【野球】市民球団「広島東洋カープ」、巷で人気急上昇&39年連続黒字・・・オーナー松田一族への厳しい声も
プロ野球のペナントレースが幕を開け、盛り上がりを見せている。
今年で創立80周年の巨人が何かと大きな話題をさらい、セ・リーグの大本命と目される中、
その対抗馬として多くの関係者が名前を上げているのが広島東洋カープだ。
昨シーズン(2013年)は絶対エースの「マエケン」こと前田健太投手を中心としたリーグ屈指
の投手陣に加え、菊池涼介内野手や丸佳浩外野手ら成長著しい野手陣を擁してリーグ3位となり、
実に16年ぶりとなるAクラス入り。
九州共立大時代に「大学ナンバーワン右腕」と称されたドラフト1位ルーキー大瀬良大地投手ら
新戦力が加わった今季は、満を持して1991年以来23年ぶりのリーグ制覇が期待されている。
最近は熱烈なカープファンのお笑いタレント「カープ芸人」の話題性、
スタンドから黄色い声援を送る鯉党の女性「カープ女子」が登場したりと、
ちまたでも“赤ヘル旋風”が巻き起こっている。
●実は「39年連続で黒字」を達成している「株式会社広島東洋カープ」
さて今回は、そんな「広島東洋カープ」をビジネスの面でクローズアップしてみよう。
カープの球団運営でまず驚かされるのは、未上場企業でありながらも「39年連続で黒字」
を達成していることだ。
「われわれは地方の、親会社もない球団。自分の中でどれだけ工夫できるかが重要。
カープには親会社がないから、他球団のように親会社から宣伝費の名目での補てんはない。
よって、黒字経営は必須である」とは球団オーナー松田元氏のコメント。
株式会社広島東洋カープの株式を42.7%保有する筆頭株主松田一族
(自動車メーカー「マツダ」の創業家だが、現在はマツダの経営に関わっていない)から
輩出されたオーナーである同氏の言葉通り、球団は持ち株比率が34.2%のマツダからも
赤字補てんなどの資金援助を受けておらず、黒字化が毎年のように義務付けられている。
(
>>2以降に続く)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140417-00000054-zdn_mkt-ind
(
>>1の続き)
徹底した黒字追求型の経営方針は、ビジネスパーソンにとって興味深いはずだ。
黒字を生み出す一番の要因はコストカット。
つまり、主力選手の年俸を極力低く抑えるように努めているのがこの球団の特色と言っていい。
今季開幕時点で支配下登録された選手の年俸総額は20億6800万円。
これは12球団中最下位で、1位の巨人(45億1200万円)の半分以下である。
「昔に比べればチームの年俸総額は年々上昇しているが、
今も球団内には『なるべく年俸の総額は20億円以内に抑える』という不文律がある。
2014年は少々高めになってしまったとはいえ、できる限り人件費を安くする方針に変わりはない。
だから主力選手も年俸が高くなったら、他球団へ放出することを検討する。
戦力のバランスと予算を考えれば、ウチは年俸3億を超える大物選手を抱え込むことが許されない」
(広島カープの球団関係者)
前出のエース前田が、今オフにメジャーリーグへ移籍する可能性が高まっていることも
“ケチケチ”なカープの球団運営の姿勢を象徴している。
前田の今季年俸は2億8000万円にまで跳ね上がっているだけに「これ以上、彼の年俸が上がれば
ウチの経営はひっ迫する」(前出の関係者)というのが球団側の本音。
前田は多くのメジャー球団からラブコールを送られていることから、海外FA権(前田の権利取得は
早ければ2017年)を取得する前にポスティングシステムを使ってメジャー移籍を容認すれば、
カープは譲渡金(上限2000万ドル、約20億円)を手にできる。
マエケン本人もメジャーに行きたがっているし、FAでタダで逃げられるのならば、価値があるうちに
売り払ったほうがいい――。そういう割り切った考えが、この球団にはある。
もちろんこういうな経営方針は、当たり前だがチームの成績とは反比例する可能性のほうが高い。
それが長年に渡る低迷を招いた要因にもつながった。
ただ、そうかと言って「カネをかければチームは必ず強くなる」というわけでもない。
カープは昔から選手育成に定評があり、昨季2013年シーズンの躍進はそれを証明した形と言える。
(つづく)
(
>>2の続き)
●「知られざるカープ」の一面も
と、ここまではプラス面を書きつづったが、実を言うとカープの経営にはウラの面もある。
熱心なファンや地元関係者の中には、それを知っている人もいるかもしれない。
ここから先は“知られざるカープ”について触れていこう。
カープは他球団と違って親会社からのバックアップが得られず、特定の企業に依存していないことで
「市民球団」のイメージが色濃い。
しかし市民が直接株式を保有しているわけではなく、市の税金などでまかなわれているわけでもない。
実態は松田一族の同族経営となっており、ここから懐疑的な目を向けられることもある。
実際に広島のメディア関係者からは「経営に批判的な記事を書けば、
そのメディアは松田オーナーの怒りを買って即刻出入り禁止となる。そんなことをされれば、その社は命取り」
「地方球団で担当記者も少なく、完全なムラ社会だからメディアはヨイショのオンパレード。
こうやってカープの経営実態はどの社も触れることができず、松田オーナーのワンマン経営は守られて
いるのです」との声も出ている。
確かに、この球団は株式非公開企業であるがゆえに経営面は謎が多い。
筆頭株主の松田一族、そしてマツダに次いで3番目に多い18.5%の株を所有するカルピオ(カープグッズの販売店)
についても「そもそも球団と、どういう関係になっているのか」「筆頭株主は誰なのか」
「グッズの売り上げ収入はどうなっているのか」といったさまざまな疑念があり、
あげくには「松田一族と何か怪しい関係があるのでは」との憶測まで飛び交う始末だ。
オーナーは、前記に対して「そんなことありゃーせんわいや!」と怒りを爆発させるかもしれない。
ただし、それならば「市民球団」を掲げる球団なのだから財務諸表の詳細を一般公開してくれれば
クリーンだ(もちろん株式非公開企業のため義務ではないが)。親会社からの援助がなく、
資金的に苦しい運営を強いられている以上、新しい経営手法を発案することも必要だ。
しかし、現状はオーナーに残念ながらそのような考えはないようである。
(つづく)
(
>>3の続き)
球団の経営が一時混乱したため、当時の東洋工業(現マツダ)社長の松田恒次氏に株式が集約されたのが1968年。
それ以来、松田一族による同族支配が続いている格好だが、あくまでもこれは一時的なものだ。
未来永劫、「市民球団」の広島東洋カープの経営を松田家に預託したわけではない。
一部からは「松田一族は即刻カープ球団の経営から手を引くべき」との厳しい意見も聞こえてくる。
それができないならば、松田オーナーは情報の開示と将来に対する明確なビジョンをファンに対して
示す必要性があると考える。
せっかく強くなったチームの勢いを無駄にしてはいけない。
今こそ広島東洋カープが「松田個人商店」を脱する最大のチャンスである。
(おわり)