英語圏最大のアニメ情報サイトであるカナダのアニメニューズネットワーク(Anime News Network(ANN))は、
12月9日から日本アニメ『KITE LIBERATOR』の全編ストリーミング配信を開始した。
配信は全編無料で広告収入によって維持される予定である。さらにウェブの会員となると高画質の映像で作品を
鑑賞出来る。ANNはこれまでにも動画コンテンツの配信を行ってきたが、日本アニメの全編配信を行うのは
初めてである。英語圏の有力アニメサイトの動画配信進出として注目される。
『KITE LIBERATOR』は梅津泰臣氏の監督によるSF作品、1998年に公開された『A KITE』の続編である。
日本と北米双方で今年春にOVAが発売されている。
これまであまり例のないオリジナルアニメの日米同時発売としても話題を呼んだ。
また、昨年10月の東京国際映画祭では、そのダイジェスト版が公開されている。
前編となる『A KITE』は国内でもマニアな人気のある作品だが、海外ではハードなアニメファン、
映像ファンの間でカルト的な人気を誇る。1990年代にしばしば見られた、
日本よりも海外でより評価の高い作品群のひとつである。
こうした前編の評価の高さから海外企業も製作委員会に加わるかたちで、およそ10年ぶりに『KITE LIBERATOR』
として続編が登場した。大きな話題を呼んだ前作を上回る映像美が見所となっている。
今回の動画配信は北米地域で『KITE LIBERATOR』のライセンスを持つメディアブラスター(Media Blasters)
からANNがインターネット送信権のライセンスを獲得し実現した。
ANNは同社のオンラインサイトが、ネット上で合法的に『KITE LIBERATOR』を鑑賞出来る
唯一のサイトであるとしている。
ANNは、1998年に設立された英語圏最大のアニメ情報サイトである。アニメ・マンガの最新情報を毎日伝えるほか、
ファンのためのコミュニティ、オンライン版のアニメ事典などが主要なコンテンツとなる。
英語圏のアニメファンのスタンダードとして人気が高い。
また、近年動画コンテンツの配信に力を入れている。東京国際アニメフェアやアニメエキスポといった
日米の大型イベントの様子、クリエイターインタビューなどの配信を既に手掛けている。
また400以上のアニメ作品の予告編やプロモーション映像も視聴可能である。
現在北米の日本アニメ市場で、DVDなどの映像パッケージの売上が急激に縮小していることはよく知られている。
こうしたことから新たなアニメビジネスの市場として企業の間でオンライン配信事業への関心が強まっており、
ここ1、2年の間に様々な方法で日本アニメの配信が始まっている。
しかし、現時点で有料課金モデル、広告配信モデル、関連グッズのプロモーション手段、
どのビジネスモデルが成り立つのかは明らかでない。
さらに配信事業をどこで行うかといった問題も存在する。人気があると言っても、日本アニメは北米全体からみれば
ニッチな市場である。AmazonやiTunes、Huluといった巨大なサイトでは、アニメコンテンツは埋もれがちである。
また、マス向けの商品として売れないとの判断から掲載を拒否される可能性もある。
しかし、巨大サイトの代わりにとして独自の配信サイトを立ち上げるのはコストがかかる。
さらに限られた作品の配信だけを行うサイトは集客が難しい。
そうした中で既に巨大なユーザーを持つアニメ情報サイトやコミユニティでの動画配信は、
多数のコアなターゲットにアプローチする方法として魅力が増している。
こうした動きはANN以外でも英語圏のアニメファンに向けて動画投稿・配信サービスを行っている
クランチロール(Crunchyroll)の例もある。同社は先頃違法動画の投稿の停止を発表したばかりである。
その代替の集客方法として、SNSとコミュニティ運営の強化を進めている。
今回のANNのアニメ作品の配信事業への進出は、現在関心の高まっている
動画配信とウェブ上のアニメコミュニティの融合という点で注目される。
アニメニューズネットワーク(Anime News Network(ANN))
http://www.animenewsnetwork.com/ ANNtv
http://www.animenewsnetwork.com/video/ animeanime.jp
http://animeanime.jp/biz/archives/2008/12/post_511.html