>>1のつづき。
「海保の予言」は的中する。ホームゲームの平均入場者数は08年の6273人からJ1初年の09年は1万
2056人に倍増したが、10年は1万1710人と減少。11年は9325人まで落ち込んだ。10年度の単年度収支
は7300万円の赤字に転落。11年度も赤字は必至で、昨秋には川越進理事長が引責辞任した。
経営規模はビッグクラブと比べるまでもない。10年度の入場料収入は浦和レッズの6分の1、広告料
収入は10分の1程度にすぎない。資金量は戦力水準に直結する。選手・スタッフ人件費はレッズの3分
の1程度。それでも中井川茂敏ゼネラルマネジャーの苦心の補強、小林伸二監督の巧みな戦略で09年
は15位、10年は13位とJ1残留を果たしたが、限界だった。
昨年12月3日の今季最終戦。4年間率いた小林監督のラストゲームでもあった。試合後「J1復帰に何が
必要か」と問われた小林監督は「選手のレベルを上げること」と切り出し、「若い選手がJ2で伸びても、J1で
戦えるかというと話は別。チームを引っ張る選手が不可欠」と続けた。「そういう選手は(年俸が)高い。J1で
生き残るにはカネが要るのも事実。プロスポーツ集団なのだから、いかに予算規模を伸ばすかということも
考えなければ」と強調した。
県内最大の山形市が人口25万人。地銀を除き東証1部上場企業が1社だけ。そんな県でJ1クラブは
存続できるのか。集客に楽な近道はない。圏域人口に限りがある以上「サポーターの層を厚くする」「1人
当たりの観戦機会を増やす」しかない。コアなサッカーファン以外もスタジアムに呼び込む工夫はできないか。
女性や高齢者、家族連れでも楽しめるイベントも欠かせない。奥野僚右新監督の下、J1早期復帰と財政
規模拡大の両立を目指す厳しい戦いが始まる。
(山形支局長 岩本隆)