知られざる「オタク王国」新潟 多士済々のコミケ「ガタケット」に潜入
「ドカベン」など野球マンガの大家、水島新司をはじめ、「うる星やつら」の原作者の
高橋留美子、魔夜峰央、小畑健など漫画家たちの出身地で知られる新潟県。
人口比でみた漫画家輩出率はダントツの全国1位を占めるほど。地方都市では類を見ない
大規模な同人誌販売会が毎年数回開かれ、街中にはマンガのキャラクターが至る所にあふれている。
そんな「オタク王国」新潟に密着取材した。(高木克聡)
25年の歴史を誇り、開催回数が100回を超えた「にいがたコミックマーケット」
(通称ガタケット)。11月に新潟市産業振興会館で開かれたガタケットは熱気に包まれていた。
展示ホールに並べられた机の上には同人誌がズラリと並ぶ。
同人誌とは、同人雑誌の略称で、同好の士が資金を出しあって作成された雑誌で、
内容は人気のマンガ・アニメや仮面ライダーなどの特撮ヒーローを題材にしたパロディー漫画のほか、
マンガやイラスト、小説など多岐にわたっている。
ガタケットには約1000を超えるサークルが自慢の同人誌を販売しており、
中にはプロも驚くほどの出来映えのものも。
ガタケット事務局の坂田文彦代表(45)は「ガタケットは県内でプロを目指す漫画家の登竜門
として長年愛されてきた。25年という歴史の重みがある。さらにガタケットは近年、変化をしてきている」と話す。
ホール外は、人気ゲームの戦国武将や漫画キャラクターのコスプレイヤーがひしめき合い、撮影会場になっている。
記者よりも上級機の一眼レフを構え、反射板を駆使するカメラ小僧に気押されながらも、
その列に混じり「1枚いいですか?」。
コスプレイヤーたちは気さくに撮影に応じてくれる。
撮影コーナーの一角に戦国武将が活躍する人気ゲーム「戦国BASARA」の
コスプレイヤー十数人の集団に取材を試みた。
真田幸村役の男性(18)は「ほとんどが初対面。同じジャンルのコスプレイヤーが会場で集まり、
ファンの輪がどんどん広がっていく」とコスプレの魅力を話した。福島県や富山県など、
隣接する県からの参加者も多く、日本海側の“オタク”たちのメッカとなっている。
他にも猿飛佐助役の女性(17)などに話を聞いていると、悠然と近づいてくる“武田信玄”の姿が。
すると、女性らは「お館様!」と、取材もそっちのけに信玄の“護衛”を始めた。
そのパワーに記者は圧倒されっぱなしだった。
商店街や市もマンガを使った町おこしに取り組んでいる。新潟市中央区古町通5番町の商店街には、
水島新司さんの「ドカベン」に登場する山田太郎や岩鬼正美の銅像が街行く人を見守っている。
新潟市でもマンガ文化を広めようと、自治体が主催する唯一のマンガ大賞「にいがたマンガ大賞」を創設した。
今年で11回目の開催となった同賞は、35都道府県から2歳から83歳まで340点の応募があった。
最終審査員の水島新司さんは「新潟県のレベルは相当高い。大賞の作品もプロ並み」と絶賛した。
県では来年を大観光交流年ということから、各市町村も誘客に力を入れるが、マンガを観光資源に
生かし切れていないのが現実。新潟市民の一部からはマンガミュージアム建設を求める声はあるものの、
同市観光交流課は「マンガを観光資源として活用する予定はない」と消極的だ。
マンガやアニメを観光に生かした例は、「ゲゲゲの鬼太郎」で妖怪ブームを作った鳥取県境港市や
アニメ「らき☆すた」で熱烈なファンの聖地となった埼玉県鷲宮町などがある。
鷲宮町の「らき☆すた」人気の火付け役の同町商工会の坂田圧巳さん(35)は「ファンを巻き込んで、
自治体も住民も一緒に楽しむことが、成功の秘訣(ひけつ)。歳末セールで米100キロを
予約してくれたファンもいる」と話した。
マンガやアニメへの熱気はすさまじい。「マンガ王国」として、地域に、そして全国に新しい風を
送り込めることができるか。目を離せそうにない。
MSN産経ニュース:生活 [2008/12/30]
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/081230/trd0812301301002-n1.htm