突然、仕事上の知り合いから高級時計をプレゼントされたら、どう思うだろうか。
誕生日でも、何かの記念日でもない。個人的には、何か下心があるんじゃないかと勘ぐってしまい、素直に受け取ることはできない。
しかも、その高級時計の値段が2万5000スイスフラン(約290万円)もするとなると、庶民感覚からかけ離れていること甚だしい。
◆W杯出場協会の代表者に高級時計
だが、世の中には、そういうことに無頓着な人もいる。今年のワールドカップ(W杯)ブラジル大会で、
ブラジル・サッカー連盟が出場32カ国・地域の協会の代表者らに市場価値が1個当たり約290万円もする高級時計を贈っていたことが発覚し、問題となっている。
英BBC放送(電子版)やAP通信によると、時計は各理事や代表者らが宿泊したホテルの客室に置かれていたといい、理事のうち3人は返却し、事態を報告したという。
これを受けて、国際サッカー連盟(FIFA)が倫理規定に違反すると認定。受け取った人物は9月24日までに提出すれば不問に付すと関係者に返却を求める文書を発表した。
日本サッカー協会の大仁邦弥会長(69)も受け取っていた1人。FIFAの発表を受けて「倫理規定に反する贈答品という意識はなかった。
即刻返還する」とコメントし、渡欧した9月22日にFIFAの倫理委員会事務局に提出したという。
大仁会長が時計を受け取ったのは、百歩譲ってコメントを“額面通り”にとらえ、不注意や認識不足によるものだったのかもしれない。
だが、個人的な見解としては「アウト」で、公益財団法人のトップとしてはうかつだったと言わざるをえない。
◆地方は1万円集めるのに四苦八苦
日本サッカー協会は建前上、選手や指導者、審判らの登録料から成り立っている。日本代表の国際親善試合開催などの事業収入の割合が圧倒的に大きいとはいえ、
その根幹の部分を忘れてはいけない。
各都道府県の協会は日本サッカー協会の底辺拡大の号令の下、登録者数を増やすため、1人当たり数百円〜数千円(年齢、カテゴリーによって異なる)
の登録料を払ってもらうのに懸命となっている。登録する側も例えば、4人家族で父親が選手と指導者、審判を兼ねているサッカー一家だったりすると、
年間1万円近くを日本サッカー協会に支払っている計算になる。
そういう努力や支出の積み重ねが、日本サッカー協会の活動の原資となっていることを考えれば、290万円もする高級時計を軽々と受け取ることが、おかしいというのがよく分かる。
もっとも、欧州サッカー連盟(UEFA)のプラティニ会長(59)のように「多くの時計をもらった」とあっけらかんと認める人物もサッカー界にはいる。
日本では「永田町の常識は世間の非常識」と言われたりするが、もしかしたら「FIFAの常識」も、世間とは大きく乖離しているのかもしれない。(北川信行)
10月4日(土)21時0分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141002-00000531-san-socc