アカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされた『ペルセポリス』が、政情不安定な
レバノンで上映禁止となった。
この作品は、共同監督であるマルジャン・サトラピが、1979年のイラン革命下で育った経験を
描いた自叙伝コミックを映画化したフランス映画だ。
今回レバノン当局は、本作が「ヒズボラ」として知られる反レバノン政権の新イラン勢力を刺激し、
政治的な混乱状態を悪化させる恐れがあるとし、上映を禁止した。レバノンは、ここ数カ月に渡り、
西側が支持する政府側勢力と、シリアやイランが支持する反対派勢力との間で膠着状態にある。
本作の中東圏での配給権を持つ、アラブ首長国連邦の配給会社フロント・ロウ・エンタテインメントの
ジャンルカ・チャクラ代表は、「レバノン当局は、いかなる摩擦も避け、波風を立てたくないと
考えているが、DVD販売の望みは捨てていない」と語る。アラブ首長国連邦ではすでに検閲を
通過している。
当時の苦しさを増す人々の生活を、皮肉と風刺の効いた視点で描いた本作は、昨年のカンヌ
映画祭でプレミア上映され、審査員特別賞を受賞。それ以来、イラン当局関係者たちの批判に
さらされてきた。
イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領の文化顧問であるマハディ・コルホーは、当時、
この受賞をフランスの「イスラム恐怖症」として批判。政府関連機関ファラビ・シネマ・ファウン
デーションのアリレザ・レザダッド代表は、本作が「イスラム革命の成果という現実から乖離した
映画」と批判する文書を発行している。
一方で、本作は最近、イランの首都テヘランにあるふたつの文化センターで上映された。その
ひとつであるラザナー文化センターの広報担当は、「この上映会の目的は、メディアによって
作り上げられた映画の誤った幻想を取り除くことにあります。映画が上映されなければ、誤解は
膨らんでいくばかり。結局のところ、映画は映画。政治的環境に束縛されるべきではないのです」
とコメントしている。
レバノンでは05年にも、ジョージ・クルーニー扮するベイルートのCIAエージェントが主役の
スティーヴン・ギャガン監督作品『シリアナ』で、ヒズボラに焦点を当てたシーンが問題となり、
上映禁止になっている。
Variety Japan
http://www.varietyjapan.com/news/movie/u3eqp3000003hx3p.html ペルセポリス
http://persepolis-movie.jp/