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「もえがく★5」は、アニメ部分と、タレントが出演するスタジオ部分が
合体した十五分番組。月曜から金曜まで同じストーリーだが、物語に登場
する外国人オタクの国籍が曜日ごとに違う。月曜は米国、火曜は韓国、
水曜はスペイン、木曜は中国、金曜はフランス。主人公・もえと外国人の
会話を通じて、五カ国語のあいさつや、数の数え方などを学ぶ。
日曜深夜には五カ国語分を一挙放送する。
アニメの後のスタジオ部分では、アイドル声優・平野綾が、その日のアニ
メに出てきた国の子供と、言葉を練習する。
アニメ部分は、フィギュア(キャラクターの模型)の入手方法、ゲーム
ソフトの抱き合わせ販売、役に立たないアイドルグッズなど、秋葉原文
化のハウツーものとしても楽しめる。
NHKの語学番組に比べるとノリは軽いが、舞台裏は苦労の連続。編成
営業局の高崎邦雄専任局次長が明かす。
「曜日ごとに、わずかな部分だけ差し替えればいいと思っていたんです
が…。『足』は、英語ではレッグとフットの二つがあるし、フランス語
は両目と片目では全く呼び方が違う。スペイン語の『またね』は、次
いつ会うのかで言い回しが違う。どの言葉が適切なのか議論になって、
予想以上に大変です」。言葉は文化と密接につながっていて、五カ国語
に直訳すればいいわけではない。「昔、(極北の先住民)イヌイットに
は雪の呼び方が何種類もあると聞いたのを思い出しましたよ」(高崎専
任局次長)
「もえがく★5」の原作はパソコンの英語学習ソフトで、ユーザーは主
に大人の男性だが、番組は小学生がメーンターゲット。小杉雅博編成部
長は、「本格的な勉強は、その後やってもらえばいい。『英語ではハロ
ーでも、中国語ではニイハオか。へ〜』と子供たちが世界や言葉に興味
を持ってくれれば、ただ、『アニメを見て面白かった』よりも、いい」
と話す。
同局は開局以来、さまざまな語学番組を作ってきた。二〇〇二年の第
一弾「もし模試TV・TOEIC TEST」は、当時はBSデジタ
ルだけの特長だった双方向機能を生かし、リモコンでTOEICのリ
スニング模試を受けられる番組だった。
放送中の「GO!GO!EIGO!」(月−金曜午後7時15分)は、
赤いふんどし姿のお兄さんら奇抜なキャラクターも登場する未就学児
向けの英語番組。「很好(ヘンハオ)!しゃべっチャイナ!!」
(金曜午後7時30分)は、フジのドラマ「ライフ」でブレークした
北乃きいが、中国語を使いながら上海を旅する「語学」と「紀行」の
合体型。
小杉部長は、同局に語学番組が多い理由を、こう説明する。
「開局当時、BSデジタルに何が求められているのか研究した結果、
ターゲットを絞り、意志を持って見てもらえる番組、見た後に何か
したくなる番組を作ることにした。教育、資格、そして、視聴率競
争で地上波から消えた子供番組は、編成の柱です」
萌(も)え系語学番組「もえがく★5」も、ウケ狙いではなく、
「子供」「教育」の二つのキーワードを合わせた「大義ある番組」
(小杉部長)との位置づけだ。語学以外にも、ウオーキング、ヨガ
、ラジコン入門など、NHK教育の民放版のような番組が多い。
「地上波の方が、お金をいっぱいかけて、面白いのはわかっている
ので、うちは、ちゃんと目的を持って見てもらえる番組をやってい
きたい。体の健康の次は心の健康。今、いろいろと企画を考えてい
ます」(小杉部長)