「銀河英雄伝説」など大河SFで知られる田中芳樹さんには珍しい、現代劇のミステリーが
「薬師寺涼子の怪奇事件簿」だ。デビュー30周年を迎える田中さんに、最新作「水妖日に
ご用心」の裏側と、小説への思いを聞いた。
http://mainichi.jp/enta/mantan/news/images/20080106mog00m200012000p_size5.jpg ▲たなか・よしき=52年生まれ。78年に幻影城新人賞を受賞してデビュー。代
表作は、星雲賞(長篇部門)受賞作の「銀河英雄伝説」や「アルスラーン戦記」「創竜伝」
など多数。
||作品誕生のきっかけは
書き下ろしを依頼され、雑談をしていると、「今はミステリーが隆盛だけど、犯人を捕まえ
るときに悩む探偵ものが多い」と聞かされたんです。そこで、「犯人を袋だたきにして、ざまぁ
みろ」という作品はどうだろう?
でも男性だと愛きょうがないから、か弱い女性が相手をふんづけて高笑いするのはいいかも、
と思ったんです。当時、中国を舞台にした真面目な作品を書いていて“ストレス”がたまって
いたのもあったので、どーんとはじけて笑えるものが書きたかったんですよ。
||女性の主人公ですね
「薬師寺涼子……」シリーズは、女性の読者に気持ちよく読んでもらえるよう、女性の心理
描写、行動原理などを踏まえて書いています。私も男ですから、男の視点になりやすいので、
そこは気を遣っています。泉田準一郎の視点で書いているのもワンクッション置きたかった
からです。続くと思わなかったですが、女性ファンから「気持ち良く読めた」と言ってもらえて
自信が付きました。それでも試行錯誤の連続ですね。
||垣野内成美さんのイラストは
涼子は、プロポーションも抜群、ミニスカートをはいて脚を見せびらかすキャラクターですが、
清潔感のある美人です。男性だとどうしても「男の目」が出てしまうので、私が元々ファンでも
あうる垣野内さんにお願いしたんです。そのときに「垣野内さんがイラストをやってくれないん
だったたら書けない」と言ってね。毎回、垣野内さんの絵が仕上がってくるのを見るときは、
ワクワクします。
||最新作でも、「マンガばかり読んでいる外務大臣」とか、さまざまな話題を茶目っ気たっぷり
に笑い飛ばしています
特にモデルがだれという訳でないんですが(笑)。「いい年して遊ぶな」と言われるんですけど、
思いっきり楽しんでいます。ネタは自然と出てくるんですよ。むしろ現実の「えぐみ」を取る工夫を
していますが、その工夫が楽しいですね。新聞を読んだり、ニュースを見たらネタは出てきます。
「入門編」としての新聞の存在は、大きいですよ。ただ、経済だけはなぜか興味がなくて……。
一時期、興味を持つきっかけに株を買ってみたのですが、全然だめでした。その代わりに新聞に
載っている企業プロジェクトの特集を読んだりしています。
まあ、経済と恋愛は、事件がからまないと本質的に興味がないですからねぇ。
||最新作の筆の乗りは?
暴れるときとうまくいくときの両方がありますが、今回は大変でした。涼子は、“親”の思う通りに
はなかなか動いてくれない。作品を書いているときは、新人の映画監督の気持ちなんですよ。
大物女優の機嫌を損ねないようにするんですが、涼子が「私には、私の演技があるの」と言うん
です。お客さんは大物女優を目当てに来ているし、大変ですよ。
>>2へ続く
http://mainichi.jp/enta/mantan/news/20080106mog00m200014000c.html ・関連
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