日本映画専門チャンネル(BS、CS)が、DVD化されていない過去の秀作をハイビジョン化して今月から放送を始めた。
現像所では、映画用の古いネガを修復し、テレビのテープに収録する作業が急ピッチで進む。
番組は「ハイビジョンで甦(よみがえ)る 日の当らない名作」(月〜金曜午前7時)。
戦後に作られた多くの日本映画は、上映後はお蔵入りとなり、原版のネガだけが映画会社に残されている。
同チャンネルは「監督も役者も一流どころなのに埋もれている作品はいくらでもある」と今回の番組を企画。
標準画質では放送されたことはあっても、DVD発売やハイビジョン化はされていない1940〜60年代の作品を集めた。
東京都調布市の東京現像所では、東宝などから丸いスチール缶に入った原版が持ち込まれると、
まずネガの状態をチェックする。損傷やよじれがないかスタッフが1コマずつ目で確認。
2時間作品でネガの長さは計3000メートルにも及ぶため丸2日はかかるという。
1本ずつ溶剤を吹き付けて洗浄した後、現像機にかけて像を焼き付け、フィルムとなる。
これを映写機とビデオカメラがドッキングしたような「テレシネ機」にかけてビデオテープに収録する。
その際には、古くなった色調を撮影時の状態に戻すため、モニターで確認しながら1コマずつ明るさやピントなどを調整。
仕上げに、フィルムに付着した小さな汚れやごみを目視で確認しながらデジタル処理で消去し完成となる。
東宝によると、こうした作品を映画館で再上映するのは、フィルム化にコストがかかるため難しく、
同社が所有する2000作品のうち、7割以上はお蔵入り状態という。
番組は26日から須川栄三監督、団令子主演の「ある大阪の女」(62年)を放送。
その後もフランキー堺主演の「地方記者」(同)など新たな作品が週替わりで登場する。【土屋渓】
毎日新聞 2012年3月23日 東京夕刊
http://mainichi.jp/enta/cinema/news/20120323dde018200021000c.html