【テレビ】フジテレビ、「火渡りするという老人」バラエティ番組ロケで老人が大ヤケド負うも放置、老人は重篤に/週刊文春
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名無しさん@恐縮です:
14. 無職名無しさん 2012年03月09日 22:41
火傷で大怪我しても3年も経ってから死んだのが直接因果関係無いんじゃないかと思っている人もいるかもしれないが,
熱傷患者を診ることが多い立場からいうと3年間生きていたのが奇跡.
動画から推測されることとして
言動と家の様子からはどう見ても何らかの精神疾患と認知症を有している.
灯油のまかれた上を10秒近く歩いている事から考えると,
最低でも足底から足関節はV度熱傷,下腿はU度(DDB)大腿もU度(SDB)熱傷.
熱傷の深度は数日かけて明らかになること,老人では表皮が薄く熱が深達しやすいことを考えると,
当初は水疱程度でも最終的に下肢全体がV度熱傷となっていてもおかしくない.
受傷直後に水などで十分に冷却すれば多少は深達を防げた可能性はある
V度熱傷では知覚神経も壊死するため疼痛は感じなくなる.認知症や糖尿病があれはより痛覚に鈍感になる.
BIは30-40で,重傷熱傷に分類される.年齢を70歳としてもPBIは100以上で,受傷直後に治療を行ってもほぼ救命は不可能.
熱傷皮膚からの蛋白質,水分喪失による循環血液量減少性ショック,感染,SIRSによる多臓器不全,腎不全,
輸液の再分配による肺水腫からの呼吸不全,全身ストレスによる消化管潰瘍出血で長くとも数週間以内に死亡する.
このケースでは数日間放置されていたとのことであり,来院前にすでにこれらの状況がかなり進行していたと思われる.
記事にあるブルブル震えていたとは,菌血症にすでになっていたためだろう.
561 :
名無しさん@恐縮です:2012/03/10(土) 23:41:43.84 ID:4IHaPhfI0
15. 無職名無しさん 2012年03月09日 22:42
治療は壊死組織を除去し植皮を行ってできるだけ早期に皮膚バリアを回復させることだが,
人工皮膚や死体からの皮膚移植は基本的に一時しのぎにしかならず,自家皮膚(腹部などから採取)の分層植皮が必要,
感染のある状態では植皮の生着は良くて5割程度のため,複数回にわたって手術を行う必要がある
関節周囲はV度熱傷では骨まで露出することも珍しくなく,そういった部分には植皮は行えないため打つ手はない.
植皮が成功しても下肢全体が高度の拘縮で全く動かなくなり,汗腺がなくなるため体温調節機能がかなり低下する.
このころには長期の臥床と気管挿管から肺炎を繰り返し発症,背部にも褥瘡等を形成している可能性が高い.
急性期を乗り切ってもそういった合併症で全身状態は徐々に悪化し多くは退院できずに死亡する.
記事によると死亡原因は腎不全とのことだが,前述のように熱傷の合併症で腎不全はよくあることだし,
腎臓は一旦壊れると再生しないので週2-3回の血液透析が一生必要.
この年齢でこの重症度の熱傷で搬送された場合,上記の事を家族や本人に話して,積極的な治療を選択しない事もありえる.
(疼痛と全身管理のため早い段階で鎮静し気管挿管で呼吸管理する必要があるため,その後は治療を拒否したくてもできなくなる)
この症例では家族の希望が強かったか,刑事事件となる可能性もあったためあらゆる手立てを講じて3年間生存できたのかもしれない.
(裁判になった場合に「治療が不適切だったために死亡したのでは?」と医療者に責任が行く恐れがあるため)
しかし3年間苦痛に耐え(あるいは意識のない状態で)かろうじて生きながらえていた状態と考えられる.