【インタビュー】「イヴの時間」プロデューサーが語る、新時代のアニメ産業論

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1依頼 ◆YKPE/zzQbM @ゆきぺφ ★
3月18日、グーグルがソニーと協力して、Android OSを搭載したテレビやSTBを開発中と報じられた。
奇しくも前回はWindowsを搭載したテレビ「ROBRO」(関連記事)を取り上げた。広告の掲出機会を
増やしたいグーグルは、ついにリビングの画面にも進出できるのだろうか。
映像業界はこれまで映画館やテレビを「ファーストウィンドウ」(最初に世の中に出して、ビジネスを
する場)として展開し、パッケージ化や再放送を通じ、制作費用を回収するスタイルを取っていた。
そこでの成績がその後の収益を決める面も大きく、コンテンツビジネスでは非常に重要な一手となっていた。
だが、連載で見てきたような動画サイトが一般的になるにつれ、ネットをファーストウィンドウとして
選ぶことも増えてきた。ユーザーからアクセスしてもらう必要があり、コンテンツの魅力がさらに問わ
れてくる中で、成功をおさめている作品がある。それが今回取り上げる「イヴの時間」だ。
NHKのデジタルクリエイター紹介番組「デジタル・スタジアム」(デジスタ)を立ち上げ、現在は
有限会社ディレクションズの代表として、「イヴの時間」ゼネラルプロデューサーをつとめる長江 努氏
(@tomnaga)に、その新しい方法論を聞いた。

「製作委員会方式」抜きでなぜアニメ制作が可能だったのか
―― DVDの販売不振から深夜アニメのビジネスモデルが苦境に立たされる中、「イヴの時間」DVDは
Amazonランキング上位を占めています。バリューチェーン※の流れに沿って伺っていきたいと思いま
すが、まずは制作の経緯について教えてください。
長江 監督の吉浦康裕さんと出会ったのは、デジスタへの応募がきっかけです。作家性が前面に出る
作風で、番組でも高い評価を受けていたのですが、作品「水のコトバ」で商業的にアピールできる力も
発揮し始め、驚かされました。「これはモノになる」と直感し、一緒に作ったのが前作の「ペイル
コクーン」です。
DVDで一定の成功を収めましたが、物量面で個人制作の限界も感じました。そこで劇場公開も視野に
入れられるような尺(時間数)を持ったシリーズ作品をグループで作ろうと取り組んだのが、イヴの
時間でした。
―― それでも100人以上が関わるともいわれるテレビアニメに比べれば、かなりの小規模です。
テレビアニメは「製作委員会方式」でビジネスに関わる各社が投資をします。今回、制作資金はどの
ように調達されたんでしょうか?
長江 劇場版の宣伝・配給費用を除き、「製作」※はディレクションズのみです。監督やスタッフへの
費用を全て負担したことで、結果的に著作権も一元的に管理する体制が取れています。ディレクショ
ンズはテレビ番組の制作がメイン業務なので、その収益を新しいコンテンツへの投資に回せるのです。
―― なるほど。「権利が分散してしまい、合議が前提になる製作委員会方式では機敏なビジネス展開が
出来ない」という問題点がなかったわけですね。では、はじめに「テレビ」を選択しなかったのはなぜ
なのでしょうか?
長江 これもやはり、メディアを始め、大きく変化する状況に柔軟に展開したかったというのが最大の
理由です。確かに尺が短いのでテレビのフィラー枠(番組のすき間に入ってくる15分程度の番組)で
放送する方法もありますが、そうなると、テレビ局の意向も汲む必要が出てきます。すると今のよう
な展開は難しくなってしまいますよね。
―― 確かに。テレビ局が番組コンテンツの著作権を保持する是非が問われている現状もあります。
ですが、ネット中心に展開することによってリーチ(視聴者の幅)が狭まってしまうことについては、
どのようにとらえていたのでしょう?
長江 最終的には幅広く認知度を上げることが目的でしたが、クオリティに絶対の自信があったので、
まずはコアとなるファン層を構築することを最優先させました。有料配信や広告収益は狙わず、展開に
つながる基礎を固めることが主眼でした。

◎ソース
http://ascii.jp/elem/000/000/509/509054/
http://ascii.jp/elem/000/000/509/509054/index-2.html
http://ascii.jp/elem/000/000/509/509054/index-3.html
http://ascii.jp/elem/000/000/509/509054/index-4.html
2 ◆YKPE/zzQbM @ゆきぺφ ★:2010/04/04(日) 01:00:55 ID:???
>>1の続き)
テレビではありえない「2ヵ月に1話」の配信ペースが功を奏した
―― 子供向けのアニメ番組などはテレビ局から制作費をもらって作ることもあります。この場合は
GyaO!さんがそこにあたるわけですが、調達費などの提供を受けるということはなかったのでしょうか?
長江 それはありません。もちろん配信後は配信権利料をいただきましたが、資金的なサポートは受けて
いません。実はGyaO!さんの担当者の方に、トレーラーの時点で作品をとても気に入っていただけたん
ですね。当時は海のものとも山のものとも知れなかったものを、「個人」として熱心に応援いただいた
ことがきっかけになったんです※。
―― なるほど。しかし最近、「ネット発の映像・音楽コンテンツはニコニコ動画」という風潮があり
ます。GyaO!での配信だけで、コアとなるファンを獲得し、クチコミで話題がひろがっていったという
手応えはありましたか?
長江 「2ヵ月おきに1話公開」という、テレビにくらべると非常にゆったりとしたスケジュールだった
ので、話題性をうまくつないでいくことが出来るのか不安はありました。
しかも前半が終わったところで、その制作スケジュールさえ崩壊するのですが(笑)、視聴者からの
フィードバックをエピソードごとに受け止めながら、次のエピソードに活かすことも出来ました。
予想以上に好意的なフィードバックが多く、我々のモチベーションも上がりましたね※。
イヴの時間は、いわゆるアニメのコアファンだけでなく、もう少し広い層にも響くポテンシャルのある
作品だと思っているので、結果的にユーザー層が幅広いGyaO!さんをファーストウィンドウに出来た
ことは幸運だったと感じています。
ただ、いざ劇場公開となったときには配給を担当するアスミックエースさんと「ターゲットがとらえ
づらい」と頭を悩ませることになったんですが(笑)。

■ 「イヴの時間」第1話
http://www.nicovideo.jp/watch/ca6667803
―― 視聴者からのフィードバックを番組コンテンツに反映させるというのは、NHKでの番組制作の
経験が活かされているわけですね。ある意味、CGMでの展開をテレビで先行して実践されていた……。
長江 それはあるかも知れませんね。デジスタをはじめ、私が制作に関わった作品は「作って流して
終わり」ではなく、むしろ「流してから始まる」、つまり視聴者からの応募作品や投稿メールといった
レスポンスを制作に反映させながら展開するものが多いんです。

次世代クリエイターの育て方は「スタジオ型」ではなく「アイドル育成」
―― アイドルなど、音楽アーティストの発掘・育成にも通じる話と思うのですが、吉浦監督のような
才能を見つけ出して育てる過程は、従来の「労働集約」的な作り方とはずいぶん異なっていますね。
長江 作家の支援、言い換えれば「生活保障」が重要になると思います。ディレクションズは子供向け
番組のコーナーアニメ制作も多数請け負っているので、それを若いクリエイターに発注しています。
もちろん「イヴの時間」のような大型作品の場合には、一定期間それに専念してもらうため、フィーを
お支払いしていきます。
―― しかし、どれだけ優れた才能を持っていても、個人で持てる「引き出し」には限界があります。
グループ制作体制にはそういった背景もあるのでしょうか?
長江 それももちろんありますが、クリエイターの成長段階に応じ、必要なステージを提供するのが
我々の使命だと感じています。前の作品で個人制作をやり切った吉浦監督にはアシスタントを3〜4名
付けた上で、原画や動画といった工程をアウトソーシングできる体制を取りました。その一方、1人で
とことん作り込む方が持ち味を出せるクリエイターもいますので、ケースバイケースではないでしょうか。
―― よく指摘されることですが、ツールの進化と低価格化で、クリエイティブ自体はかなり小規模な
チームでも出来るようになりました。一方、その才能を育てる組織の規模や、機能のありかたが問われ
ているように思えます。
長江 スタジオのようにクリエイターを抱えると、「食べさせる」ことにとらわれすぎてしまうと思い
ますし、作家の成長を第一に考えた場合、様々なパートナーと仕事をする方が広がりが出ると考えて
いるので、専属契約の形はとっていません。
3 ◆YKPE/zzQbM @ゆきぺφ ★:2010/04/04(日) 01:01:15 ID:???
>>2の続き)
3000枚を完売したDVD、再販しない理由は「申し訳ないから」
―― 取材前に改めてAmazonを確認したところ、まだDVDの1巻〜3巻が販売されていないことに驚かされ
ました。劇場公開して話題が盛り上がっているタイミングなので、正直もったいないとも感じてしま
うのですが。
長江 実は、想定外のことが重なった結果なんですが……まず、GyaO!さんで2ヵ月に1回の配信を予定
していたところが、1話配信まで漕ぎつけた段階で、4話目以降は「最低4ヵ月、間を空けないとリリー
スできない」ということが判明しました。これはさすがにまずいと頭を悩ませましたね。
そこで苦肉の策として思いついたのが「1話ごとにシングルDVDを出す」という変則的な方法だったん
です。何らかリアルな「モノ」が世の中に存在すれば、ファンの記憶をなんとか維持できるのではない
かと。なので完成品ではなく「ブートレグ」(海賊版)と呼んでいたくらいです(笑)。
1300円という価格設定とはいえ正直、15分だけのシングル盤を買っていただけるのだろうかという不安で
いっぱいでした。いざフタを開けてみると徐々に売れはじめ、結果として、予定していた各巻3000枚は
公式ショップとAmazonの直販だけで完売しました。
こうした経緯に加え、初回限定版を買って作品を支えて下さったお客さんへの手前、再販希望が多いから
といって、すぐに増刷して販売するということにはためらいもあります。劇場版が落ち着き、一段落する
までお待ちくださいということでご容赦いただけないかと……。
―― なるほど、そういった経緯があったんですね。「放送権料の高いテレビでなくても結果が残せる」
と証明出来たのはエポックメイキングな出来事だと思います。ネットとDVDでは画質も違えば、劇場版では
新規カットやリテイクなどを施すなどといった工夫も功を奏しているんでしょうね。
長江 劇場版は、テアトル東京さん、アスミックエースさんのご厚意に負うところが大きいです。アニメ
「時をかける少女」を手がけられた方の発案でオールナイトイベントも実現しましたし、公開後1ヵ月経っ
てもモーニング・レイトでの上映を確保いただいています。
―― 根底は、作品自体のクオリティの高さが、関係者も含め、共感する人の輪をひろげたことと言えそう
ですね。そのクオリティに達するまで、じっくり作り込めるネットというウィンドウを選べたことも背景に
ありそうです。

市場は「コンテンツ」に満腹でも、「発見と体験」に飢えている
―― 最後に、連載を通じて「2011年以後」のことを伺っています。これまでは動画コンテンツを配信・流通
する立場で意見を聞いてきたのですが、コンテンツを生む立場ではどんな展望を持っていますか?
長江 動画共有サイトが一般化されて以降、スタンドアローンのコンテンツがビジネス的に通用する時代は
終わったと感じています。作品そのものの力だけで回収をはかることは、もう現実的ではなくなったという
ことです。
その一方で動画サイトも、最初は物珍しさもあってよくアクセスされていたと思うのですが、一生かかっても
見られないコンテンツ量というボリューム感に対し、次第に「満腹感・飽和感」が出て来てるんじゃないかと。
そこに(テレビの)多チャンネル化が加わると……。
大量に広告を打てれば別ですが、コンテンツをその中に投下するだけでは埋没するだけです。「コンテンツ疲れ」
しているユーザーからすれば「 また新たな満腹感を味わうのか」と、敬遠される恐れさえあるのではないかと
感じています。やはり作品以外の付加価値が必要だと思います。
4 ◆YKPE/zzQbM @ゆきぺφ ★:2010/04/04(日) 01:01:47 ID:???
>>3の続き)
―― 「イヴの時間」の場合、それは何だったのでしょう?
長江 1つは「発見感」です。これまで情報は広告の形で「上から降ってくる」ことがほとんどでしたが、それも
飽和感が強い。クオリティは限界まで高め、あえて熱心なファンに見つけてもらうまで「粘り強く待つ」ことで、
この発見感を演出することが大切だと思いました。余地、空白を設けておく。
もう1つはサポーターと一緒に育てていく、「体験ができる場所」を用意することです。ネットに「リア充」と
いう揶揄がありますが、そう言いながらもみんなリアルに向かっていると思うんですよ。ヴァーチャルな感覚より、
実際に体験した方が何倍も面白いことに気づいてるんじゃないか。
たとえばイヴの時間の場合は、「劇中登場するブレンドコーヒーを飲みながら映画を楽しむ」みたいな体験に価値
を見いだして、劇場にも足を運び、その後にも盛り上がったりしていただけているのではないかと。
―― マスコンテンツに対する、とがったコンテンツの戦い方とも言えますね。
長江 作家性の強いアーティスティックな作品はなかなか商業ベースには乗らなかったのですが、ディレクションズが
アニメパートをプロデュースした「星新一ショートショート」(NHK) がエミー賞を受賞するなど、潮目が変わって
きました。
いわば「匂うコンテンツ」が評価される時代になってきたのではないでしょうか。コンテンツがあふれるほど存在
する今だからこそ、匂いの強いものがそこから抽出されて評価されるのかも知れません(笑)。
これからも濃い才能を発掘して育てていくことができればと思っています。(おわり)
5なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 01:05:18 ID:b6WSw5t9
今日映画みてきたよ!!!
あ、あのオトコはい、いった誰なんだ〜〜〜
6なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 01:09:20 ID:B71WRUjN
ニコニコのおかげだろ
gyaoでなんか誰もみてねえよ
7なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 01:37:29 ID:uf7ioIIK
これがニコ厨脳ってやつか…
8なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 01:54:38 ID:3McBFtmB
うちの近くではやってないんだよねぇ
BD出たら買うわ
9なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 02:02:54 ID:is5SjEbd
派遣業かいな
10なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 03:16:59 ID:wa8QXqXX
もうドリ系でいいや
11なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 05:59:11 ID:caA57ZHg
どうなんだろうなー
イヴの時間は特例で一般論に当てはめて
考えるのは無理なんじゃないの

こういうのが増えてもコケるだけのような気がする
12なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 11:18:12 ID:lrn/HwU/
これから天下をとるのが「育つアニメ」だということは確かだが
そのうち育てる行為が娯楽以上の意味を持つようになる
らき☆すたは一足先にそれを全部やった
13なまえないよぉ〜:2010/04/04(日) 12:05:07 ID:6MY9OUAn
5話まではニコニコで観て、6話はPS3で観た。
映画、はやくBDで出てくれないかな〜
14なまえないよぉ〜
この映画って、当日に直接行っても見れるかな?