2015年は23年目を迎えるJリーグの“改革元年”になりそうだ。
2004年以来11年ぶりに2ステージ制が復活するだけでなく、ポストシーズンにトーナメント形式の「チャンピオンシップ」を導入。
欧州の主要リーグが1ステージ制であることなどから「世界基準からの逸脱だ」と反対論も巻き起こったが、
Jリーグは「優勝が決まるヤマ場が増えるメリットは大きい」とし、人気回復やスポンサー料の増大を見込んで導入を決めた。
変更は大会方式だけにとどまらない。“カネ”を巡る改革が進んでいる。
11月の理事会で、来季からクラブに対する配分金の傾斜を強めることを決めた。
J2への配分比率を「1」とすると、J1は現行の「1.9」から「2.5」まで増やす方針だ。
海外に目を向けると、ドイツは2部に対して1部が「3.8」、
フランスが「4.3」となっており、日本もさらに高まる可能性もある。
協調路線を維持してきたJリーグにとっては大きな変革だ。
目的は明快。リーグの“顔”であるJ1にカネを集中投下することにより、より魅力的なリーグ作りを目指すのだ。
村井満チェアマンは、欧州にも引けを取らない「輝けるJ1にしたい」と説明する。
スタジアムの設備投資にせよ、選手の補強にせよ、まずは先立つものが必要になる。
J1とJ2の格差は広がるが、原資を重要な部分に投資するのは企業経営のセオリー。
リクルートで役員を務めるなど経営手腕に長けた村井チェアマンの本領発揮といえる。
さらに、同じJ1でもクラブの経営努力によって配分は増減させる。
2015年からはスポンサーイベントに対する協力や放送権料への貢献実績で、2016年以降は順位や入場者数でも差をつけていく予定だ。
また、来季のJ1の優勝賞金はこれまでの2億円から最大で2億8000万円と増額された。
「Jリーグは協調から競争のフェーズに入った」と村井チェアマン。
サッカーファン以外にも注目される「ビッグクラブ」が生まれやすい環境になり、ファン層の拡大も目論む。
一連の改革について、村井チェアマンは「護送船団方式からの脱却」と解説した。
念頭にあるのは、90年代の橋本龍太郎内閣に端を発する金融業界の構造改革だろう。
橋本内閣は、バブル崩壊で後退した日本経済の立て直しと、日本の金融市場の国際的な競争力の強化を目的に、
「金融ビッグバン」と呼ばれる規制緩和を断行した。その結果、護送船団方式で横並びだった銀行にも競争原理が導入され、日本経済の大きな転換点となった。
現在のJリーグも状況はよく似ている。かつてのブームは過ぎ去り、人気と収益は停滞。規制緩和と競争原理の導入でそれを打破し、
国際的にも人気のあるリーグへの変貌を目論む。これまでタブー視されてきた外資の参入も議論されており、
資金調達のための株式上場に対する規制も緩和されるかもしれない。そうなればまさにJリーグ版「ビッグバン」であり、2015年はその始まりと呼ばれる日が来るだろう。
だが、競争原理が強まるということは、貧富の差が拡大するということであり、経営規模の小さいクラブからは
「競争の色合いが強まればチームが消滅する可能性も高くなる」との声も聞こえてくる。
「金融ビッグバン」の断行後も経済は上向かず、失業率が悪化したのも事実だ。1998年に起きた横浜フリューゲルスの消滅は社会的にも大きな衝撃を与えたが、
改革の進め方によってはそうした悲劇が再び起こる可能性もある。
日本サッカーの未来のためにも失敗は許されない。Jリーグは今、難しい舵取りを迫られている。(伊藤昇)
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