音楽チャートで年々存在感を増しているのがアニメ関連の作品だ。好きなアニメに関わるものなら
何でもほしいというファンが多いためか、CD不況といわれるなかでも安定したセールスを誇っている。
では、今売れているアニメ関連のCDはどんなものがあるのか。10月度のチャートから、アニメ
(一部特撮を含む)関連のシングルとアルバムを5作ずつ抜き出したのが下の表だ。
※
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20081104/1020590/09_px600.jpg 一口にアニメと言っても、テレビでは朝に放送される幼児(とその母親)向けの特撮ヒーローもの、
夕方に放送される小中学生向け、そして深夜に放送される青年〜大人向け、と様々なタイプがある。
さらにはファミリー向けのアニメ映画も多い。
そして、それらの音楽作品は、本編中に流れるスタンダード曲(上記表シングル1位〜3位、
アルバム2位の主題歌集)のみならず、主題歌を別の声優が歌ったバージョン(アルバム3位)、
声優がキャラクターになりきって歌うアニメ本編外の楽曲(シングル4位&5位)、そしてアニメから
人気が出た声優のオリジナル作(シングル2位&次点)というように様々な作品が出ていて、
そのいずれもがチャートの上位に入ってくるのだ。
ボーカル作品以外でも、サウンドトラックCD(アルバム1位&5位&次点)、本編のサイドストーリーや
登場人物の座談会(!)を収録したドラマCD (アルバム4位)、さらには声優が呼びかけたり、
羊を数えて眠りを誘ったりするトークCDも人気を集める。このすさまじいバリエーションはJ-POPや
演歌、ヒップホップなど他のジャンルでは考えられないだろう。
CDだけでもこれだけの種類が用意されているのだから、本やグッズなどを含めれば、さらに
膨大な数の関連商品が販売されていることは自明。通常のCDショップが閑散としている平日の
昼間でも、街のアニメイトでは大人も子供もレジの前でごった返しているという状況にも納得がいく。
■ “ポニョ”は映画公開以降3カ月にわたりトップ10入り
このようなアニメ界において、突出した売り上げなのがジブリ映画主題歌の「崖の上のポニョ」。
7月の映画公開以降3カ月にわたって週間トップ10 をキープ、累計30万枚を突破している。ちなみに、
音源パッケージが1種類しか発売されていない08年のシングルで、30万枚を超えたヒット作は
青山テルマfeat.SoulJa「そばにいるね」、Mr.Children「HANABI」「GIFT」、そして“ポニョ”の4作のみである。
ここから、最近のシングルヒットの多くは、1人のファンが何枚も種類違いを購入することや、
映像特典のDVD付シングルで支えられているということ、そして、“ポニョ”の歌力のすごさに
気付かされる(ちなみに、カラオケランキングではTOP3レベルを継続中)。
■ ヒットの鍵となっているのは、May'n
また、シングル3位とアルバム1位(&次点)に『マクロスF』関連作品がランクインしているが、これらの
ヒットの鍵となっているのは、May'n (メイン)だ。彼女は、かつてR&Bシンガー・中林芽依として
活動していたが、チャートのTOP100にも入らず、しばらく休業していたが、華やかで響きのある歌声で
劇中で復活、それを経て現実のチャートも席巻したというのが興味深い。なお、シングル5位の
『テニスの王子様』シリーズでは、他にも「バレンタイン・キッス」「淋しい熱帯魚」「バナナの涙」などを
カバーしており、“男が妖しげな低音で歌えば必ずウケる”という選曲センスに脱帽!
以上のように、アニメチャートを読み解くと、現在のアニメ作品のバイタリティーのすごさ、
そして文字通り“音を楽しんでいる”という原点にあらためて感心させられる。
日経トレンディネット
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20081104/1020590/