■FC東京は本当に「補強」をしていたのか?
FC東京が補強をしても勝てないのはなぜなのか──。
スポーツナビ編集部から与えられたテーマを考慮するに、おそらくこのクラブを定点観測していない立場の人々には、
FC東京が十分な大型補強をしたかのように映っているのだろう。しかし今季の補強は、本当に「補強」だったのだろうか。
開幕時、新加入選手の大半はルーキーだった。他クラブでの実績があったのは松下年宏と森重真人だけ。
外国人FWはリカルジーニョを獲得したが、カタールのアル・アラビへ移籍したカボレの穴を補う選手ではない。
松下と森重の加入によって攻撃的な中盤とセンターバックが昨年のレベルを維持していたとしても、FWは昨年の
開幕時点以下の状態になってしまった。同様のポジションはほかにもある。ボランチだ。
開幕直前にボランチの米本拓司が重傷を負い、長期離脱を余儀なくされたことで計算が大きく狂った。
加えて、手術明けの梶山陽平が開幕スタメンに間に合わないことで、ドイスボランチを本来のポジションとは異なる
徳永悠平と羽生直剛が務めることになった。
Jリーグ開幕一週間前のプレスカンファレンス。深刻さを物語るかのように、城福浩監督はこう言った。
「もっとも層の薄いポジションにけが人が出た」
そうした危機を乗り越えなければ真にチーム力がついたとは言えない、とも言った。しかし今野泰幸と森重真人、
対人守備にもパスにも優れたこの2人をセンターバックに据え、最終ラインからビルドアップする構想は、米本と梶山が
ボランチを務めることが前提である。
このチームに米本のバックアッパーはいない。その穴を埋めるには、メンバーの組み合わせに工夫を凝らすしかない。
試合ごとにメンバーを小刻みに変えることを余儀なくされたFC東京の苦戦は必然だった。
(続きは
>>2-10あたりで)
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jleague/2010/text/201009130002-spnavi.html >>1続き
■長友らの移籍と負傷者でバランスを欠いたメンバー構成に
ではワールドカップ(W杯)による中断明け、第2登録期間(ウインドー)の補強はどうだったか。
W杯日本代表の長友佑都がイタリアのチェゼーナへ、同じくサイドバックを本職とする阿部巧が横浜FCへと、
それぞれ期限付き移籍をした。この時点でサイドバックは徳永と椋原健太だけだ。前述の通り徳永はボランチに
配置転換済みで、椋原と誰かをサイドバックに置くしかない状況だった。
しかし補強したのはサイドバックではなく、FWの大黒将志と前田俊介、攻撃的MFのソ・ヨンドクのみ。
ウインドーが閉まる直前にはFWの赤嶺真吾がベガルタ仙台へと移籍した。メンバー構成はバランスを欠いている。
サイドバックは松下と中村北斗が務めたが、不慣れな松下はいつしか先発から遠ざかった。
「各ポジションに選手が2人ずついない。いびつであることは確かです」
城福監督が認めた状況は、けが人の続出によってますます悪くなっている。
スタッフをまじえなければ紅白戦をできないほどの員数不足の上に、J1第22節浦和レッズ戦では
前半で羽生と高橋秀人の2人が故障し、早々に交替させざるを得なくなった。
大黒の加入は「補強」と呼べるだろう。けれどもそれが補強になるかどうかは、チーム全体の問題だ。
いくら大黒が優れたストライカーであっても、彼1人では得点できない。
今季の新加入選手によるプラスは移籍による離脱と総合して大きなプラスではないし、けが人が続出しているいま、
チーム力はむしろ昨年よりマイナスになっていると言わざるを得ない。
城福監督が常々言っているように、補強はバジェット(予算)の範囲内で行われるものだ。
だからその範囲内で最大限の仕事をしたことは理解できる。
結果としてできた今年の選手層は、1人も欠けることのない状態ならばリーグ戦の優勝争いに絡めるものだったかもしれない。
しかし米本1人の故障でそのレベルを維持できなくなるものであったことも確かだ。