緊急特集「よみがえれ! 日本サッカー」(14)
城福浩が考察する選手育成の未来 後編
アンダー世代の代表監督として2007年U−17W杯で日本を指揮し、FC東京や甲府など、Jリーグクラブを率いてきた城福浩氏が、
日本サッカーの育成の課題と今後の方針を考察する。これから日本人指導者は何を意識していくべきなのか。
元U-17監督城福浩が語る 「日本の停滞とアジアの進化。その理由」
Jリーグ創設から20年が経過して、100メートル走でいえば13秒ぐらいだった日本サッカーは、10秒フラットを記録できるところまでレベルアップしてきた。
しかし今は、9秒台の壁を前に、足踏みをしている状態だと私は思っている。
では、その壁を越えていくためにどうするべきか。
これからの指導者は、日本サッカー協会が指針を示してくれるのを待つのではなく、指導者自身がもっと自分で考え、学び、当事者意識を持って指導にあたっていかなければならない。
そこに日本が9秒9にたどり着くためのカギが潜んでいると思う。
具体的には、さまざまな指導者の方々が、小、中、高、大、町クラブ、Jクラブユースなど、いろいろな場所で指導されていると思うが、
それぞれが自らのこだわり、いわば「マイ・フェイバリット」(お気に入り)を大事にして、それを徹底して突き詰めてほしい。
そのマイ・フェイバリットは、バルセロナのように徹底してつなぐ技術や戦術知識を磨くことでもいいし、ドリブル突破の技術を叩き込むことでもいい。
堅固な守備を構築することでもいい。あるいは、徹底的に走力を鍛えて、どんなチームにも走り勝つサッカーを追求してもいい。
もちろん、サッカーの本質をしっかりと理解するのが大前提だが、右向け右で、全員が同じ紋切り型の指導をする必要なんてない。
考えに考え抜いて何かを追求していけば、日本にそれだけ多様なクラブができるし、それだけ多様な選手が生まれてくる。
その際、大事なことは、「何かを追求すれば、失う何かがある」という自覚を持つこと。
マイ・フェイバリットを研ぎ澄まそうとすれば、それとは異なる才能の持ち主を潰してしまう可能性がある――。
それを肝に銘じて指導するのと、無自覚なのとでは大きく違う。もし自覚していれば、
追求するものとは真逆の才能を持つ選手を、異分子として意図的にチームに組み込むという発想も生まれてくる。
たとえば、バルセロナのカンテラ(下部組織)は、一貫してポゼッションに関する方法論や技術、出し手と受け手の意識を選手に植えつける。
何年にもわたって徹底するからシャビ、イニエスタ、ブスケッツといった、バルサスタイルへの戦術理解度が高く、トップ・オブ・トップの技術を備えた選手たちが次々と育ってくる。
ただし、何かを徹底することで、特定のスペシャリストを輩出することはできるが、そのぶん失っている何かもある。
つまり、バルセロナはシャビのような選手が育ってきても、ゴールを量産する個性的なアタッカーを育てることは難しい。
そのことはバルセロナもよく分かっているから、トップチームはネイマールやスアレス、過去にはイブラヒモビッチやロナウジーニョ、アンリら、
超一流のアタッカーを他クラブから引っ張ってきて補っている。14歳でバルセロナに入ったメッシも、アルゼンチン生まれであることを考えると、外から連れてきた選手と言えるだろう。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150301-00010004-sportiva-socc webスポルティーバ 3月1日(日)13時52分配信