「CEDEC 2008」開催1日目となる9月9日(火)、『ゼビウス』や『ドルアーガの塔』などの開発者として
知られる遠藤雅伸氏と、多くの携帯電話用アプリを手がけるジー・モードの宮路武社長による
「10年前のモバイルゲーム、10年後のモバイルゲーム」と題したセッションが行われた。
ちなみにタイトルを「10年前の〜」としたのは、iモードが誕生し実質的な「モバイルゲーム」が
世に送り出されてから今年でちょうど10年目になるからだという。
さすがに両氏とも、モバイルゲーム黎明期から第一線で活躍してきただけあって、前半部では
当時を振り返って、様々な苦労話やエピソードなどを披露。「iアプリが生まれたばかりの頃なんて、
プログラムのサイズ上限が10KBとかだった。ここまで何もできないと、逆にプログラムなんか
1日で作れちゃう。みんなヒマな時にモバイルゲームを作ったりしてましたね(笑)」(遠藤氏)とか、
「昔は“パケホーダイ”なんてなかったから、いかに通信料を抑えるかがポイントだった。
『サムライロマネスク』(iアプリ初のオンラインRPG)なんて、クリアするまでに20万円近くかかって
ましたよ」(宮路氏)とか、生々しいエピソードも多数飛び出し、そのたびに会場からは笑い声が
起こっていた。
ただし両氏は、現在のモバイル市場について、次のような問題点を指摘している。ひとつは、
料金プランが変わったことで、端末の買い替えサイクルが遅くなり、ダウンロード型アプリの
売上が鈍っているということ。またアプリ単体での展開は壁にぶつかりつつあり、今後は
Webサイトやサービスなどと絡めて展開していかないと厳しい状態になっていることが2つめの
問題点として挙げられた。
とは言え、これらの問題点を考慮しても、宮路氏は今後のモバイルゲームについて「10年、
20年たてば、家庭用ゲームを抜いていくのは確実」と語る。
宮路氏はさらに、今後モバイルゲームの開発に求められるものとして「+CCE」という言葉を
挙げている。これはジー・モードが今年の社内スローガンとして掲げているもので、C=カジュアル、
C=コミュニケーション、E=エンタテインメントの3要素を、積極的に盛り込んでいこうという意味。
一方、モバイルゲームと家庭用ゲームの大きな違いについて、遠藤氏は「いつも持っていて、通信との
親和性が高い」という2点を挙げ、今後はこの部分をどれだけ活かせるかがポイントになるとしている。
一方で、家庭用ゲームのような“ゲーム性”は、モバイルでは必ずしも必須ではないのだとか。
「例えば射的をして、的にあたると占いをしてもらえる。たったそれだけのゲームでも、女の子には
大受けしたりする。80年代からゲームを遊んでいるような人は、アーケードゲームこそがゲームの
ヒエラルキーの頂点だと思っているかもしれないけれど、そういう人はモバイルの開発には向かない。
“ゲーム性”というものをしっかり理解していて、その上で固定観念にとらわれず、時には“ゲーム性”を
捨て去れる人。そういう柔軟な思考を持った開発者が、モバイルゲームでは必要になる」(遠藤氏)。
また遠藤氏は、モバイルゲームを「チャレンジャブルな市場」だとも語っている。「たとえば新しい
ゲームを考えた時に、モバイルゲームなら企画書1枚だけで話を通せる。これが家庭用ゲームだったら
そうはいかない」(遠藤氏)。悪く言えば“いいかげんなお金の出し方”がまかり通ってしまうと
いうことだが、クリエイターが思う存分力を振るうことができるという点で、家庭用では開拓され
尽くしてしまった魅力が、モバイルゲームにはまだまだ眠っているとのことだった。
ジーパラドットコム(一部略)
http://www.gpara.com/article/cms_show.php?c_id=9334&c_num=56