京都駅から,地下鉄とスクールバスを乗り継ぐこと約30分。市街地から少し離れた場所に,
京都精華大学はある。1968年に京都精華短期大学として開学し,現在は芸術学部,
デザイン学部,マンガ学部,人文学部を擁する4年制の大学だ。
そんな京都精華大学のデザイン学部 ビジュアルデザイン学科 デジタルクリエイションコースでは,
「ゲームデザイン/アプリ開発」の講義が行われており,現在は10数名の学生達(2人の留学生含む)
がゲーム制作を実践中だ。
講師陣には,Route24の西 健一氏,猿楽庁の橋本 徹氏,そしてワン・トゥー・テン・デザインの
小野友資氏らが名を連ね,それぞれゲームの企画,ゲームの歴史やプロモーション手法,
Flashを使ったプログラミングなどを学生達に教えている。
取材当日の講義は,学生達一人一人が,自身で企画したゲームをプレゼンするという内容。
これまでに西氏がレクチャーしてきた,ゲームの企画立案方法を踏まえてのものだ。
想定プラットフォームはゲームのアイデアに合わせて自由に選ばれており,そのうえで
ターゲット層や世界観,ゲームの内容,プレイフローなどが発表されていく。
どの企画でも重点が置かれていたのは,「リスク&リターン」という構造である。
西氏は学生達に対し,「常に選択肢が複数あって,プレイヤーにそこで何を選ばせるか」が,
“ゲーム”であると説いていた。つまり,今回発表された数々の企画は,すべてそれを
踏まえたものになっていたわけである。
すべての発表を見終わって印象的だったのは,企画書の段階であるにもかかわらず,
ある程度まとまっていて,完成形を想像しやすいものが多かった点だ。昨年も同様の講義を
受け持っていた西氏によると,「去年はもっと尖ったものもあって驚かされたんですが,
実際に開発するとなるとなかなかたいへんで,そのあたりを少し言い過ぎてしまったのか,
今年の生徒達は少しまとまりすぎかもしれません」とのこと。
昨今のゲーム事情を考えてみると,携帯電話向けのゲームを筆頭に,ソーシャルアプリや
ブラウザゲームなど,“ゲーム”と呼ばれるものの定義が急速に拡大している。
となると,ゲームの作り手には,従来よりも幅広い知識や経験,創造性が求められることに
なるはずだ。ただその中でも,ゲームがゲームらしくあるためのポイントは,そう大きく
変わることはないだろう。おそらく西氏が「リスク&リターン」という言葉で説明し,学生達に
考えさせているのは,そういった部分ではないかと思われる。
この講義を受講している学生達は,日常的に“ゲーム制作だけ”を学んでいるわけではなく,
あくまでも選択科目の一つとして,ゲーム制作を学んでいるに過ぎない。将来はゲーム業界に
クリエイターとして飛び込みたいという意欲を持って受講している学生もいれば,ゲーム制作を
通じてさまざまなツールの使い方を覚えたいという学生もいる。
ただ,前述のとおり現在は“ゲーム”と呼ばれるものが多岐にわたり,今後も“ゲームと
されるもの”は増え続けていくことだろう。それを考えると,ゲーム制作だけに特化した能力を
習得するだけでなく,自分の使える武器の一つとして“ゲーム制作”を学べる環境は,
好ましいものであるのかもしれない。
今回の講義は,最後に全員がすべての企画に対し,「良かった点」「悪かった点」をまとめ,
発表者にメールで伝えるといった形で終了。今回は一人ずつの発表だったが,今後は
すでに組まれている三つのチームごとに1本を選び,企画をさらにブラッシュアップさせてから,
開発作業に入る予定とのこと。
4Gamer.net(一部略)
http://www.4gamer.net/games/027/G002744/20100608048/ http://www.4gamer.net/games/027/G002744/20100608048/TN/002.jpg