北米最大のアニメ流通会社であるファニメーション(Funimation Entertainment)は、
3月20日に日本のアニメ製作会社GDHと戦略的な提携を結ぶと発表した。
両社の提携はDVD発売とオンライン配信の双方に及ぶ。
ファニメーションは自社のウェブサイトを通じてGDHが保有するアニメ作品の配信を行う。
さらに今後発表される作品についても配信を行う。3月20日には、『ドルアーガの塔』と
『ブラスレイター』の配信を開始した。また、これらの作品はストリーミング配信だけでなく、
1話1.99ドルでダウンロード購入も出来る。
GDHとファニメーションは、これまでもDVD販売を通じてビジネス的には関係が深い。
一昨年大ヒットとなった『アフロサムライ』やその続編『アフロサムライ:RESURRECTION』など、
GDHが制作した作品の多くがファニメーションから発売されている。
このため今回の提携の中心は、オンライン事業と言っていいだろう。
ファニメーションは数年前からアニメのオンライン配信に関心を深めており、
今回はその事業展開の一環とみられる。
特に注目すべきは、ファニメーションが日本の放映との同時配信を目指している点である。
インターネットを通じたアニメの日本放映との同時配信は、日本国内にも事業会社を持つ
クランチロールが昨年来攻勢を強めている。
3月18日から開催された東京国際アニメフェア2009でも同社は自社ブースを設けて、
プロモーションを行っていた。また、東京国際アニメフェア期間中には、新たな配信番組を
多数発表している。DVD事業では業界最大手のファニメーションも、
オンライン配信については、クランチロールの後塵を拝している。
ファニメーションの今回の動きは、これに対抗することになる。
一方で、クランチロールとはまた異なるビジネスモデルが導入されている点も注目される。
クランチロールのビジネスモデルは、広告ビジネス、有料会員ビジネスを核としている。
これに対してファニメーションは、番組配信が自社で発売するDVDの
プロモーションとダイレクトにつながることになる。
一方、GDHはクランチロールに出資を行い、早くから同サイトに自社製作の番組を提供している。
今回は、一見、ライバル企業にコンテンツを提供する矛盾した行動にも見えるが、
こうしたビジネスモデルの違いもGDHの判断に影響を与えているとみられる。
また、番組の権利者にとしては、より多くのウィンドウが実現し、より多くの販売窓口があることは、
ビジネス的には望ましい。少し穿った見方をすれば、複数の会社を天秤にかけ、
より利益のあがるビジネスにシフトして行くことも可能である。
既に北米の『NARUTO』は、クランチロールと同時に大手のアニメ・マンガの流通会社である
VIZメディアでも無料配信が行われている。
DVD発売は一企業が独占的に販売するビジネス形態が取られている。
しかし、オンライン配信は独占配信でない、複数のサイトからの配信が一般的になって来た。
今後は、サイト同士の競争が激しくなり、配信サイトの差別化も重要になるだろう。
ファニメーション(Funimation Entertainment)
http://www.funimation.com/ GDH
http://www.gdh.co.jp/ animeanime.jp
http://animeanime.jp/biz/archives/2009/03/gdh_21.html