一般社会の若者同様、プロ野球選手も「将来が不安」
先日、日本野球機構(NPB)が「引退後に関する意識調査」の結果を発表した。アンケートは
昨秋、宮崎のフェニックスリーグに出場した約250名の若手プロ選手を対象に実施。実に7割を
超える選手が、「引退後の生活に不安を感じている」と回答した。
'05年のドラフトから導入された育成枠制度により、プロ入りの門戸は広がり、多くの若手に
チャンスが与えられるようになった。その反面、2〜3年でクビになるケースも増えてきている。
このアンケートでは、セカンドキャリアとして希望する職業で最も多かったのが、「高校野球の
指導者」だった。だが、理想だけでなれるものではない。
あまりに困難な「高校野球の指導者」への道
早鞆高校(山口)で監督を務める元ダイエーの大越基氏(写真)は、引退後、貯金のほとんどを
学費や教員免許を取得するまでの生活費に充てるなど苦労を重ねた。
'09年に西武を戦力外になった三浦貴氏も、現在は高校野球の監督を目指し大学の夜間に
通っているが、昼間は一般企業で働いているため休む暇などないという。
何より、高校野球指導者になるためには大半の野球選手が苦手としているであろう勉強に
励まなければならないし、その期間の生活苦は先の2人のエピソードが物語る通りである。
一般企業への就職を希望している選手も多いそうだが、これにしても安易にとらえると痛い目に
合う。
'00年代初めに巨人でローテーションを務めていたある選手は、引退後、野球界に残ることが
無理だと悟り、一般企業への就職に切り替え何社か面接を受けた。そこで言われたのは金銭
面でのことだった。彼は現役時代、最高で年間1億円近く稼いだ経験もあった。
「うちは年に3、400万円しか払えないけど、と言われたんです。自分も早く職に就きたいから
『いくらでも構いません』と答えたんですが……。結局、それが断り文句だったんでしょうね。
企業側として自分に社会人としての経験がないことを知っていますから、やっぱり採りづら
かったんでしょう」
その後、彼は幸運にも在京球団の職員として再スタートを切ることができたが、本人は「運が
よかっただけです」と言う。
http://number.bunshun.jp/articles/-/85006