未成年の凶悪犯罪が起きるとしばしば指摘されるのが暴力表現を含むゲームとの関連性だ。
果たしてそうした推測は正しいのだろうか。また自主規制の仕組みであるレーティングはきちんと
機能しているのだろうか。コンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)が8月7日に
発表した「テレビゲームとレーティングの社会受容に関する調査報告書」を元に考えてみたい。
■CEROレーティングの仕組み
この調査報告書は、CEROが研究者などで構成される「ビデオゲームレーティング研究会」に
委託して、1年間かけてゲームレーティングの社会への定着状況を調べた結果をまとめている
(筆者もこの研究会に属して調査・執筆した)。
どのレーティングにするかは企業からの申告式になっていて、表現として問題があると思われる
部分の描写を動画で撮影して、複数の審査員がチェックを行い判定する仕組みになっている。
映像だけでなく文章などもチェックの対象となる。評価の系統には性表現、暴力表現、
反社会的行為表現、言語・思想関連表現の4種類がある。
それぞれの年齢区分にレーティングする根拠となる基準は、一般に公開されていない。これは、
評価軸が時代によって大きく変化するためだ。公開することでその文言だけが一人歩きして、
教条的になってしまうことを避ける必要があるという考え方だ。
■意外なほど少ないゲームへのクレーム
今回の調査のうち、研究会メンバーも驚いた結果になったものを紹介しよう。
「アンケート調査」では、テレビゲームへの苦情について、ゲーム以外のメディアへの苦情との比較を
行ったのだが、その結果から見えてきたのは、意外なほどゲームへの苦情が少ないという実態だ。
苦情全体に占めるメディアへの苦情件数は、1位がインターネットで0.69%、2位が携帯電話で0.64%、
3位がテレビで0.24%だった。以下、雑誌(0.21%)、ビデオ(0.11%)と続く。テレビゲームは6番目で
0.06%だ。しかも、レーティングに対してのクレームがあったと回答した団体は、1団体しかなかった。
このデータをどう解釈すべきかについては、研究会メンバーでもだいぶ議論した。この章を執筆した
佐々木氏は、ゲームへのクレームが少ないことについて2つの可能性を指摘している。
1つは「レーティングが適切に行われている」という分析だ。「寄せられた自由記述には、『テレビゲームの
レーティングは他のメディアと比べて厳しすぎる』という指摘があったように、レーティングは他の
メディアと比べると厳密に行われており、その妥当性が高いといえるかもしれない。
もう1つは、「レーティングについての認識の低さ」である。CEROがレーティングについての
アンケートを行った団体のうち58.5%は、レーティング自体を知らなかったと回答している。
IT-PLUS(一部略)
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITew000029082008 続き
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