観客動員が伸び悩んで経営難に陥るクラブも出る中、高額年俸のベテランの放出が目立つ
一方で、世界的なビッグネームの獲得といった大胆な補強は見当たらない。地味な印象は
ぬぐえないオフの動きに、身の丈経営をテーマに戦力アップを図る各クラブの苦悩がうかがえる
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/110203/scr11020321390011-n1.htm 横浜Mの下條チーム統括本部長は「新しい世代を切り開いていくための一大決心」と
説明した。しかし、世代交代ともにクラブ側の頭にあるのは健全経営だ。一昨年オフから
移籍金が撤廃されて若手を獲得しやすくなったこともあり、年俸が高額になりがちな
ベテランより、安く伸びしろの見込める若手に期待しようというわけだ。
各クラブの台所事情は苦しい。昨年はW杯南アフリカ大会で、日本代表がベスト16へ躍進。
全国を熱狂の渦に巻き込んだ勢いに乗りたかったが、Jリーグの観客動員増には結び
つかない。J1、J2、ナビスコ杯の観客数はいずれも減少。総数は約850万人で前年を
約84万人下回った。Jリーグきっての人気クラブである浦和でさえ、昨季のリーグ戦に
おけるホーム観客動員は前年を10%近く下回る約67万8千人にとどまった。
こうした状況では、多額の資金が必要となる大物外国人に触手を伸ばすわけには
いかない。仙台は柳沢とマルキーニョスという実績と知名度を兼ね備えた両FWを
獲得したものの、前所属クラブを戦力外となって買いたたけた事情がある。
だが、2009年シーズン後に浦和から戦力外通告を受けた闘莉王(29)が移籍先の
名古屋を昨季のJリーグ王者へ導いたように、環境を変えることでもう一花咲かせる例は
珍しくない。仙台の手倉森監督が「大型補強をいただいた」と喜び、山瀬を獲得した川崎の
庄子強化部長が「即戦力として期待」と納得するのも、プレースタイルや豊富な経験を
チームに生かす青写真を描けているからだろう。
伊東と市川を獲得した甲府の三浦監督が「サッカーは財政規模の大きいチームが
上位に行くことが多いが、番狂わせのスポーツでもある」と指摘したのも的を射ており、
地味であっても効果的な補強はできる。苦しい懐具合と相談しつつ知恵を絞った補強の
真価は、間もなく問われることになる。