ベスト16進出という日本代表の飛躍もあり、W杯後にはJリーグが活況を呈するかと
思ったが、そう単純な話ではないようだ。今季のJリーグ、W杯中断前の5月16日までは
1試合平均で19790人が入場したが、中断後の7月14日以降は、平均18189人とやや
減っている。やむを得ない事情はあった。再開後は、過密日程で平日開催が2節あったし、
夏場は選手のパフォーマンスも下がる。今年の場合、暑すぎてお客さんもスタジアムに
行きたくなかったのかもしれない。
それでもW杯は、サッカーを知らなかった人がこの競技に興味を持つきっかけになるもの。
北京五輪で活躍した女子のなでしこジャパンがそうだった。今は「駒野のPK」といえば、みんな
が知っている。たった一度のキックに底知れぬ重圧がかかるPK戦がいかに苦しいものなのか。
なぜ、11メートルという近い距離のキックが入らないのか。PKに関することを多くの人が知った。
そして、代表チームがまとまることがどれだけ大事なことなのか。ピッチの外の部分を含め、たくさん
の人がサッカーというスポーツの本質を知ることになった。
そこからJリーグにどうやって引きつけるのか。選手も関係者も常に意識を高く持ち、念頭に
置かなければいけない。世界のサッカーを見た後は、サポーターの目が肥える。見る人の欲求
を満たすものを選手が見せなければ、せっかくW杯を機にスタジアムに足を運び始めた観客も、
すぐに行くのはやめようと思うだろう。意表を突いたワンタッチパスや、後ろに目がついているかの
如くトリッキーなパスを出す小野伸二(清水エスパルス)のようなパフォーマーとしての能力を発揮
してもいいし、後方からいきなり前線に飛び出してわざと自陣に帰っていかないような、いつもと違う
動きを見せてもいいのではないかな。
(続きます)
http://www.asahi.com/sports/column/TKY201009300209.html (
>>1つづき)
パススピードの速さ、次のプレーを考えたトラップの角度、ボールをとる場面での当たりの激しさ。
基本的には、そうしたプレー一つ一つの意識を変えていくことが、W杯を見て世界水準を知った観客を
満足させることにつながるわけだが、今幸いなのは、4年周期でW杯というビッグイベントがあることを
サポーターみんなが知っていることだ。今は世界水準でなくてもいい。4年後に向け、若い選手がそう
いう意識を持ってやっているかどうかということ自体を、サポーターは見ていると思う。
西村雄一主審が高評価を得た審判も、W杯で話題になっただけに選手同様に世界水準で見られて
いる。稲本潤一(川崎フロンターレ)が世界水準のタックルをしただけでファウルをされてしまうような判定
は、やはり目の肥えたお客さんからすると、しらけるものととらえられるだろう。
W杯はありがたい。サポーター、選手、審判。サッカーを取り巻くあらゆる方面で、水準を上げるきっかけに
なってくれる。
(以上です)