神宮での燕追撃に挑む虎を気にしながら、坂井オーナーは遠く離れたヤンキースタジアムにいた。
すがすがしい青空に放物線を描くナインの中、試合前の練習で目にとまったのは生え抜きのスターたちだった。
「ジーターもそうやけど、カノも生え抜きなんやね。英才教育をしてきたかどうかはわからんけど、
生え抜き選手が(打線の)中心にいるというのは大きい。阪神でも鳥谷、藤川くんら以外に作らないといけないね」
ベンチ前でキャッチボールをしていたジーターとの距離はわずか数メートル。ヤ軍一筋17年目の優勝請負人に、
今年の球宴の本塁打競争で優勝した主砲、ロビンソン・カノ内野手(28)。ニューヨーカーから絶大な支持を受ける2人の存在感を肌で感じた。
「ヤンキースとタイガースはある意味、似ているチームだと思う。(育成が)難しいと思うけど、その中でやっていかないといけないから」
7月27日に最大借金11を完済して以来、突き抜けることなく勝率5割前後をさまよう。気づけば2〜5位が1・5ゲーム差にひしめく大混戦だ。
乗れない大きな要因は、打線。こんな時、グイッとチームを引っ張る大黒柱がいれば…。それがヤンキースなら、ジーターであり、カノなのだ。
数年来、虎の絶対的4番だった金本は現在、故障もあり不振。新4番の新井も重圧の中で苦しんでいる。ともにFAの新旧4番。
さらに助っ人のブラゼル、マートンに、トレードの平野。藤井彰もFAだ。そして、いまだ復帰のメドが立たないメジャー帰りの城島…。
野手の生え抜きは鳥谷くらい。それが現状だ。もちろん総帥は、補強選手を否定しているわけではない。
優勝争いを義務づけられた人気球団。即戦力の大型補強は、大切な要素だ。
ただ、長期的にみれば 生え抜きスターの誕生は不可欠。近年の、最大課題といえる。
「高卒で、将来の主軸を任せられるような選手がいればね」と同オーナー。前日12日のスカウト会議に参加できなかった分、
今月下旬に行われる予定の拡大編成会議には「時間があれば行きたいとは思っています。
方向性だけは確認しておきたいと思いますので」と、参加の意欲をみせた。
http://www.sanspo.com/baseball/news/110814/bsb1108140505011-n2.htm