17 20:09

ち  く  し  ょ  う  。




                            キナガニ マッテルーヨ。。。
212???:02/02/17 20:10
<鈴木>
ある日イキナリ、地球の記憶と全ての精神を司る世界の番人にされるが、
その破滅的衝動により、世界を我が物として扱い始める。
<彦原海子>
大学教授で、美形。生徒に人気だったが、現在休学中。
鈴木の暴走が、自分の過去と関ると知り、完全決着を望む。
現在リストと共に屋久島へ。篠原が気になる。
<篠原>
海子の勤める大学の三年生。海子に惚れてる。
海子をフォローしようとするが、海子に拒絶され、失意の中にいたが、
これまた突然、意味不明の世界に入り込む。
現在眠ってます。
<牛田京子>
鈴木の実の妹。麻薬中毒。
現在、鈴木により、彼氏ともども、精神世界に幽閉されてます。
<リスト>
鈴木の他に唯一、地球の記憶を覗き見できる能力と、近い将来を
軽く予知できるという能力等をもつ。超能力者です。
何者か(恐らく鈴木)の意思により、海子と出会う。
現在屋久島にて、海子と共に、対鈴木対策を練っている。
<侭>
鈴木に変わる前の仙台、いや先代責任者。
やっと開放されて、現実に戻るが、その現実に幻滅憤怒。
再度再生をはかろうと、今一度精神世界に戻ろうとする。

こんあとこっすかあ?
214???:02/02/17 20:21
                                       
215まりりん☆彡 ◆Sexy.8CQ :02/02/17 20:22
謎のシャーマンが気になります。。。
216???:02/02/17 20:22
                                             
もーめちゃくちゃ。

はっははー。
皆さん。書き物を書く時は、きちんと筋を立ててからにしましょうね。
へらへーら。
果たしてきちんと終われるのか!!!!
なんとかしろ!>俺
218???:02/02/17 20:23
                        
あー。謎のじいさん、誰にするー?
りぞとか?
220まりりん☆彡 ◆Sexy.8CQ :02/02/17 20:25
ああ、よっぱな時のりぞさんのイメージだー。
ん。んじゃーーー。

爺はりぞおじさんで。
222???:02/02/17 20:29
                           
223蘇芳 ◆Suou6rNs :02/02/17 20:32
爺!
ばうん224_!!!!!
すっげえ。ばうんと同時にレスも224.
だからなんだって訳じゃねえがね。ひいっひ。
かけねエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!
っし!
かけん。。。どーしたもんかはっはっは。
あー。まじでー。
228うしゃ。:02/02/23 17:06
先生頑張って〜
ちょっとおおおおおおおおおおおおおお!
休止!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

します!
230陰陽師2:02/02/26 21:34
シテネ

全てが虚ろに揺らぐ空間に精神世界先代管理者「侭」は浮かんでいた。
上も下も無い空間で、彼は腕を組み、ぐるりぐるりと、まるで宇宙に
放り出された、宇宙船のパイロットのようにその身を惰性にまかせながら。
「うーむ。何故だ。」
一度現実に戻り、その現状に怒りと悲しみを覚えた侭は、もう一度
世界の作り直しを計るべく、現責任者である鈴木と話をしようと、
次元を超えたワープを試みたのだが、どうやら、内側よりのロックが
かかっているのか、どうあがいても精神世界に入れないのだ。
「これは、選択を間違えたか。やたら。」
これは現管理者である鈴木が、精神世界の魅力、つまり、全てを手に入れ
たような気分に魅入られ、まるで自分が神にでもなったかの様に思い、
暴走してしまっているのだと、侭は思っていた。
侭は、以前、自分の前の管理者にそういう話を聞いたことがあった。
心の弱い人間が、稀に、暴走することがあり、責任者の選択は慎重に
しろと謂っていたことがあった。しかし、数千年もの間、ひたすらに
次の適格者が現れるのを待っていた侭は、能力だけの選定のみで、
その人格の選定をするのを忘れていたのだ。
恐らく、今、精神世界は鈴木の暴走によって、ロックされている。
しかし、先代責任者として、数千年もの間、精神世界を管理していた
侭は、多少のことならその培った力でどうにかする事ができるのだが、
思った以上に鈴木の力が大きいのか、自分の力が弱いのか、そのロック
を外すことはできなかった。
「うーん。まいった。」
そう嘆いている時だった。突然、侭の精神に語りかける者があった。
・・・・・・・。・・・・・。・・・・・・・・・。
「・・・?誰だ?この俺に話し掛けてくる?まさか・・そんな力をもつ
者なんて・・・?あり得ねえ・・?」
・・・・・・・・・・・・・・・。・・。
「・・・・・・。もしや、先代?」
・・・・。・・・・・・・、・・・・・、・・・。
「・・・。やはり!」
・・・・・・・・・・・・・。・・・・。
「先代!俺間違えちまった!」
・・・・。・・・・・・。・・・・・・、・・・・・・・。
「解った!今から向かうから待っててくれ!」
なんだかよく解らない2、3のやり取りのあと、侭は、再びのワープを
試みた。
あぶねえばか!
ばうん222!!
233編集人:02/03/05 09:22
今後時々内容のないageをしますが気にしないで下さい。
234関西(山海)☆ ◆w66.NORA :02/03/05 22:24
次回作描き隊。こんばんわ。リーダーの関西です。

次回の次回作書き隊。は!「適当に終わらせてもいいですか!?」です!

お楽しみに!!
235編集人:02/03/06 02:30
いいわけあるか阿呆ーーーーーーーっ!!


時々あてのない独り言も言いますが気にしないで下さい。
236関西☆ ◆w66.NORA :02/03/07 19:51
sa-komatta.
237編集人:02/03/09 21:03
マターリ ( ´∀`)
238関西☆ ◆w66.NORA :02/03/09 21:22
「ト、マア ソウイウコトデシタ。マダ ナットクデキマセンカ?」
最後にそう付け加えた、ネコ(?)のような生き物は、
今の今までオレに、この世界のこと、追いかけた理由、ママシとは
誰なのかについて、説明してくれていた。
ネコ、いや、音符とかと名乗ったそのネコが謂うには、
このへんてこ極まる世界は、現実世界と呼ばれる、今までオレや教授
が生活してた世界と、精神世界と呼ばれる、物質という概念の無い世界
の、丁度真ん中に位置している世界らしい。
この世界は、自分の思うとおりのことが現実となるらしく、
つまり、この世界で起こる全ては、自分の記憶や意思によるものだと
謂う事だ。
とすれば、あの歪む空間も、鉄球に追われたことも、オレが思った
事であり、また、無人の都会というのも、オレの記憶からの投影なのだ。
どうやら、オレは全く意識しない中でも、深層心理のなかで意識して
しまっていたらしいのだ。
つまりオレは、知らない空間=知らない町と考え、そこに一人だと
いう恐怖から、未知の危険という言葉を無意識に連想、そこから
投影されたものが、歪む空間であり、鉄球だったと言う事。らしい。
また、ママシというのは、以前、精神世界、この世界、現実世界の
バランスを保っていた人物らしいのだが、どうやら、オレはその
ママシにそっくりらしく、それでこのネコ、いや音符さんは、
オレをママシと間違えて追いかけた。ということなんだという。
・・・・。まったく滅茶苦茶なはなしだが、実際、このネコは
喋ってるし、さっきこのネコ、いや音符さんと話していた、
やたら目だけが大きい顔だけの生き物の存在と、実際にオレが
ここにいるという疑いの余地のない点から、きっと本当なのだろう。

239関西☆ ◆w66.NORA :02/03/09 21:42
「いや、納得するしかないでしょうし。俺がここに居るって時点で」
そう、返事をした俺に、全ては説明した、後は君が納得してくれるの
を待つだけだよ。とでも言いたげだった、音符さんは、鼻をひくひく
と動かし、こう言った。
「デモ シノハラサン。 シノハラサンガ ドウシテ ココニイルノカハ オレニモ ワカラナインダヨネ。
ダッテ シノハラサンハ フツウノ ニンゲンナノニ ココニイル。 ソレッテアリエナイ。」
しかし、ありえないといわれても、実際オレはここにいるんだし
とにかく脱出する方法を教えてくれ。と、聞こうかどうしようか
迷っているそのとき、再びさっきの目だけがやたら目立つ顔が
戻ってきた。
「お、目を覚ましたか。音符の説明には納得できたか?」
「ああ、どうも。一応納得できますけど。。オレここにいるんだし」
顔が、しゃべってるという当たり前さと、顔だけがふわふわ浮かびな
がら移動しているという異様な光景に、なんとも謂えない不思議さを
覚えながら、そういえばこの顔はなんていうのだろうと思っていたの
だが、全くこの顔、どうやら心が読めるのか、勘が鋭いのか、
「ああ、俺の名前は、そうだな。シュナイダーとでも呼んでくれ」
と、謂って見せたのだ。
それを見ていたネコ、いや音符さんは、こう突っ込んだ。
「シンジナイホウガイイヨ。 コノカオ イッツモ ナマエ チガウカラネ」
・・・・・・・・・・。
なんだかどうでも良くなってきた。
早く家に帰りたい。というか、就職活動結局しなかったな。
教授心配してくれてるかな、牛田さんとは連絡とれたのかな。
そんな事を考えていると、顔、いやシュナイダー(仮)が、
不意に口を開いてこう謂った。
「あ。大事なこというの忘れてた。篠原君だっけ?君がどうして
ここにいるのか、わかったぞ。」
「え!?」
「エ!?」
オレは脱出の方法の次に知りたかった事がわかったという彼の言葉と、
どうして早くいわねえんだよ、っていう怒りと、それにしても
ネコと顔だけの生き物と、オレが普通に喋ってるってやっぱ異常
だよなという感情で、なにがなんだかわからくなっていた。

つづく!(仮)
240age2ch.pl:02/03/10 15:38
>>1 itteyoshi
241age2ch.pl:02/03/10 16:40
>>1 itteyoshi
242うしゃ。:02/03/10 18:13
はははは(θ_θ)かよ
243まりりん☆彡 ◆Sexy.8CQ :02/03/10 18:19
おおー、久しぶりの新作にゃんっ
244age2ch.pl:02/03/11 00:21
>>1 itteyoshi
245関西☆ ◆w66.NORA :02/03/11 00:24
すんげえ上げやろうがいるな。
246関西☆ ◆w66.NORA :02/03/11 00:32
続きはオレが疲れてなくてかつ、頭脳がびんびんで暇なとき!
247age2ch.pl:02/03/11 11:43
>>1 itteyoshi
編集人のために保守?
249関西☆ ◆w66.NORA :02/03/12 00:28
ageru.
250加藤:02/03/14 00:57
omosire-.
daregakaitenndaro-.
251名無し戦隊ナノレンジャー!:02/03/14 00:59
自作自演の疑いがありますな。
252加藤:02/03/14 01:00
だ!だれがそんなことを!!!1
253名無し戦隊ナノレンジャー!:02/03/14 01:11
以前、関西氏(仮)は自スレで「私は加藤・・・」と
申しておりました。
これにより、関西氏(仮)=加藤と言う図式が出来ます。
如何でしょうか?
254菅原:02/03/14 01:12
俺もコテハン変えてみた
255名無し戦隊ナノレンジャー!:02/03/14 01:13
>253
昨夜のうちにバレバレ
>254
まま氏ぃ
256名無し戦隊ナノレンジャー!:02/03/14 01:13
昨日加藤のスレで話したとき関西だと思って話してましたが、何か?
257加藤:02/03/14 01:14
あーえーすいませんこういう場合黙秘権って有効ですか?


258菅原:02/03/14 01:14
ま・・・まま氏じゃねえよ・・多分・・。
259名無し戦隊ナノレンジャー!:02/03/14 01:17
私は久しぶりに来たので、事の状況が理解できていないようです。
>>255-256
大変申し訳ない。

>>258
大輔氏ではありませんでしたか?
260菅原:02/03/14 01:18
なんてゆーか、スッゲエフルネーム言われてる。
このスレから離脱・・。
261加藤:02/03/14 01:20
・・・・・・・・・・・・・(黙秘)
262名無し戦隊ナノレンジャー!:02/03/14 01:23
ここまで出ているのに、黙秘権は使えません。
さぁ、楽になりましょう・・・

この書き込みは、スレ違いのようなので、私も離脱します。
263加藤:02/03/14 01:24
これだけは謂える!
俺は関東生まれだ!!!!!

後はしらね!
264編集人:02/03/16 21:25
加藤さんが関西先生のゴーストライターという噂は
本当だったんですね!?

>>248
ありがとうございます…(涙
関西は「飽きっぽい」と通知表に書かれたタイプ
266編集人:02/03/21 22:43
関西先生は3月10日からずっと疲れているかまたは
頭脳がへにょへにょでお忙しいようです。
信じます。信じますとも・・・ ( i∀i)
267加藤:02/03/22 01:47
俺は日にニ、三時間しか考えるという行為ができません。
それ以上やると脳と身体のバランスがくずれ、パラドクス。
肉体の限界を精神が凌駕。まさに精神世界の住人となってしまうので、
それ以上は考えない事にしてるの。うひ。
最近はその考える時間の大半をシルバーの新作つーかアイデア出すのに
使ってたり、今度またバンド結成するので、その作詞をせないかんので
なんだか一杯一杯でぶ。いや、です。
でも明日核。いや、書く。

268加藤:02/03/25 01:17
「君がどうしてここにいるか。それはな・・」
ごくり。思わず喉が鳴る。そう、俺は気がついたらこの世界にいて、
この世界に来てしまった過程も理由もわからなかった。
そして、考える暇もなかったのだが、このネコと顔に保護されて、
しばし考える時間ができたのだが、その答えをあっさりと教えてくれる
という、この顔いや、シュナイダー?に、俺は僅かではあるが疑いすら
覚えていた。
「君、篠原君。君のお母さんの旧姓は?」
「???菅原ですけど。それが一体?」
「ア?レ?スガワラ デスカ?ソレッテモシカシテ・・・」
「音符君、良い勘してるね。そう、菅原とは、精神世界の先代管理者の
現実世界での本名だ。つまり、篠原君、君は、先代であるまま氏の血族
なのだよ。どうりでそっくりなわけだねえ。」
「??だからって俺がここにいる理由にはならないじゃないすか」
「いや、焦るな。ここからだ。よーく聞きなさい。」
そう謂って顔は、器用にもその表情を変えながら全てを話してくれた。
結論的には、俺は現精神世界の管理者である鈴木には劣るが、
訓練すれば彼と同等の力をつけることが出来ること、
また、現実世界で、教授たちが、ある人物に出会い、その人物が、
俺の力を目覚めさせるべく、ここに俺を送り込んだこと、
そして、この顔とネコによって、これから地獄のような特訓が始まるって
謂う事だ。
あまりに突飛すぎてはなしの途中、眩暈すら覚えたが、教授も現実世界で
闘ってると聴いて、なんとか自我を失わずにすんだし、同時に、これが
激しく現実なんだと、世界は違えど、これは現在進行形なんだと、
確信し、疑う余地もなく、また、逃げる余地もないんだと解った。
わが身が、もしかしたら明日の世界を救うかもしれないんだ。
今までは、教授のアシスタントという、第三者的な視点から事を見ていたため
あまり現実感が無かったのだが、どうやら、俺はこの渦のかなり中心に位置し
てしまったようだ。

269加藤
つーかだんだん文章が適当になてきてるね。>俺