ゲーム開発者向けのイベント「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2008(CEDEC 2008)」が
9月9日、開幕した。10周年を記念して開かれたパネルディスカッションでは、「スペースインベーダー」の
生みの親であるドリームス代表取締役の西角友宏氏、「パックマン」の開発者で、現在は東京工業大学
芸術学部ゲームコースで教鞭をとっている岩谷徹氏、米Game Developers Conference(GDC:
ゲーム開発者会議)の主観であるJamil Moledina氏が、ゲーム開発の肝について議論した。
なお、司会は「高橋名人」として知られるハドソン宣伝部の高橋利幸氏が務めた。
スペースインベーダーの開発は、ブロック崩しゲームを見て衝撃を受けたことがきっかけだったという。
単純だが何度やっても面白いというゲーム性に、当時の西角氏は惹き込まれた。「早くなんとかして
追い越そうと思った。このゲームの本質を生かして、形をつければもっと面白いと感じた」(西角氏)
こうして生まれたスペースインベーダーは、近づいてくる敵の群れを銃で撃って攻撃し、陣地内に
入らないように守るというものだ。高橋氏は「それまでのゲームで、敵が攻撃してくるというものは
なかった」とその革新性を評価。Moledina氏も、「初めてゲームにフィクションが適用されたと感じた。
『悪い敵から自分たちを守る』というストーリーが感じられた。技術的な革新だけでなく、そこに
楽しさがあったことで、いまでも記憶されるゲームになったのだと思う」と話し、米国にも大きな
影響を与えたゲームだとした。
岩谷氏はパックマンの狙いについて、「当時、ゲームを遊ぶ場所は男の人のもので、女性は
立ち寄らなかった。女性やカップルが楽しめるゲームを作ろうと考えた」と話す。パックマンという
名前についても、「失礼な話だが女性は『甘いものは別腹』というくらいなので『食べる』にちなんだ」と、
女性を意識して開発したことを明かした。
ゲーム自体は世間の批判を浴びることも多かった。岩谷氏は「ゲームを作るたびに世間から
攻撃された。ゲームセンターも不良の溜まり場だと言われ、楽しいものを作っているはずなのに
何で認めてくれないんだろうという思いだった」と語る。
そのときに支えになったのは、ゲームに対する愛情や使命感だという。「男女関係に例えると、
『いいな』と思った子をだんだん好きになって、付きあううちに愛情が芽生えて、『この子は自分が
守るぞ』という気持ちが育っていく。それは短期間にはならない。じっくりと相手の気持ちをとらえて
『結婚するんだ』という気持ちになると、いろんなことに挑戦して(苦難も)超えられる」(岩谷氏)
若手の開発者に期待することとして、西角氏、岩谷氏、高橋氏の3名が口をそろえたのが、
「遊びの本質をとらえたゲーム」の開発だ。
Moledina氏は海外でも通用する日本のゲームの共通点として、映画のような美しさと主題の簡潔さを
兼ね備えていることを挙げる。「ハリウッドが世界的にやっていることでもあるが、視覚的には
挑発的で、それでもテーマはシンプルなものが世界的に成功する。日本の開発者は熱心である
あまりに間違ってしまう。たくさんのテーマを表現したいと思ってしまうと、カルト的になってしまい、
商業的に大きなインパクトを与えられない」(Moledina 氏)
岩谷氏も、「人が面白いと思うことには、古典的な部分がある。芸術作品や文化作品、映画でも、
昔のものを見て研究している。(今のゲーム開発者は)昔のシンプルなゲームをちゃんとプレイして
研究してるのか、という思いがある。隠された面白さや、当時の時代背景における位置づけなどを
研究することで、普遍的なものがみえてくるのではないか。そうすれば、現在のハードウェア上で、
どう生かしたらいいかというヒントが見えてくるだろう」とし、原点に戻る必要性を訴えた。
GameSpot Japan(一部抜粋)
http://japan.gamespot.com/news/story/0,3800076565,20380109,00.htm