「たのしめてるか。」−選手たちが着用する練習着の左胸には、ベルマーレのエンブレムがついている。そして、そのエンブレムの下に
入っている「たのしめてるか。」の7文字。問いかけられているかのように並ぶその言葉は、今年新たに誕生したクラブのスローガンである。
湘南ベルマーレは総合型地域スポーツクラブである。常に結果を求められる競技スポーツと、多くの人がスポーツに触れるための
レジャースポーツの両輪から成り立つ。その二つに共通する価値観は何だろうか、日々自分たちに言い聞かせられるような言葉とは
何だろうかと想(おも)いを巡らせた。
大原則として、スポーツとは楽しいものである。レジャースポーツは、言うまでもなく楽しむためのもの、人生を豊かにするものである。
そして競技スポーツの場合も、高い緊張感の中でも無心になること、没頭することというのは楽しさの最上級と言える。そして、自分の
すべてをささげるようにプレーに没頭した時にこそ、見る人の心を揺さぶるのではないだろうか。
〓貴裁(チョウキジェ)監督はよく「楽しんでやれよ」と選手に声をかける。それは楽な気持ちでやれよ、という意味合いではない。
真の楽しさというのは、真剣に取り組むからこそ得られるんだということを伝えている。
当然だが、勝敗がつくスポーツには時に苦しいこともある。24時間365日、常に周囲から比較され、評価されながら生きている選手たち
は思い通りにいかないことのほうが多いだろう。それでも、「感動空間を提供する」という使命のあるわれわれ自身が、まず心から楽しんで
いるか、これが重要なのだ。
スローガンは自分たちを律する言葉である。苦しい時には左胸を見て、「たのしめてるか。」に立ち返る。そんな意味を込めて作られた
言葉である。
2015シーズン、湘南ベルマーレは2年ぶりにJ1の舞台で戦う。昨季、史上最速でJ1に昇格し、独走でJ2を制した。
監督は始動日のミーティングでこう言った。「二兎(にと)を追う者は一兎をも得ずではなくて、二兎を追っていくぞ。内容と結果だ。J1で
湘南スタイルを絶対に通用させるんだという気概が必要。常識を打ち破ることに価値がある。湘南のサッカーで日本のサッカーのスタンダード
に新しい風を吹き込もう。そしてこのチームが本当に生きてるんだということを証明しよう」
この言葉にワクワクしなかった選手はいないだろう。練習は厳しい。驚くほどに。しかし選手たちの充実した表情を見れば、いかに
「楽しんでいるか」が分かる。心躍るようなシーンの訪れを楽しみにしてほしい。
ソース(東京新聞 「遠藤さちえのベルマーレだより」、湘南ベルマーレ広報)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150208/CK2015020802000157.html 写真=2日から16日までトルコ・アンタルヤでキャンプ中のベルマーレ。砂浜でトレーニングに励む(湘南ベルマーレ提供)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150208/images/PK2015020802100058_size0.jpg