アカデミー賞やベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞するなど、スタジオ・ジブリ作品は海外からの評価も高いのですが、
イギリスの新聞The Economistはジブリ作品「かぐや姫の物語」について
「国際舞台に上る最後のジブリ作品になるかもしれない」
として作品の善しあし以外に国際的なアニメ状況全体の問題を指摘しています。
Japanese animation: The Tale of Studio Ghibli | The Economist
http://www.economist.com/blogs/prospero/2014/12/japanese-animation スタジオ・ジブリは1985年に設立してから数々のアニメーションを生み出しており、2001年に公開された「千と千尋の神隠し」は日本歴代興行収入第1位になるだけではなく、
アメリカ・アカデミー賞も受賞しました。ハリウッドの流行を全く無視した手描き風で2Dのジブリアニメが評価されることによって、
アメリカでこれまで信じられていた「アニメーションは子どものものである」という考え方は打ち破られ、
ジブリはディズニーアニメーションに対する1つの答えを出している、とThe Economistは評しています。
また、当時「となりのトトロ」と同時上映された「火垂るの墓」についてエミー賞にもノミネートされたアメリカ合衆国の映画評論家ロジャー・イーバート氏は
「『映像』ではなく『感覚』の意味で、過去のどの作品よりもリアルなアニメーションだ」
と語っています。
しかし「かぐや姫の物語」や「思い出のマーニー」について、これらの作品が国際アニメシーンの舞台に上る最後の作品になるかもしれない、とThe Economist。
「作品に問題がある」という意味ではなく、アニメ全体の国際的な状況に問題があることを指摘しました。
火垂るの墓を監督した高畑勲氏による「かぐや姫の物語」について、The Economistは「天上人のファンタジーと民族的な寓話、そして成長物語とロマンスをブレンドした物語」であると説明。
かぐや姫の物語は近年のディズニー作品に見られるテイストや、これまでのスタジオジブリ作品とも全く異なっていて、
「水彩画の絵本のような美しいタッチが印象的で、キャラクターの描き方はスケッチ調、全体に余白が多い作品です。
コンピューターで作られたオールド加工を含めて、それらのビジュアル要素は視聴者にアーティストが手作業で作品を作ったような印象を持たせ、魅力的に映る」
と評価しています。
かぐや姫の物語の予告編は以下から見ることができます。
【ジブリ新作】 かぐや姫の物語 6分映像 / "Kaguya-hime no Monogatari" 6min Official Full Trailer - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=daGOgPGjaZM また、その他の海外メディアもかぐや姫の物語に対して肯定的な評価をしており、
The Japan Timesは
「水彩画のような繊細な筆遣いとダイナミックで大胆なストロークの組み合わせは、しっかり背景が描き込まれた他のジブリ作品に比べて物足りないと、
始めは思えるかもしれない。しかし物語が進むにつれて、この印象派のようなスタイルが我々人間に共通する望みや恐れ、
夢などを暗示していることに気づいた」
と述べました。
しかし、一方で「かぐや姫の物語」は公開前から西洋の視聴者に受け入れられない可能性をはらんでいました。
予告編が公開された時に映画サイトで「アニメーションになる前の未完成のストーリーボードのようだ」と示唆されるなど、
演出が特殊ゆえにディズニーを始めとする均質化されたアニメーションに慣れた人たちには異質に映ったのです。
また、かぐや姫の物語には「姫の犯した罪と罰。」というキャッチコピーが付けられ、映画が大人の視聴者を想定していたにも関わらず、
当然のようにディズニーによって子どもの視聴者を前提に英語版が作られてしまった、とのこと。
西洋の視聴者が持つ「主流」の力によって、素晴らしいアニメーション作品が消えてしまっても不思議ではない、とThe Economistは語っています。
2014年12月31日 8時0分 GIGAZINE(ギガジン)
http://news.livedoor.com/lite/article_detail/9630230/