5戦未勝利という苦難の9月を乗り越え、J1昇格に向けて再び走り出した松本山雅FC。
だが、横浜FCから会心の内容で勝利を収めたはずの反町康治監督は、
意外にも沈痛な表情で記者会見場に足を踏み入れ、マイクの前に腰を下ろしてゆっくりと口を開いた。
「今日の勝利を、御嶽山の噴火で残念ながら亡くなられた我々のサポーターである野口泉水さんに捧げたい」
長野県と岐阜県の県境で9月27日に発生した御嶽山の噴火。多くの方が被災する中に、松本を熱心にサポートしてきた野口さんがいた。
被災時にも松本山雅のキャップをかぶっており、噴火の翌日にはホームのコンサドーレ札幌戦を観戦予定だったという。
「我々みたいなチームは、そういうサポーターに支えられています。非常に悔しい気持ちと同時に、天国で喜んでいただけるように残り試合も頑張っていきたい」
多くのサポーターに支えられる松本。この日はアウェイにもかかわらず約2500人のサポーターが味の素フィールド西が丘に詰めかけ、
アウェイ側チケットは発売から数分で売り切れたという。
試合前の練習から大声援を続けたサポーターの思いに応えるように、チームは9月未勝利と苦しんだことが幻だったかと思わせるほどに躍動した。
守備では前線から積極的に相手ボールを追い回し、ゴール前ではピンチに体を投げ出してブロック。
攻撃でも野口さんが大ファンだったという船山貴之と岩上祐三を中心に何度もチャンスを作り出し、岩上の直接FKを含む2得点で完勝を収めた。
試合を決める2点目を叩き込んだ岩上は「(野口さんの件は)テレビの報道などで知っていました。
今日は価値ある勝利だったと思いますし、その方の分まで頑張っていきたい」とコメントを残した。
夏場の連戦で溜まった疲労が抜け、涼しい時期に入ったことは、激しいプレスを仕掛けてシュートカウンターを狙う松本のスタイルに追い風となる。
5戦未勝利を受け、指揮官はミッドウィークの練習で厳しい言葉と姿勢を選手たちに投げ掛け、練習で軽率なプレーをした選手をスタメンから外すなどしてチームを引き締め、
J1昇格に向けて選手たちに高い意識を求めた。
迎えた横浜FC戦で快勝し、「それぞれが責任を持ってやれるようになった。選手たちが相手のシステム変更にもよく対応した。
リードを頭に入れながら戦えた」と評価。「いい流れの時にしっかり勝てたこととゼロで抑えることができたところは良かったし、次につながると思う」と手応えを口にした。
この日、J1自動昇格圏を争う3位のジュビロ磐田が大分トリニータに敗れ、勝ち点差は8と開いた。
だが、喜山康平が「昇格争いのプレッシャーはないです。自分たちのできることをするだけですから」と話すように、
一試合一試合を大事にする松本の歩みは変わらない。
チームを支える多くのサポーターに後押しされ、天国で見守ってくれている野口さんに新しい報告をするために、残り8試合も全力で走り続ける。
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