バラエティーで増える「がん」 番組では触れられない“盲点”
最近、医学バラエティーなどで「がん」を扱う機会が増えている。
今週月曜は7時台の「私の何がイケないの?」(TBS系)と8時からの
医学バラエティー「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系)は
「がん予防SP」と題し、これまたがんを患ったタレントの闘病VTRとトーク。
その日は見ようと思えばゴールデンタイムの3時間を“がんバラエティー”だけ見られたわけだ。
「主治医──」は乳がん、胃がんなどの各ステージによる5年生存率の
パーセンテージを表にしたり、アンジェリーナ・ジョリーも受けた遺伝子検査について
解説したり、完全に専門番組だった。
こういう“がんバラエティー”安定の秘密は、高齢化社会でがんが心配な
視聴者の割合が増えただけではない。「主治医──」のCMのひとつに、
保険会社があった。保険会社にとっては実入りのいい番組だろうから、
スポンサーが確保しやすい(露骨にがん保険のCMは入れにくいだろうが)。
しかし、内容には盲点もある。この手の番組では、がんの要因として
「喫煙30%、食事30%……」(米国ハーバード大調査「主治医──」にて)
という数値をもとに「がんは生活習慣病である」として、
予防できる食事法(野菜、果物を多く取り塩分控えめなど)を紹介して終わるのが
パターンだ。が、なぜ日本にこれだけがんが多いか(2人に1人の死因ががん)、
その原因のひとつはジャンクフードなどの添加物使用量の多さにもよるだろうと
最近はいわれている。添加物入り食品を取り上げる本、週刊誌が話題だ。
が、テレビでは「そこには触れられない」(関係者)事情がある。医学バラエティーの
CMに入っていなくても、あらゆる食品メーカーはテレビ界の大スポンサーだ。
生活習慣病が原因でも、「飲酒」「肉の食べ過ぎ」と言うのが精いっぱいだ。
日本特有のがんの原因には触れず、「早期発見でがんが治る」「がんは怖くない」
という作り方をする“がんバラエティー”は増える。日本はさらにがんが増加するからだ。
そういう番組はがんより怖い気もする。
日刊ゲンダイ 2014年6月22日(作家・松野大介)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/151222