【業界】覇権アニメ請負人・アニプレックス高橋祐馬「僕はきっとお祭りの神輿担ぎ」

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1 【東電 91.5 %】 @あやめφ ★
『劇場版 空の境界』『化物語』『俺妹』――ヒット作の陰に(も日向にも)この人あり。
アニメを中心とした映像作品の製作・販売大手アニプレックスの宣伝プロデューサー
「ゆま」こと、高橋祐馬氏だ。

■ テレビアニメというマラソン

―― “テレビに頼らない”という意識って、持たれていたりしますか? つまり、これまでは
テレビで流すこと自体が最大の宣伝だった。ところが(私の考えでは)2005年前後からちょっと
潮目が変わったのではと。アニメをテレビで普通に流しても、録画データさえ手許にあれば、
パッケージを買う動機はかなり弱くなる。ですから“宣伝がコンテンツ”という考えにはすごく、
なるほど感がありました。

ゆま 「私見ではありますが、テレビアニメはなくならないと思っています。100年、200年経てば
わからないですが、ここ5年、10年で家庭からテレビが消えることは、おそらくないかなと。
テレビの影響力は、4マスのほかの媒体同様、昔と比べて多少下がっているとしても、
依然強いメディアであることに変わりはないと思っています。

けれども、テレビで流すことが、唯一無二の最大の宣伝という時代はもう……。今はお客さんが
飽きちゃう。番組が始まる5分前にはトイレを済ませて、みたいな時代でもありませんし。
そもそも毎週テレビ番組を見るという行為を、1クール13本完走することがまず大変ですよね。

テレビで流れるという、ある種の普遍性は確実にあります。ですが、単純にテレビで流して
いるだけでは、お客さんの気持ちが続かない。1クールに数本は見られますが、全部見続けるのは
無理ですし、多くの作品は気持ちがどっかで切れちゃう」

―― 「完走」と仰いましたが、最近「BDマラソン」という表現をよく目にします。パッケージの
定期購入行為をマラソンだと捉えると、宣伝は、一生懸命走っているランナー(お客さん)を
応援すべく、沿道で旗を振ったり、給水所を作ったりする行為に近いのかもしれません。
苦しいこともあるマラソン大会を楽しいお祭りとして盛り上げて、マラソン=祭りへの参加だと
思ってもらうための仕掛け作りといいますか。

ゆま 「まさに、盛り上がってる感であったりとか、『会社として力入れてます!』という
こちらの思いが、ネットを介して良くも悪くも伝わっちゃう時代かなという気はしています。
そういう意味では仰った通り、僕のやっていることは想いを伝える旗振りなのかもしれませんね」

ASCII.jp(一部抜粋)
http://ascii.jp/elem/000/000/612/612164/
http://ascii.jp/elem/000/000/612/612166/001_R_c_800x450.jpg
前編
http://ascii.jp/elem/000/000/611/611182/
続き >>2-3
2あやめφ ★:2011/06/29(水) 13:27:09.42 ID:???
■ 新聞の全面広告に、広告効果は期待していない

以前、新聞にバーンと全面広告を打ちましたが、あれは新聞購読者に作品を知ってもらうため
ではありません。今の若い人たちは、新聞を取っている人ばかりではないと思いますし。

あれは広告効果云々ではなく、ファンがどこからともなく全面広告の噂を聞いて、
『またアホなことをやってんなあ』と受け止めてもらえればうれしいんです(笑)。

―― ベタな、直接の広告効果ではない。

ゆま 「そうです。別の作品で『ニューヨーク・タイムズ』に打ったらどうだろうと思案したことも
ありまして。調べた結果、(広告を)打てることはわかったのですが、そこまでの変化球だと、
さすがにお客さんのミットに入らないと思ってあきらめました。暴投になっちゃうので」

■ 僕らにはカツカレーしか残されていない

―― お仕事の合間とか帰宅後に、ネットの反応をチェックすることはありますか?

ゆま 「見ます。めちゃくちゃ見ます(笑)。でも自分の作品のことはほとんど見ません。
ほかの作品で何が起きているかを見つつ、今のお客さんたちが何をどう楽しんでいるのかを見て、
次の一手をどう出せばいいのかを考えたりしています。

基本的には、オリジナルのアイデアって、もうないと思うんですよ。結局、カツとカレーを
合わせたらカツカレーになりました、みたいなものしか僕らには残されていない。
だからさまざまなアイデアを試して、とにかく攻めていく。そしてなるたけ宣伝をコンテンツとして
楽しんでもらえたらいいなと」

■ 小さくなってしまった表彰台を目指して

―― 最近はアニメの本数そのものが減っていますが、1作品当たりの宣伝費が増えたりは
しないのですか?

ゆま 「うーん、それはないですね。やはり厳しい状態は続いています。会社でも一応の
取り決めがあるんですよ。たとえば1クールで1000万、2クールなら千数百万みたいな、
ざっくりとしたイメージです。そして僕……すみません!まったく収められない子なんです。

これはほんとによろしくない考え方なんですけど、3万枚売れたら、別にいいんじゃないのみたいな(笑)」
3万枚売って、たとえば宣伝費が1000万だったら、たぶんすごい利益になるはずなんですよ。
であれば、2000万とか使っていても、ほら……みたいなね(笑)。

もちろん、結果が伴わないなら、どこかで見切りを付けなきゃいけません。放送開始後の
パッケージ予約などで、ある程度売り上げ予測は立ちますから。でも、その数字を見て
『よしこれは行ける』ってときは、倍プッシュだ!!みたいな感じです(笑)」

―― アニメ業界は大変だという話が多い一方で、ヒット作候補にしっかりお金とパワーを
かけてあげれば、今でも十分(ヒット作を)生み出せるという意見も聞きます。

ゆま 「アニメはいろんな報道で斜陽産業……って言うと語弊がありますけど、パッケージ
ビジネスも全体のバジェットとしては右肩下がりとの評価です。でも、セールス全体として
目減りしてるわけじゃないんです」

―― ビデオグラム市場全体に占める割合はむしろ上がっていますね。特に、高品質を求める
BDにおいてそれは顕著です。

ゆま 「たとえば近いところでは、今年の1月新番組の中でも、IS<インフィニット・ストラトス>』が
3万枚売れたり、ありがたいことですけど『まどマギ』が好調だったりと、ヒット作は出ているんですよ。

アニメのファンは作品をみんなで盛り上げていこうという意識がすごく高い。これはほんとに
凄いことで、楽しみ方や参加意識含めて、世界一のコンテンツファンです。ただ一方で、
売れない作品も増えてきたとは思います。表彰台が小さくなってきた感じとでも言いますか。
3あやめφ ★:2011/06/29(水) 13:27:18.97 ID:???
■ 総合Pとしてアニメコンテンツエキスポを振り返る

―― TAFと同日開催ということもあり、各社への対応には苦慮されたのでは?
苦労話・反省点などあれば。

ゆま 「都内近郊のあらゆる会場を探して、偶然TAFと同日の幕張メッセしか空いて
いなかったんです。それが故に、対抗意識はまったくなかったのですが、結果として
“TAF VS ACE”という構図ができてしまったのは、関係各所へのご迷惑と共に、何より
ファンに無用の混乱を与えてしまい、非常に申し訳なかったと思っています。

■ 都知事の「ざまあみろ」には、悲しみと憤りを感じた

―― 中止をどう受け止めますか? ニコニコ生放送での田原総一朗氏との対談によれば、
都知事は「ざまあみろ」とおっしゃったようですが。

ゆま 「東日本大震災という未曾有の災害に伴って、幕張地区の液状化現象や輪番停電、
継続的な余震といったさまざまなことが起こりましたよね。その上で、あらゆる可能性を考慮して、
世界一のコンテンツファンである皆様の安全や作品の未来を最優先に考えた上での
中止決定だったので、あの決断は正しかったと思っています。

『ざまあみろ』というご発言に関しては……あえて言うならば、僕自身、都民としてアニメコ
ンテンツにまつわる仕事をしているひとりの人間として、悲しみと共に憤りを感じました。

大事なのは、どこでどう開催するかという形の話じゃなくて、何をするか――ファンと作品の
未来につながるかという中身――だと思ってます。その考え方の中で、たまたま今回は
独自開催を決めただけでしかありません。

アニメや漫画が、日本が世界に誇るコンテンツ産業であるのなら、その未来につながる
可能性が(中止によって)失われたことは、たとえ成り立ちがどうであれ、嘆きこそすれ、
敵意を持つべきものではないと思います」

■ ACE2012開催はあるのか?

―― TAFは2012年に向けて始動したようです。ACEの2012年開催は?

ゆま 「今のところはまだ何も考えていませんが……そうですね、これから起こるであろう
さまざまな状況の中で、ファンと作品、それぞれの未来にとって必要だと感じたら、またみんなで
打ち合わせしようかなと思ってます。

大事なのは開催することじゃなくて、何をすることが必要で、どんな行動をとるべきなんだと
いうことです。そこを見誤らずに、あらゆる可能性を検討したいですね」

―― 最後にアニメファンに向けてメッセージなどあれば。

ゆま 「いつものノリと比べて、やや真面目なインタビューになってしまったので、最後ぐらい
言っておくと――2010年10月は『俺妹』で覇権を取ったので、これからも、引き続き取れるように
がんばります! また余計なこと言ったな、おれ(笑)。

まあ、何をして覇権かって、言ってる自分でもわかんないですけどね(笑)。
何かまた新しい言葉が見つかるといいんですが。

なんだろうな。イメージとしては、わーっと、一番おっきな祭りを作るってことかな。
僕はきっとお祭りの神輿担ぎなんですよ。神輿は作品やファンの皆さん。僕はその
担ぎ手としてワッショイワッショイって一生懸命担いで、ずうっと皆さんに楽しんで頂ける様に、
微力ながら頑張れればと思ってます。ですから『死ね』とか言わないでください(笑)」