「まるで人さらいのようだよ」。卒業間近の中学生を乗せたバスが走り去るのを見て、ある高校の指導者が苦
笑した。
いずれも、県の高校サッカー界を背負うと思っていた有力選手たちばかり。全国高校選手権で数回優勝した
西日本の高校に進むことになり、用意されたバスで移るところだった。指導者は「岐阜は人材の草刈り場だ」と
嘆く。
隣の愛知県でも岐阜出身の選手が活躍している。昨年の全国高校選手権に出た中京大中京の登録選手25人
のうち岐阜出身は5人。愛知県を除けば最多だ。前中京大中京監督の道家歩さん(45)は「岐阜はいい選手が
多いが県外に出たがる。中学生のチェックは必ずしていた」と話す。全国制覇6回の国見でも、地元長崎出身が
17人を占める中、岐阜出身が2人登録された。
中京大中京で1年生からレギュラーとして活躍する藤橋弘貴さん(16)は岐阜のクラブ育ち。でも、「レ
ベルの高い環境でやりたかった」と愛知の高校に進んだ。FC岐阜の服部順一GMは(41)「岐阜は残念なが
ら県内に残りたいと思わせる魅力がない」と話す。
「3強1弱」。サッカー界では静岡を含む東海4県を、そう表現する。「弱」は岐阜。静岡、愛知にはJ1
クラブがあり、三重の四日市中央工業は数多くのJリーガーを輩出していることなどが理由だ。
FC岐阜も、有望選手の県外流出を防ごうと、3年前にユース「FC岐阜U―18」を創設。県内各校の監
督にも、優秀な選手がいれば情報を上げてもらうように頼んだ。だが、トップチームで通用するような選手はま
だ生まれていない。
U―18の平田礼次監督(36)は「トップチームの成績がふるわず、まだ一流の選手が来ない」と話す。
自身も岐阜から東京の高校に進んだ「流出組」だ。
「地元に育ててもらった」。そんな意識を持ってもらえば流出は防げると、平田さんは思っている。現役時
代の大半をヨーロッパでプレーした。地元の人たちがお金を出し合ってユースを運営していることに好感を持っ
たという。
平田監督は、ユースで中学生の月謝の無料化を提案する。「育ててもらったと感じてくれれば、残ってくれ
るのでは」と期待する。そのためにも、トップチームであるFC岐阜の躍進が不可欠だという。
:
http://mytown.asahi.com/gifu/news.php?k_id=22000171110110002