「風の国のナウシカ」からスタートし、今や世界に名だたるアニメ製作会社となったスタジオジブリ。
宮崎駿、高畑勲の両監督と共にプロデューサーとして歩んできた鈴木敏夫さんに
後継者問題や今後のスタジオジブリについて語ってもらった。
−−現在のスタジオジブリの状況を教えてください
鈴木 新作「崖の上のポニョ」を08年夏公開に向けて鋭意製作中というところです。
企画スタートから3年がたちましたがいつもと同じペースで作れていますね。
−−宮崎監督の意欲は
鈴木 宮(崎)さんは退くことを知らない人。「ハウルの動く城」で引退するなんてことも言われましたが、
自分からやめるなんて言うことはまずないので、ものすごく元気で、今はとにかく「ポニョ」に夢中という感じですよ。
−−06年には宮崎監督の長男の吾朗さんが監督デビューしましたが、プロデューサーとして後継者については考えていますか
鈴木 新しい監督が出てきたらその人は新しいプロデューサーと組んで仕事をするべきだと思うんです。
だから監督も大切だけど、僕の後継者も必要だと考えているんです。新しいジブリを動かす新しいプロデューサーですね。
一応、候補も考えてはいます。彼らが育ったら、僕らはその瞬間に旧守派となるわけですが、それでいいんです。
新しい場所から新しいものが生まれていくほうがいい。ディズニーだって、ウォルト・ディズニーが亡くなってから
大きく作風が変わったんですから。もちろん、なかなか簡単にできることでもないのですが。
−−今後のジブリはどのような作品を作っていく予定ですか。テレビへの進出などは
鈴木 ジブリには、長編劇場版アニメ用のスタッフしかいないので、劇場版アニメしか作れないんですよ。
あくまで目安ですが、原画マンは5秒のカットを描くのに一週間かかります。これを1年間続けたら、
一人の原画マンが描ける量というのは2時間の作品中4分しかない。でもこれがジブリのクオリティー。
このやり方だと、毎週納品に追われるテレビはとてもじゃないけどできないし、そもそも作り方の前提が違います。
それに私自身がやっぱり、劇場版アニメ、つまり映画の方が面白いんですよ。
−−ジブリの若手スタッフはどう育成されているのですか
鈴木 2年に1度、公募でスタッフを募り、それぞれの部署の責任者が採用を決めます。
その後、カリキュラムを組んで、ジブリの仕組みや基礎知識を覚えてもらうという形で育成していきます。
こうなるとプロデューサーと作家という関係ではなく、社長と部下という関係になるので、
事あるごとにいろいろな話はしていますよ。年齢はバラバラで、制作部の人間には18歳で入ってきて、
まだ20歳という若いのもいます。力さえあれば年齢なんて関係ないんですよ。自分では相当面白い場所を
提供しているつもりなので、それをどう生かすかは彼ら次第。ただ、宮さんや高畑さんに逆らうというか、
正面切って戦おうとする若者はさすがにいない。
−−どのような若手を育てたいですか
鈴木 アニメーターというのは職人です。職人というのはどこまで高いレベルを保って仕事をできるかということが
大切なんです。同じ仕事を高いレベルでやり続けることが職人として育つと言うこと。アニメーターなら、観察して描く。
これを繰り返すしかない。人の動きも何かもです。若いときに腕を磨くことに没頭できる環境があれば理想的ですね。
基本さえできていれば何でもできるようになりますから。逃げ出さずにやり続けてほしいです。
まんたんウェブ
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