(
>>1からの続きです)
福島第一原子力発電所と同様、国際原子力事象評価尺度において最も深刻な事故・レベル7に分類されるチェルノブイリ原発事故。
放射性降下物がウクライナ、ベラルーシ、ロシアを汚染し、現在も原発から半径30キロ以内の居住が禁止されている。
また、北東350キロ以内に局所的な高濃度汚染地域「ホット・ゾーン」が約100か所も点在しており、
そこでの農業や畜産業は全面的に禁止されているという現実がある。そんなホット・ゾーンに住み続ける住民や、
原発事故後初めて故郷に帰る青年を通して、被曝(ひばく)被害があらわになる本作。
青年は「近親者の10人がガンで死んだ。放射能とは無関係と言われることを、オレが信じると思う?
オレもそうやって死ぬんだ。とんだ犬死だろ」と心の叫びを訴え、その1年後、27歳という若さでこの世を去った。
そして、「チェルノブイリ・ハート」とは穴の開いた心臓を指し、
生まれつき重度の疾患をもって生まれる子どもの呼び名で、
現在も新生児の85パーセントが何らかの障害をもっているというベラルーシ。
デレオ監督は「チェルノブイリ原発事故を題材に映画を撮ったわたしには、
フクシマの原発事故は『悪い夢』のように思える」と語り、「今はただフクシマが、第二のチェルノブイリになる前に
収束することを切に祈る」と日本の安全を危惧(きぐ)しながらメッセージを送っている。
放射能の影響が目に見えづらいため、人体にどのような被害があるのか不安に思っている人も多いはずだ。
何十年間も残留放射能と共に暮らしているウクライナやベラルーシの人々、
甲状腺がんに侵された何千人にも上るティーンエイジャーの姿を見て、「それでも原子力発電所は安全と言えるのか?」と
デレオ監督が疑問を呈している本作で、ぜひ思いを巡らせてほしい。(編集部・小松芙未)
映画『チェルノブイリ・ハート』は8月13日よりヒューマントラストシネマ渋谷、銀座テアトルシネマにて緊急公開(了)