本県出身の漫画家への注目度がいま、高まっている。
4月スタートの民放テレビドラマ「おせん」の原作者は
横手市大森町出身のきくち正太さん。
青年コミック「イブニング」での同名の連載は、
ガラスペンで描いた和風デフォルメの画風で高い人気を誇る。
同じ4月には、由利本荘市出身のクリスタルな洋介(本名佐藤洋介)さんの
ギャグ漫画「オニデレ」が「少年サンデー」に連載スタート。
また、秋田市在住の“主婦漫画家”佐東白狐さんの佐竹史料館を舞台にした
「九十九(つくも)鬼」が季刊誌「コミック怪」に掲載された。
それぞれ作品構成や描画の魅力が認められての快進撃であり、
一層のエールを送りたい。
本県ゆかりの漫画家は数多い。
「釣りキチ三平」の矢口高雄さん(横手市増田町)、「味いちもんめ」の倉田よしみさん(秋田市)、
「俺節」や「編集王」のほか、映画にもなった「同じ月を見ている」の土田世紀さん(横手市大森町)、
「銀牙〜流れ星 銀〜」や続編「銀牙伝説WEED」の高橋よしひろさん(東成瀬村)。
「犬のジュース屋さんZ」などギャグ漫画のおおひなたごうさん(羽後町)もそうだ。
全員、単行本も販売されている売れっ子である。
彼らが古里への思いを込めて描いた作品も多い。
「釣りキチ―」はもちろん矢口さんが育った増田町狙半内が主たる舞台。
日本海中部地震の津波被害を題材にした「激濤(げきとう)―マグニチュード7・7」では、
男鹿半島の海岸などを忠実に描きながら、釣り人の救命胴衣着用の重要性を説いた。
倉田さんは、秋田市の建都400年記念事業として発刊された
「青山くんの夏休み」で作画を担当し秋田藩の成り立ちを分かりやすく解説。
高橋さんは「銀牙」シリーズで「愛と正義」をテーマに奥羽山脈のマタギ犬を描き、
そのアニメは韓国や北欧などに輸出され、「Manga」文化の拡大に一役買った。
本県出身漫画家らの魅力発信拠点となっているのが、横手市の増田まんが美術館だ。
1995年に旧増田町が全国初の漫画専門美術館として開設。
県人作家を中心に、国内外の漫画家の原画や作品を収蔵、展示。
手塚治虫、石ノ森章太郎らビッグネームを含む国内作家の企画展、
県出身漫画家による地元小中学校での漫画教室などを展開してきた。
広島市や和歌山県有田川町などのまんが図書館開設、
京都精華大のマンガ学部創設といった後発の動きは、
いち早く文化として漫画を広めた同美術館の先見性、先進性を示している。
新たな試みとして今年から、県出身漫画家を1人ずつ特集する
リレー企画展を冬場にスタートさせた同美術館。
なじみのある作家によって描かれた世界が、
「ポップカルチャー」として夢や楽しさを提供する場となることを楽しみにしたい。
秋田魁新報社
http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20080601az 横手市増田まんが美術館
http://manga-museum.srv7.biz/