普段、ファンがその姿を球場で見かけることはほとんどない。しかし選手たちにとって、
そしてチームにとって、最もなくてはならない“裏方”である。用具係──言葉から想
像できる仕事だけでなく、実に多岐にわたる業務に従事する彼らの中には、かつ
て球場を沸かせた選手も含まれている。
入来祐作氏(40)。1996年のドラフト1位で巨人に入団、闘志あふれる投球スタ
イルで東京ドームを沸かせた男はいま、横浜の一軍用具担当を務めている。用具係
の主な仕事は、グラブやバットといった選手個人の持ち物以外の、球団が所有する
用具の管理・設置である。ボールはもちろん、ユニフォームやヘルメット、そして練習で
使用するケージ、ネットの設置などがそれに当たる。
「要は、選手たちが野球をするための環境を整える仕事。野球用具全般の準備をす
るスタッフで、裏方の中でも一番現場に近いポジションだと思います」
その日の練習のスケジュールや内容は、当然把握している。
「時にはコーチから“○○選手は特別メニューでやるから”と要請を受けることがあるので、
それに合わせての準備もします。ただ、ある程度裁量も与えられていて、天気やグラウンド
状態などから判断して、“できない”と断わることもあります。いわば球場の“現場監督”み
たいなものですね。
その分、球場内で何か起こるとすべて自分の責任だと感じちゃうんですよ。防護ネット
を工夫して配置しているのに、たまに打球が選手に当たってしまうこともある。その時は青
くなりますよ」
練習が終わると試合だが、試合中もゆっくりはできない。練習で使用したボールを確
認して、使えるものと使えないものを選別。使えるものはクリーナーにかけて綺麗にする。
「大体、1回の試合で用意するボールは10〜15ダース。基本は1カード(3試合)で全
球を取り替えます。プロで3日も使うとかなり汚れるし、強打するので形も歪んできます
からね。使える・使えないの判断は、僕に一任されています」
http://www.news-postseven.com/archives/20130521_189098.html