走者いないときくらい長打狙えないか
メジャーには「3番最強説」がある。
かのベーブ・ルースがそうだったように、チームで最も勝負強く長打力も兼ね備えた
スラッガーが3番を務める。マリナーズのウェッジ監督にしても、そのつもりでイチローを
3番に据えた。本人が「(1番のときと)やることは変わらない」と話していたとはいえ、
その気になれば一発も狙えるイチローのポテンシャルの高さに期待する部分はあったはずだ。
ところが、28日のメジャー開幕戦でイチローが見せたのは、これが本当に最強打者かと
クビをひねりたくなるようなバッティングだった。
5打数4安打1打点で結果として勝利に貢献したものの、その打撃スタイルは本人も
言うように去年までと一緒。4安打の内訳はボテボテの内野安打2本、投手の横をゴロで
抜く中前打、外角ボール球に軽くバットを合わせた中前適時打。走者がいなかった
1、2、4打席目くらいは一発や長打を狙ってもよさそうなものなのに、いずれも軽打だった。
スポーツ紙は「イチロー 凱旋4安打」「2年ぶり200安打に視界良好」と大はしゃぎ。
本人も「特別な日になった。格好はついたという感じですかね。アメリカの開幕とは違う
種類の、恐ろしい緊張感だった。(試合後、右翼スタンドに手を振ったのは)一生で2試合、
ここでやることはないから。その瞬間を刻みたいという思いからだった。足を運んでくれた
人もおそらくそういう気持ちだったと思うので、それを共有したかった」と満足げだ。
しかし、マリナーズ首脳陣、選手、地元メディア、地元ファンは、はたしてこの日のような
3番打者の打撃に満足するだろうか。
マリナーズは過去4年間で3回最下位。昨シーズン終了後も補強らしい補強はせず、
捕手オリーボの19本塁打、62打点がチーム2冠という体たらくだ。去年までと同様、
早々と優勝戦線から脱落するようなら、打順が変わったにもかかわらずコツコツと
マイペースで安打を積み上げるイチローが矢面に立たされないとも限らない。
かつてナインから「このチームには自分のことしか考えてないヤツがいる」とののしられた
悪夢がよみがえらないか、心配にもなるのだ。
http://gendai.net/articles/view/sports/135870