トップに立つ選手である。この立場の選手を“社長”と名づけたのは解説者の風間八宏さんで、
すごく的を射た呼び名だと思ったのでここで使わせてもらった。たとえばバルセロナだったらシャビだし、
マンチェスター・ユナイテッドならルーニーだろう。日本代表だったら本田圭佑だ。
“社長”の顔が見える組織というのは、会社でも、サッカークラブでも、魅力が外に伝わりやすい。
存在そのものがゲームの見所であり、“社長”に人をひきつける武器があれば、細かい戦術のことを
知らない初心者でもサッカーの醍醐味を味わうことができる。
■没個性化が進むJリーグに独善的な“社長”は不必要?
かつてJリーグには、ストイコビッチやドゥンガといった魅力的な“社長”がたくさんいた。
だが、今のJリーグはどうだろう。遠藤保仁、小野伸二、中村俊輔、中村憲剛らがいるものの、
リーグ全体として目新しさという意味では物足りないものがある。柏レイソルで10番をつける
レアンドロもかなりうまい選手だが、ライト層に訴えかける華としてはやや欠ける印象がある。
すべてのポジションでレベルアップが進んでいるものの、逆にチーム内の没個性化が進んでおり、
小学生が一目でわかるほどの“社長”がリーグに減ってしまった。そういう“社長”に値する選手を、
育てる、もしくは獲得するなりの“投資”を是非Jリーグにはやっていただきたいのだ。
もちろん“社長”がいなくてもサッカーはできる。
サッカーの戦術というのは、大きく分けると、2つの前提がある。1つは自分たちがボールを
持った状態を前提にしたもの。もう1つは相手がボールを持った状態を前提にしたものだ。
後者の場合、相手からボールを奪って攻めるという発想なので、極論すればゲームは組み立てる必要はない。
フィールドプレイヤー全員が働き蜂であればよく、むしろ“社長”の存在が邪魔になる可能性すらある。
わかりやすくいえば、2010年W杯のときの日本代表だ。もしかしたら今のJリーグは、こういう発想に基づく
チームが増えすぎているのかもしれない。
(続く)
http://number.bunshun.jp/articles/-/154942 ■守備を基本とした試合でなく、攻めのサッカーが見たい!
玄人だったら、守備戦術の攻防におもしろ味を見い出せるかもしれないが、初心者にとってはそれでは
見所がわかりづらい。特に守備を前提にしたチーム同士が試合をすると、いくらそこにレベルの高い
駆け引きがあったとしても、ぱっと見の展開は渋いものになってしまう。
「もっと“社長”に投資をしよう」というのは、言い換えれば、「もっと自分たちがボールを持った
サッカーに本気で取り組もう」ということだ。
ヨーロッパで通用するであろう質の高い選手がたくさんいるのに、チームとしてその魅力が発揮されてないのは、
相手がボールを持つことを前提にしたチームが多いからではないだろうか。リーグ内にもヒエラルキーがあって当然で、
すべてのチームが自分たちが主導のサッカーをやる必要はないが、もっと強気に攻めるチームの比率が多くてもいいはずだ。
■新規ファンを取り込むべく経営面からも指針を示すべき。
2010年度のJクラブの経営情報が開示され、J2は平均営業収入が上がった一方で、J1は広告料も入場料も落ちた。
サッカーファンの裾野は全国で確実に広がっているものの、既存のクラブが新規ファンの獲得に苦戦しているということだろう。
さらに現実的な話をすれば、このあたりのクラブの方向性を組めるのは、経営をする本当の社長の方だ。
ピッチ内外で、組織の上に立つリーダーの魅力が問われている。
(終わり)
http://number.bunshun.jp/articles/-/154942