シネマの週末・トピックス:トガニ 幼き瞳の告発
韓国の聴覚障害者学校で起こった、教職者による児童への性的虐待事件を映画化した問題作だ。
新たに赴任した学園で、おぞましい暴行の現場を目撃した教師イノ(コン・ユ)。
怒りに燃える彼は、人権センターの女性とともに子供たちを守り、加害者の校長らを告発しようとする。
目を背けたくなるほどの暴行シーンに加え、あの手この手で保身や隠蔽(いんぺい)を謀る教職者の嫌らしさ、卑劣さを徹底的に描出。
それが手話を使う子役たちのいじらしい演技と強烈に対比され、事件の異常性を際立たせる。
韓国では映画公開をきっかけに事件の再捜査、法律の改正が行われるほどの反響を呼んだという。
日本の観客にも他国の出来事などと見過ごせない衝撃をもたらすだろう。
ファン・ドンヒョク監督。2時間5分。シネマライズほか。(高橋諭治)
◆もう一言
理不尽な事件を大声で告発せず、どこにでもいそうな青年教師を主人公にしたことで、見る者の心に訴えかける作品に。
声なき声をあげる子役たちの静かな熱演にも胸打たれる。(細谷美香)
◆さらに一言
人間のおぞましさを次々と見せつけられ、つらい気分に。自然と背筋がピンとなろう。(金沢盛栄)
毎日新聞 2012年08月03日 東京夕刊
http://mainichi.jp/enta/news/20120803dde012070083000c.html