見てくれ。遠い過去の天上の過ちの歴史。長い、孤独な心の記憶を。
今お前が見ているものは、この星の遥かな過去。天上がまだ存在しない太古の世界。
数千年続く文明が栄えるこの星に、どこからか現れ降り立った者たちがいた。
人の思念の波動、万能の力、アクトを操る者たちだ。
「アクト……?」
人の思いや願い、夢、それらを生む心。彼らはその心の波動、アクトを力にも物質にも変換できた。
それはまさに、神の力にも等しい万能の力だった。だがこの者たちがアクトを手にしてはならなかった。
彼らはその力に溺れ、知恵を無くし、心を失っていった。
この星で無慈悲に振るわれたその力は、恐ろしい速さでアクトを生む者たち、人類を根絶やしにした。
数千年続いた文明は数日で地上から姿を消し去った。
それでも彼らの愚行は止まず、時空を隔てた壁を破るために星の姿まで変えていった。
「星の姿……」
失われた万能の力、アクトが異空より循環してきていた。
それに気づいた彼らが、時空を渡るために星の波動に干渉し、その姿を歪め、
そこから生まれる力を以って時空を破ったのだ。侵略と略奪があらゆる時空で繰り広げられた。
星々の思いや願い、夢が、瞬く間に枯れていった。あらゆる星が、時空が、心が、闇に沈んだ。
そして、長い無法の後、異空から奪った無限のアクトで、彼らはこの空に新しい世界を創造した。
それがこの天上世界。全ての時空を支配する全能の者たちが住まう空。
彼らは自らを「天上人」と呼び、力を生む心の波動を「アクト」と呼んだ。
そうだ、俺様の生きるこの世界は、心を略奪し星々を食らって生まれた忌むべき世界。
この汚れた空で全能の支配者となった彼らは、享楽の限りを尽くし、快楽を全てを貪り、
やがて、その全てに倦んでいった。そんな世界の末路は定まっている。
流されるまま天上は廃頽にまみれ、堕落を極め、枯れ落ちるのを待つだけの世界と成り果てた。
一方で、その時を待ち続けていた者たちがいた。
奪われた未来を取り戻すため、心を食らわれ続けてもなお、明日を夢見て地上に生きた者たち。
アクト供給生命体として産み出された末に、望まぬ形ゆえ捨て去られた人類だ。
下界に廃棄されても彼らは生きることを諦めなかった。
長い忍耐の末に、待ち望んだ機を得て天上を襲った。その力は天上人を圧倒するものだった。
天上の王は選択を迫られた。戦って滅びるか、アクトの供給源である世界との繋がりを絶つか。
彼は時空を閉じた。全ての柱を下界へ落とし、天上を汚した地上の世界の者たちを焼き尽くし、
全ての絆を断ち切って地上との繋がりを絶ったのだ。「災厄の日」と呼ばれる出来事だ。
その後、天上人は時空への干渉を一切禁忌とし、この扉に番人を置いた。
呪いの契約に支配されたこの番人は、あらゆる関係から切り離され、王を凌ぐ力が与えられた。
あらゆる関わりの外に置かれたこの魔人は、代々局外者と呼ばれ、全ての時代で疎まれ続けた。
だが、天上人が自らを守るため設けたその番人と扉が、いつしか天上を救う道の妨げとなっていた。
天上に残された道はただ一つ。遠い過去にこの空をめぐっていたアクトの循環を呼び戻すこと。
それを阻んでいるのが局外者自身。それを悟ったガスは宿命に逆らい天井を去った。
奴が残した力で繋いだあの光の絆、俺たちはこれからあそこへ戻り、俺様とお前の世界を繋ぐ。
それが出来れば二つの世界の「心の循環を取り戻せる」。
悪しき世界だがこの天上を落としたくはない。
「ムント、アクトの、心の循環を復活させることって本当に正しいことなの?」
過去に犯した過ちを消し去ることは出来ない。
\だが俺たちはその罪を償い、新しい未来を切り開くことができるはずだ。 /
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