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「この男からは絶望しか得られなかった」という花房さん。性の悦びも文章のテクニックも
何一つ得られなかったが、6年前からブログに赤裸々なコラムを書くようになり、やがて
AV情報誌にレビューを連載。「書くならフィクション。人も殺せる」と文学賞に応募を始めたところ、
初めて書いた官能小説が、団鬼六賞に−。
京都を舞台に、京菓子職人とその秘密結社による性の儀式で繰り返し陵辱され、
やがて女の悦びを開花させる女性を描いた小説『花祀り』。
当初団さんは、「女体は書けていないし、これが官能だと思われたら…そんなに
甘いもんじゃないぞ!」と論評。「だが、直せばいい」と受賞を認めた。「自分も
性描写が甘いと認識していたので、100枚ほど加筆しました」と、晴れて大賞に決定した。
今年3月の授賞式と春の花見で「頑張れよ」と団さんから励まされた。「今は書くことで
あの男にじわじわ復讐をしながら、あこがれの団先生の世界観を書き続けたい」と話す。
不惑の年の今年に結婚。30代のときから続けているバスガイドは主に修学旅行生が
相手だ。もちろんエロ話はないが、京都の隅々を巡る仕事が、京都を舞台にした
SM官能小説の執筆に大いに役立っている。
『花祀り』は無双舎から発売中。出版社によると、映画化の話も進んでいる。お盆休み、
古都で官能の花を咲かせる女の話に浸ってみてはいかがか。
■花房観音(はなぶさ・かんのん) 兵庫県出身、京都市在住。京都女子大文学部
教育学科中退。在学中にアルバイトでバスガイドを始め、映画会社、旅行会社勤務などを
経て作家に。今年4月、結婚。自身のSM体験は「一通り試したけど痛いだけ。
精神的な羞恥プレーが好き」とのこと。