【高校野球】一歩間違えば卑劣な“火事場泥棒”　仙台育英を厳重注意として県大会の出場を認めた高野連[6/28]

夏の甲子園大会の地方大会組み合わせが、連日スポーツ紙でかなりのスペースを割いて載っている。
マニアならずとも、なじみの学校名を探して決勝までをシミュレーションするのも面白いものだ。

半面、不祥事による出場辞退がつきもので、心を痛めるのもこの時期である。
今夏は夏の甲子園に２５回出場し、春と合わせると３回全国制覇している奈良の強豪、天理が戦わずして消え去った。

６月１日、雨天による室内練習で、練習内容が軽くなったと喜んだ２年生の態度に３年生が怒り、
２人が２年生１人を拳で殴って顔面骨折のけがを負わせた。
さらに練習後、部の寮で２年生３人が主将に謝ったとき、複数の３年生が３人の腹を殴ったという。

昔なら、いわゆる“愛の鞭”というやつで、たいていの強豪校では大なり小なりあったはずだ。
だが、当節は殴られた部員の親が黙っていないし、外部に漏れたら、手ぐすねを引くライバル校などが、
たちまち密告する時代になった。

この暴力沙汰も「顔のけがはボールに当たったことにしておけ」と２年生は口止めされたが、
今月１７日に匿名の電話が学校にあり発覚した。

天理は今春のセンバツに出場し、１１日に決勝が行われた春の近畿大会も優勝している。
３年生にとっては最後の夏。６月の声を聞き県大会も目前に迫ってきた。
全国制覇も夢でなく、それこそ目の色変えて練習に取り組んでいたろう。

暴力を肯定する気など微塵もない。
しかし、そんな大事な時期で練習が軽くなったと喜ばれたら、
「お前たち、何を考えてるんだ」とついカッとなる気持ちがわからなくもない。
http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20110628/bbl1106281356005-n1.htm
>>2以降に続く

（つづき）
ふつうなら、高野連に事の顛末を報告して沙汰を待つところだろう。
最近は高野連も不祥事に対して連帯責任を問わず、何とか夏の県大会は出場できるように配慮する傾向が強い。

しかし、天理は２００９年にも部員が強制わいせつで逮捕されるという事件があったばかりであり、
今回は警察沙汰にはなっていないものの部員がけがしたこと、寮生活で起きたことの２点を重く見て、
自ら出場辞退を選択した。
何かほかにも隠蔽していたことがあるからではと、つい勘ぐりたくなるほどだが、この潔さは評価してもいい。

天理とは対照的なのが宮城の強豪、仙台育英だ。
こちらは３年生部員３人と、２年生部員４人の計７人が４月はじめ、
東日本大震災で被災して休業中だった多賀城市の無人の書店に入り込み、建造物侵入容疑で逮捕され、書類送検された。

この震災では「無人になった被災地の商店での略奪などは一切ない。
日本人はすばらしい」と外国は感嘆したものだ。
部員たちの行為は、一歩間違えば卑劣な“火事場泥棒”で被災地の恥でもある。
３年生が２年生を服従させての行為だったとすれば、より部の体質が問われる。
http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20110628/bbl1106281356005-n1.htm
>>3以降に続く

（つづき）
それでも高野連は仙台育英を厳重注意として県大会の出場を認めた。
高野連の説明では「過去の例では３、４人の不法侵入では注意、５人以上は厳重注意にしてきた」という。
しかし、被災地という背景を考慮すれば、単純に人数で決める問題ではないだろう。

ちょうど同じ時期に決まった両校の県大会への出否。
肩を持つつもりはないが、気の緩みを抑止するために手を出して夏を棒に振った天理は割に合わない、
と感じたのは筆者だけだろうか。
http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20110628/bbl1106281356005-n1.htm
（おわり）