http://dot.asahi.com/S2000/upload/2013102400031_1.jpg 今、漫画を使って地域振興をしようという県が増えている。
高校生が熱戦を繰り広げる漫画イベントもある。
内臓に響き渡るほどのドラのあと、高校生が円陣を組んだ。
「がんばっていきましょう!」
真っ黄色なTシャツに、お揃いのバンダナ。最大5人で一組のチーム、計20組が、一斉に
真っ白な画用紙に向かう。全国の高校が漫画日本一を競う「まんが甲子園」のスタートだ。
5時間半の決勝戦では、各チームがお題に沿って作品をつくる。1コマ漫画、美術作品、
なんでもあり。B2サイズの大きな画用紙を、球児ならぬ「ペン児」が囲む。
メガネ女子率、ざっと7割。優勝校が発表された後、画用紙に投じられた熱は、
悔し涙とうれし涙に変わった。
いま、漫画で地域振興をする自治体が増えている。漫画を教える大学を3校も持つ漫画の
教育集積地、京都市は、産業集積をも作るべく2013年に「京都版トキワ荘事業」を開始。
06年から東京都豊島区で同事業を推進してきたNPO法人NEW VERY(ニューベリー)は
「漫画を志す人が、世界から集まる場所にしたい」と期待する。
また「銀河鉄道999」の松本零士、「キャッツ・アイ」の北条司らを生んだ北九州市は、
文化振興を目的に「北九州市漫画ミュージアム」を開設。
目的は違えど、漫画を地域振興に使う事例は多い。
なかでも「まんが王国」との呼び名が高いのが高知県だ。「フクちゃん」の横山隆一、
「アンパンマン」のやなせたかし、「毎日かあさん」の西原理恵子など、数々の有名漫画家が輩出。
漫画で地域振興をしようと、高校生を巻き込んだイベントをはじめたのは、いまから25年も前だ。
活動に火をつけたのは高校生だ。1992年、県の都合でイベントをそれまでの夏から秋に
変えようとしたら、高校生が署名活動を始め、知事に陳情に来た。
「秋には文化祭と中間テストがあるので、夏にしてください!」
署名活動の名称は、高知県出身の板垣退助にならい、「自由漫権運動」。
これを機に生まれた「まんが甲子園」は、今や高知県の夏の風物詩になっている。
高知県が漫画に力を入れるのには理由がある。製造品出荷額が全国最下位で
第二次産業が弱いという現実だ。新たな産業を創出したいが、地理的なハンディから、
何を作っても運ぶのに時間と費用がかかる。そこで注目したのがコンテンツビジネスだ。
「龍馬を生んだ高知には、社会に異を唱える革新性がある」と、高知県まんが・コンテンツ課の
栗山典久課長。革新性が若者の表現活動を後押ししたか、最近、県内にはゲームの制作会社も
増えているという。
http://dot.asahi.com/aera/2013102400031.html